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「七辻公園、行って来るけど…雪野も行くか?」



翌日、夏目は雪野にそう尋ねた。



『…行くの?なんか、意外というか…』

「…本当は色々、ききたいこととかやっぱり、あって…」



ぼんやりとそう呟いた夏目に、雪野は少し考えたがやはり首を横に振る。



『ーーーーいかない。私はいいよ…水かけちゃったし』

「ああ…まあ、そっか。それじゃ、行ってくる」

『いってらっしゃい』



見送り、部屋へと戻る。



『(あれ?先生いない…あ、ついていったのか)』



開け放たれた窓を見て納得。勝手に開けて…と、ため息しながら窓を閉める。



「雪野ちゃーん、七辻屋でお饅頭買ってきてくれないかしら?」

『はーい』



マフラーをしてお饅頭を買った帰り道、道端に縄を発見。



『(……この縄…………)』

「やめんか小娘」



ぐいぐいと、思わず引っ張っていると背後から怒りを滲ませた声が。



『あ、ごめん』

「…」



戻ってきたらしい妖と共に、なんとなく雪野は一緒に縄の先まで戻った。縄は、ある家の柱に釘で止められていた。



『この縄は誰が…?』

「ーーーー……あ、お前、わずかだがあの子のにおいがする」

『ーーーーあの子?』



答えない妖の空気に、何かあったのかは察した。



『ーーーー座って。その包帯、気になるから巻き直させてよ。済んだらもう無視してくれていいからさ』



妖の手を取り、雪野は解けかけている包帯を巻き直す。



「ーーーーどこぞの」

『え』

「昔、どこぞの祈祷師がこの縄を」



どうやら、先ほどの質問に答えているようだ。



「私は山守りをしていたが、捕まってあの柱に縛られた。この家と倉を守るよう命じられた。倉を開ける者がいたら、その者を祟るようにと」

『じゃあ、いつも…』

「最近倉を開けた者がいる。そのものを祟るため通っている。役目を果たさねばやがてこの縄がしまり、首がおちるようになっている」

『ーーーー…』

「昔は逃げようとしたがやがてあきらめた」



その証拠に、爪はわれており、柱にはたくさんのひっかいた跡が。



「あきらめて、ひとりぼぉっとそこに座っていた」



何年も。何年もーーーー…。

ーーーーねぇ、どうしたの?変なお面。手から血が出ているよ。



「あれは、人の子だった。お前のように私を見ることが出来た。その子がこれをまいてくれた」



静かな声で話す妖の話を、雪野はじっと聞く。



「ーーーー倉が開いた時、役目など果たさず、このまま首が落ちるのもいいと思った。何の未練もない」

『え』

「けれど縁とは面白いものだ。あの子が祓い人としてこの街へ帰ってきた」



目を見張る雪野の脳裏に、名取が思い浮かんだ。



「あの子になら払われてもいいと思った。あの子の手柄になるのは喜ばしい。異形とは面倒だね。こんな布きれ一枚の礼も、ろくに出来ない」



夕暮れに、包帯を見つめながら呟いた妖を、雪野はただただ見つめていた。



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