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縄に繋がれた妖のことと、名取のことを夏目へと雪野は相談した。何とかしてみると、夏目は翌日出かけてしまったが、やはり気になり雪野は縄を追いかけた。



「!放してくれ…名取さん、だめだ」



暴れる夏目を、名取の式が捕まえる。地面に描かれた陣に妖が立つと、ピシピシと妖に向かって電流が集まり出した。



『ーーーーやめて』



咄嗟に叫んだ雪野は、妖を庇うように抱きしめた。



「ーーーーっ!!」

『う…(なにこれ…雷!?)』

「何を…早く出なさい。私には雷を止められない…」



バチバチと、電気が肌を刺激する。飛び込んだ雪野に名取は目を見張り焦る。



「!およし…ぎゃ」

「!」

「雪野!」

「ちっ」

『!』



式の拘束から抜け出した夏目と、本来の姿へ変化した斑が陣に飛び込む。妖と、雪野と、夏目を庇うように覆った斑により、ふっと痛みが和らいだ。



「『先…』」



ーーーードンッ.

爆発した瞬間、夏目と雪野は記憶に飲まれた。





「ねぇ、どうしたの?変なお面…手から血が出てるよ」



ヤモリの痣を持つその子供は、そう声を掛けると包帯を巻いてくれた。



「ころんだ時、母さんがこうして手あてしてくれたんだ。でも母さんはもういないんだ。体が弱かったんだ。僕が変なものを見るせいで、僕が不幸を招きよせたんだって、おじさん達は言うんだ。でもさ、だったらそうなる前に、誰かが僕を退治してくれればよかったのに」

「よく喋るガキだ…人はね、人の子にはね、不幸を招けるような力なんてないんだよ。お前は優しい子だよ。優しい、普通の子供だよ」




ーーーーだって

私はお前に会えて

こんなに

うれしかったのだからーーーー…





ふと、目を覚ました夏目。夕暮れ空が目に入った。隣には依代姿の斑もいる。雪野は、まだ気を失っているようだ。



「生きているよ」



声に視線だけ向けると、名取がすぐ近くに見下ろすように座り込んでいた。



「首の呪縛も焼き切れた。五分五分だと思っていたんだ。呪縛から逃れられないあわれな妖なら一思いに逝かせてやりたかったし、うまくいけば一命とりとめて…縄を焼いて、自由にしてやれるんじゃないかって…」



ピクリと、雪野の指先が動き、目が開かれた。名取と雪野の目が合う。



「気付かなかったよ、あの妖だったんだな。君達が盾になってくれたおかげで、この程度で助かったんだ」



ゆったりと風に吹かれ、雲が流れる。



「ーーーーけれど、すまなかった。こういう巻き込み方をしたかったわけじゃない。特に夏目、君を見ているとむかしの自分を思いだして、何かを伝えてやれるんじゃないかと、ただ話をしていたかったんだ」

「ーーーーはい。僕もです」



その会話に、少しだけ安心したように気が抜けて、雪野はまた目を閉じた。



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