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7
「特別に、影を祓える系譜の者を呼び出す巻物をかしてやろう。完ペキな形ができるまでは練習だ。お前の体力では一発勝負だろうからな」
『系譜の者っていったい?』
「さあ…とんでもない大物が出るか、役立たずの小物が出るか。お前と夏目の力量次第だよ」
教えてもらうべく山へと出向いていた雪野は、ヒノエから巻物を借りる。
『貴志くんは?』
「斑と一緒だ。夜通し警戒していたから、今は寝ている」
『…そっか』
曖昧に笑って、雪野は早速ヒノエに呼び出し方を伝授してもらう。しかし、一日では上手く習得できなかったため、翌日の五日目、もう一度山へ。
『(今日、もう五日目だ…ああもう、これって間に合うのか?)』
「雪野!」
『!先生!おっきいまま』
山道を歩きながら顔を歪めて雪野の前に、大きな斑が現れる。
「影が来た!」
目を見張る雪野の前で、斑が変化する。
「乗れ」
考えるより早く、いつもより大きな斑の背中に雪野は飛び乗った。
「式の方はどうなった」
『ま、まだ。昨日は完成しなかった』
「なんだと!?夏目が喰われてもいいのか?あいつを喰うのはこの私だぞ!」
『影にも先生にも喰わせないよ』
ぶわりと、夏目と影の上空に来た時だった。
ーーーーどろん.
「『!!!!』」
斑の姿が依代姿に変化してしまった。
『先生!?』
「わーーーーっっ。妖力が安定せんうちに変化するから!!」
気づいたヒノエが、手を伸ばした。
「雪野、使え!」
投げ渡された巻物を、雪野はキャッチするとすぐさま巻物をしゅるりと開く。巻物は、夏目と影の間にまで伸びた。
「雪野…!?」
『日、通りし道より来たれ。陰、祓う者』
驚く夏目へと、雪野は唱えながら抜いた自身の髪をふっと吹きかけた。
『っ!』
「べぶっっ」
雪野はヒノエが受け止め、斑は地面に激突。ぶあっと、巻物から文字が浮き出し、夏目の前でどろんと煙を上げた。
「!これは…」
はっと、雪野、斑、ヒノエは顔を上げた。
「「『(ちっさ!!)』」」
雪野が呼び出した式は、可愛らしい小鳥だった。
「あはははは。それがお前の式か。まずはそいつから喰ってやる」
影の言葉に、呆然としていた夏目ははっとする。
「!」
無我夢中で小鳥へと手を伸ばすと、影から庇うべく小鳥に覆いかぶさった。
「!夏…」
「チュン」
小鳥の鳴き声が響いた。
ーーーーカッ.
「!」
「ぎっ…」
小鳥から眩い光が放たれた。眩しそうにしていた影は、悲鳴をあげることなく、その姿を光に消し去られた。
「あ…」
『貴志くん!』
ぐらりと、夏目の体が地面に倒れた。慌てて雪野とヒノエが駆け寄ると、眠っているだけのようで寝息を立てている。
「やれやれ、無事のようだな。よくやったぞ雪野」
『先生』
元のサイズに戻った斑が、夏目へと擦り寄るように傍らへ。その温もりに、夏目の目が開いた。
「ーーーー先生、もとに戻ったのか」
「ああ。おわったよ、お前の印も消えている」
「ーーーーそうか…よかった」
「よくないよ」
「!」
パチン、とヒノエが夏目の頬を叩く。
「お前を見ていて思ったよ。大事なものを守りたいとか、心配をかけたくないとか、自分の気持ちばっかりだ。女を泣かせるやつは嫌いだし、自分を大切に出来ない奴は大嫌いだよ」
添えられたヒノエの手からも、夏目は温もりを感じた。
「ーーーーごめん…ーーーーそうだな…」
そっと、雪野へと視線が向けられる。
「ごめん、雪野…それからーーーー…ありがとう」
『…うん。泣いてないから、安心して』
微笑んだ雪野に、夏目も微笑み返した。
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