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ダムに行った時に感じた、得体の知れない重量を夏目は思い出す。心当たりと言えばその時しかない。



「どうしよう…」

「私のものに手を出すとは。よし、私が払ってやろう!!」

「!本当かニャンコ先生!」

「ああ。歯ぁくいしばれ」

「え」



ーーーーごっ!



「!!」

「っ!!」

『!?』



歯をくいしばれとは、何故か。その理由は、払う方法がまさかの頭突きだったからだった。



「お見事!放れましたな」

『だ、大丈夫貴志くん…!?』

「…………」



頭突きを受けた額を抑え床に蹲る夏目。



「おのれ、放さん…」



ゆらりと、放れた憑きモノが動きはっと雪野は顔を上げる。



「放さんぞ人の子……」



ーーーーゴッ.



「まぁ、落ちつけよお前達…」

「お前が落ちつけ」



顔を上げた妖怪の顔面にグーパンチをした夏目はテンパってるのかなんなのか。

ーーーーカン.

軽い音を立てて、妖怪からお面が床へと落下する。その拍子にお面は左側が欠けてしまった。



「…ごめん、割れてしまっ…」

「うう…」



むくりと、妖怪が起き上がる。



「うう……」

「「『(ええ!?面の下も面!?ダブル!?)』」」



面の下に何やら象形文字のような絵を描いた布を顔に当てがってる妖怪に、夏目、雪野、斑はぎょっと驚いた。



「ーーーー失礼致しました」



改めて、話を聞く。



「私は自力ではあのダム底から放れられないので、通りすがりのあなた様に取り憑いて……どうしても、逢いたい人間がいるのです。遠目から一目だけでも」

「……逢いたい人間…」

「はい。人の子であるあなた様に取り憑いていれば、万が一にも逢えるのではと思ったのです」



ですから、とその妖怪は床に手をつき頭を深々と下げる。



「どうか数日間、取り憑かせてください



うわぁ………。

丁寧なお願いだが、内容が内容なだけにシュールだし複雑すぎて頷けない。



「断る」

「お前には頼んでいない。古狸は黙っていろ」



即答した斑に、夏目の態度とは裏腹、辛辣にその妖怪は返答した。勿論斑は黙ってない。



「なぜ私がタヌキなのだ!低級のくせに夏目に憑くとはふてぶてしい!」

「やるか寸胴!」

「あははは」

「(……寝たい…)」



雪野は既に船を漕いでいた。



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