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「特別に、影を祓える系譜の者を呼び出す巻物をかしてやろう。完ペキな形ができるまでは練習だ。お前の体力では一発勝負だろうからな」

『系譜の者っていったい?』

「さあ…とんでもない大物が出るか、役立たずの小物が出るか。お前と夏目の力量次第だよ」



教えてもらうべく山へと出向いていた雪野は、ヒノエから巻物を借りる。



『貴志くんは?』

「斑と一緒だ。夜通し警戒していたから、今は寝ている」

『…そっか』



曖昧に笑って、雪野は早速ヒノエに呼び出し方を伝授してもらう。しかし、一日では上手く習得できなかったため、翌日の五日目、もう一度山へ。



『(今日、もう五日目だ…ああもう、これって間に合うのか?)』

「雪野!」

『!先生!おっきいまま』



山道を歩きながら顔を歪めて雪野の前に、大きな斑が現れる。



「影が来た!」



目を見張る雪野の前で、斑が変化する。



「乗れ」



考えるより早く、いつもより大きな斑の背中に雪野は飛び乗った。



「式の方はどうなった」

『ま、まだ。昨日は完成しなかった』

「なんだと!?夏目が喰われてもいいのか?あいつを喰うのはこの私だぞ!」

『影にも先生にも喰わせないよ』



ぶわりと、夏目と影の上空に来た時だった。

ーーーーどろん.



「『!!!!』」



斑の姿が依代姿に変化してしまった。



『先生!?』

「わーーーーっっ。妖力が安定せんうちに変化するから!!」



気づいたヒノエが、手を伸ばした。



「雪野、使え!」



投げ渡された巻物を、雪野はキャッチするとすぐさま巻物をしゅるりと開く。巻物は、夏目と影の間にまで伸びた。



「雪野…!?」

『日、通りし道より来たれ。陰、祓う者』



驚く夏目へと、雪野は唱えながら抜いた自身の髪をふっと吹きかけた。



『っ!』

「べぶっっ」



雪野はヒノエが受け止め、斑は地面に激突。ぶあっと、巻物から文字が浮き出し、夏目の前でどろんと煙を上げた。



「!これは…」



はっと、雪野、斑、ヒノエは顔を上げた。



「「『(ちっさ!!)』」」



雪野が呼び出した式は、可愛らしい小鳥だった。



「あはははは。それがお前の式か。まずはそいつから喰ってやる」



影の言葉に、呆然としていた夏目ははっとする。



「!」



無我夢中で小鳥へと手を伸ばすと、影から庇うべく小鳥に覆いかぶさった。



「!夏…」

「チュン」



小鳥の鳴き声が響いた。

ーーーーカッ.



「!」

「ぎっ…」



小鳥から眩い光が放たれた。眩しそうにしていた影は、悲鳴をあげることなく、その姿を光に消し去られた。



「あ…」

『貴志くん!』



ぐらりと、夏目の体が地面に倒れた。慌てて雪野とヒノエが駆け寄ると、眠っているだけのようで寝息を立てている。



「やれやれ、無事のようだな。よくやったぞ雪野」

『先生』



元のサイズに戻った斑が、夏目へと擦り寄るように傍らへ。その温もりに、夏目の目が開いた。



「ーーーー先生、もとに戻ったのか」

「ああ。おわったよ、お前の印も消えている」

「ーーーーそうか…よかった」

「よくないよ」

「!」



パチン、とヒノエが夏目の頬を叩く。



「お前を見ていて思ったよ。大事なものを守りたいとか、心配をかけたくないとか、自分の気持ちばっかりだ。女を泣かせるやつは嫌いだし、自分を大切に出来ない奴は大嫌いだよ」



添えられたヒノエの手からも、夏目は温もりを感じた。



「ーーーーごめん…ーーーーそうだな…」



そっと、雪野へと視線が向けられる。



「ごめん、雪野…それからーーーー…ありがとう」

『…うん。泣いてないから、安心して』



微笑んだ雪野に、夏目も微笑み返した。



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