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「ひゃひゃひゃひゃ。何だそのヘチャムクレ姿は!そうまでしてレイコとミヨに受けたいのか!!あっははははひーーーーっっ」

「『……』」

「落ちつかんかヒノエ、夏目と雪野がドン引きしている」

「…雪野?」



大笑いしていたヒノエは、ピタリと笑をやめた。



「そいつはミヨではないぞ」

「なに?」

『…鈴木雪野。鈴木ミヨの孫です』

「孫?…その気分が悪くなるレイコの偽物は?」

「……夏目レイコの孫、貴志です」

「レイコとミヨはどうした」

「とうの昔に他界した」



何も言えなかった二人に変わり、雪野の肩にいる斑が答えると、ヒノエは目を見張り言葉をなくす。



「そうか。何と短い………」



はらりと、ヒノエの目から涙が零れる。



「だから好かんのだ人は」



寂しそうに呟いたヒノエを見つめていた夏目は、ハンカチを差し出した。



「!寄るな男め」

「…寄りませんから使ってください。レイコさんとミヨさんのために、泣いてくれているのでしょう?」



真っ赤にした目で睨みつけていたヒノエだったが、ばっと奪い取ると盛大に鼻をかんでいた。



「いや失礼した。三篠殿が「鈴木」が呼んでいると…久しぶりに人間などと話をして、つい興奮してしまったよ」



髪を束ねて煙管を蒸すヒノエだったが、その煙をふっと夏目へと吹きかける。じろ、と夏目が睨むと、愉快そうに笑みを浮かべた。



『貴志くんの呪いを、調べてほしいの。三篠が、貴女なら詳しいって…』

「なるほど。ミヨではないのは残念だが、お前の頼みなら喜んで引き受けてやろう」

『うん…ありがとう…』



頬擦りするヒノエに雪野は軽く引き気味に礼を言った。



「ーーーーおや、これは「五日印」だね」

「いつか印?」

「動けない奴が近くを通った奴に印をつけるんだ。印は五日間かけてつけられた者の生気を吸いつくしたり、印の主の所へ引きよせて食べたり。そうして力を蓄えて印主は、その名の通り、いつか自由になる力を得るってやつだよ」



とりあえず、夏目が印をつけられた場所へと出向く。



「ーーーーん?おかしいな。この辺だったのに」

『…何もないね』

「…蛙を追ってるうちに、人には通れぬ道に入ってそこでそれに会ったのだろうな」

「やれやれ、面倒だが少し調べておいてやるから、今日はさっさと帰りな」



お言葉に甘え、呪いの方はヒノエに任せて、暗くなる前に家へと帰ることに。



「まいったな。面倒なことになった…」

『…ん…?』



ふ、と顔を上げた雪野の訝しげな声に、夏目も顔を上げた。真っ黒に塗り潰された、人のようなものが立っていたのだ。戸惑いながらも、警戒しつつ隣を通り過ぎる。



『ーーーー何だろう、あれ…』

「つっ立ったまま、動かないみたいだけど…」



微動だにしないその影を盗み見つつ、不気味に思い速足に二人は帰宅した。



「『ただいまー』」

「あら、どうしたのその腕!」



夏目の腕に巻かれる包帯に、夕飯の仕度をしていた塔子がすぐさま気づく。



「お、折れた枝でひっかいて…大したことないですよ」

「まあ、ちょっと見せてちょうだ……」

「だっ、大丈夫です問題なしですこんなに元気ですっっ」



救急箱を用意した塔子にすぐさま言い訳をして、夏目は台所から逃げた。


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