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「#幼馴染」のBL小説を読む
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「夏目様、鈴木様。ありがとうございました。二葉へと帰ります。夢のようでございました。もう思い残すことはありません」



深々と、取り憑かせて欲しいとお願いした時のように頭を下げた燕を見下ろす。



「そんなに好きなら、もう村へは帰らなくてもいいんじゃないか?」

「ふふ、実は一度あの人に取り憑いてやろうかと思った頃もありました。生意気な人間め、取り憑いてやるって」



ーーーーけれど、いつしかそれは好意へと。



「それに私は、きょうだい達と同じあの地で眠りたいのです。夏目様、雪野様、ありがとうございました」

「……村がまた水没するまで、いてもいいぞ」



ため息を吐いた後、そう言った夏目を横目に雪野は苦笑した。

ーーーー相手の姿を見ることは叶ったけれど、逢いたいと言った願いは叶えられていない気がする。



『(だから、貴志くんは昨日あんなことを…)』



授業中、ぼんやりと雪野は思い出す。

ーーーー結局、見えるだけで何もしてやれないんだ。



『(…情が、移りそう)』



ーーーーだから嫌なんだ。

なんとも言えない気持ちになり、ため息を吐く。

それから燕は、毎日谷尾崎の通勤路が見える丘へ通った。夏目が付き添えない時は、雪野が付き添って。



『(……鳥が集まってる)』



そう言えば燕なんだ、元は。と、木の枝に腰掛け鳥と戯れる燕を、下から雪野は見上げる。



「あ、あの人だ。おーーーーい」



谷尾崎を見つけ、燕は立ち上がると大きく手を振った。



「おーーい。おーーい」



何度も何度も、大きな声で谷尾崎に向かって声をかけても、その声は届かない。そんな姿を、眺めて雪野は思う。

ーーーーよっぽど、あの人が好きなのだろうか…そんなにも、相手のことを想えるものなのだろうか。



「鈴木様」

『なに?』

「鈴木様も木に登ってみませんか?空が近くて気持ち良いですよ」



木の枝から見下ろす燕に雪野は苦笑する。



『私が登ったら枝が折れて落ちちゃう』

「落ちないよう、私が手をひいていましょう。ならば大丈夫でしょう」

『ーーーーそうかな』

「ええ。さ」



手を伸ばす燕を数秒雪野は見つめると、そっとその手を掴んだ。ふわりと、雪野の体が木の枝へと浮かぶ。



『…燕の手は、冷たいね』

「はい。夏目様も仰っておりました」

『きっと、冷たくて気持ちがいいって、言いたかったんだよ。私も、そう思うから』



微笑んだ燕に雪野の笑い返し、顔を上げた。



『気持ちいいね』

「はい」



暫く、特に何かを話すでもなく空を二人して眺めていると、夏目と斑が迎えに来た。



「…何やってるんだ?二人して。危ないぞ」

「雪野、スカートの中が見えるぞ」

『見ないでよ!』


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