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「『……いってきまーす』」
翌朝、学校へと行くため二人は玄関を出る。夏目の印は広がるし、斑も小さいままで、今は小ぶりのお椀を寝床に。
『あ…』
石柱に、昨日の影の姿が。
「何でこんな所に?またつっ立ったまま…」
『うん…』
じっと、見つめる二人の脳裏に同じものが過る。
「……なあ、この影さーーーー…」
『うん…「メリーさん」みたい』
「メリーさん?」
「『わっ』」
寝ていたはずの斑が、夏目の胸ポケットから姿を現す。
「先生!?いつのまに……」
話が話だっただけに、背筋が一瞬冷たくなった二人だった。
『得体の知れないものが少しずつ近づいてくるっていう、メジャーな伝聞階段だよ』
「電話がかかってくるんだ。『私、メリーさん。今、門の前にいるの』って。暫くすると、また電話が鳴る。出てみると、『私、メリーさん。今、玄関の前にいるの』」
その次は、「私、メリーさん。今、玄関の中にいるの」。
『……』
やっぱり近づいてきてる!!
玄関の前にいる塔子の隣に、あの影が何をするでもなくいた。
「あら、おかえりなさい雪野ちゃん」
『…ただいま。どうしたんですか?玄関で』
「ああ…貴志君の声が聞こえた気がして出てきたんだけど、気のせいだったみたいで」
『貴志くん、まだ帰らないんですか?』
「ええ。いやねぇ、空耳だなんて年なのかしら」
照れ臭そうに笑う塔子に、雪野も一緒になって笑った。
その翌日。
『ねえ貴志くん』
「なに?」
『昨日夜中にさ、何処か行った?』
「え、なんで?」
『物音がしたから』
「………ああ、また先生だよ」
ふ、と笑った夏目に、雪野はあまり納得いかない顔をした。
『本当…?』
「ああ。ほら、遅刻する…ぞ…」
はた、と夏目と雪野は動きを止めた。玄関、家の中に、影。
ーーーーぞっ.
「『いっ、いってきます』」
流石に恐ろしく、慌てて家を出ていった。
『あ、あの影って貴志くんの印と関係あるの?』
「あ…ああ、まあ、なんか監視役?みたいなやつってヒノエが言ってた」
『あれが!?監視役!?不気味』
明後日を見ながら言った夏目の説明に雪野はギョッとしていた。
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