見える人
『(縄…?)』
買い物帰り、道端に古ぼけた縄を見つけた雪野は、その縄の先を目で追った。着物を来た、角のはえた女がいた。
『(つながれてるのか?妖だよね……)』
ゆっくりと歩を進めるその妖の右手には、解けかけの包帯が巻かれてあった。
『…包帯、解けかけてるけど。巻き直そうか?』
ピタリと、妖は足を止めた。
「人のくせに構うな」
突き放し、妖はまた歩き出した。苦笑して、背を向けると雪野も妖とは逆方向へと歩き出した。
翌日の放課後。雪野と、校門の所にいた男の目が合った。
「ちょっといいかな」
『え!?はあ…』
何処かで見たことある気がする。首を傾げながらも、人当たりの良い笑顔を向ける男に頷く。
「「夏目」っていう生徒いるかな。男の子なんだけど」
『…知り合いですか?』
「ちょっと話があってね」
「ねぇ、あの人もしかして…俳優の名取さんじゃない?」
「え!?あ……本当だ、似てる。でもまさかー…」
通りがかった女子生徒の会話が聞こえたようで、男は微笑み軽く手を振った。きゃーっと、悲鳴が上がる。
『(あ!そうか、名取周一って俳優…だから見覚えが!)』
ぎょっと衝撃を受けていた雪野は、名取の首筋にヤモリのような痣を見つけた。
『(痣…?入墨?珍しい形…)』
思わず凝視していた雪野。しゅるりと、その痣が移動した。
『!動いた…!?』
ピクリと、名取が笑顔を消して目を丸くさせる。はっと我に返り雪野は自身の口を手で隠す。
『あ…いえ、その…』
「君、もしかしてこれがーーーー」
「雪野!」
夏目の声に、雪野も名取も顔を上げた。駆け寄って来た夏目が雪野を庇うように間に入る。
「彼女になにか用ですか」
「…いや、私が用があったのは君だよ。でも、彼女にも用ができたようだ」
「『…?』」
どういう意味かと、笑顔を浮かべた名取に二人は不思議そうな顔をした。
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