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こうして、妖怪祓い騒動は解決した。名取は撮影を終え、今日帰ってしまうらしい。あの妖は、「柊」という名をもらい、名取に仕える妖の仲間に入ったようだ。
「まったく、君達のような無茶なのは助手にできないな」
「そうですか。それは残念です」
「かわいくないなぁ」
夏目と雪野は斑も連れて、名取へとお別れに来た。
『そっちこそ何だってそんなにやさぐれちゃったんですか。小さい頃は無垢だったのに』
「ん?何だって?」
『…水、かけちゃってごめんなさい』
「それぐらいいいよ。こちらこそごめんね」
複雑そうに、夏目は微笑んだ。
「甘いと言われようと、あなたのやり方には賛同できません」
「それもいいさ。何も同じ意見でなければならないということでもないだろう。他とわかりあうのはムズカしいことだよ。誰にとっても、ね。困ったことがあったらいつでも話してくれ。私も友人の力になりたいからな」
名取とはそこで別れ、西村と北本と約束した場所まで歩く。
「先生、助けてくれてありがとうな」
「生肉が好きなだけだ。こげたらお前らを食えんからな」
「『ふーん…』」
斑の言い草に青筋が浮く。はぁ…と、夏目が物憂げにため息。
「ん、どうした」
「いや、柊はせっかく自由になれたのに、今度は名取さんの式になったりして…自分の意志だったみたいだけどさ」
『ほれた相手なんじゃないかな』
「え?」
「まぁ個人のよろこびなど、本人にしかわからないこともあるさ」
「ーーーーそうだな」
斑を抱き上げ、夏目は空を見上げ微笑んだ。
「ーーーーそうだよな」
同じものを見
同じものを感じる人とさえすれちがってしまう。
そんな悲しみを
皆は知っていたんだ。
「おーい夏目ー、鈴木ー」
あいかわらずの
妖が見える日々。
けれど皆と同じ
人の心は今日も見えない。
いつか
見てやるぞと
目を凝らす日々。
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