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「…たぶんいつも気のせいなんだ。影を見たり、気配を感じたり…」
笑わないでくれよ?と田沼は人当たり良く笑う。
「ーーーー変なこと話して悪い。「夏目」や「鈴木」って奴も、時々何かを見てるみたいだって噂できいて…話をしてみたかった…でも、たぶん…気のせいなんだ」
そう、呟くように言葉を締めた田沼を夏目は見つめる。
「おれは見える。すごく変なもの」
俯いていた顔を上げた田沼が夏目を見る。
「でも内緒な」
そう笑う夏目の隣で雪野も同じように笑い窓の外を見た。
「やっぱりおれ達が変なのかもしれないし」
「ーーーー……そうか………ーーーー……そうだな………」
目尻を和らげはにかむように笑った田沼に、二人も笑い返した。
「ーーーーそうだなーーーー…」
恐いのは同じ
最初の一歩
痛みを伴う交流も
得がたい絆を結ぶのも。
「わっ。先生また酒臭いぞ」
『また何処かで飲んで来たの?』
「奴ら坊主退治に乗じて賭けも主宰してたのさ。強力坊主VSレイコの孫とミヨの孫ってな。まあ私がついてる限り、結果は決まっていたわけだがな」
「『やっぱりしっかり払ってもらうか』」
「土産に鼠をとってきたぞ」
「またか!?」
『そんなものとってこないでよ!』
ーーーーそういえばミスズはどうしただろうか。
そんな疑問を抱えつつ玄関の引き戸を開け放つ。
「夏目殿、鈴木殿。今度こそ名をお返しください」
目の前にミスズ。開口一番にそう言うミスズに、二人は申し訳なさそうな顔で言った。
「…ご免。今から学校だから」
『また後でねミスズ…』
「……」
あいかわらず
「あとでっていつ?」
「知らんよ」
わずらわしいことの多い日々
「夏目、鈴木、おはよう」
「おはよう田沼」
『おはよ』
妖怪はやはり苦手だが
「…あいつら」
学校から帰ってくると、玄関前からコソコソと帰って行く二匹の妖怪を発見。
『何しに来たんだろ…?』
「…あ」
たまになら、相談にのってやってもいいかもしれない。
玄関先に置かれた筍やキノコなどを見て、二人は笑いあった。
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