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5
『ーーーーたぶん、心配はいらないと思いますよ』
「ここらの化物はたぶんそんなに悪さをしませんので、ほどほどにしてやってください」
苦笑しながら言った二人を見て、お坊さんは何となく思ったのか問いかけた。
「ーーーーひょっとして、君達は見えるのかね」
虚を突かれたような顔をして、それから無言で見つめ合う。
「ーーーーいや、答えなくていいんだよ」
二人の様子にお坊さんは笑いかけながら言った。
「何か話したいことがあればいつでもおいで…ひょっとしたら息子とは話が合うかもしれないね」
…息子ーーーー。
二人は顔を見合わせ、お坊さんを見る。
「……ご住職、お名前は?」
「ああ私、姓は田沼と申します」
それから夕方の帰り道。
「やれやれ。何だかんだ言って妖怪びいきだなお前達は」
『……別に「妖怪」だからひいきしたってわけじゃないよ。たぶん…言葉を交わして「知り合い」になったから』
「……小さい頃、人に化けてまで声をかけてくれた妖怪がいたんだ」
雪野と斑は前を向いたまま話す夏目を見る。
「あの時はガキで、その行為でひどく傷ついた気がしていたけど…今思うと、それでも会えて良かったと思うんだ…うまくいえないけど、最近わかってきたんだ。ふれあわすのが心であるなら同じだよな」
人だろうとあやかしだろうと。
「ひとりでいるのがさみしくなるのも、最初の一歩が恐いのも。雪野や先生はどうだったーーーー?」
その次の日、学校に行くと廊下に田沼を見つけた。
『こんにちは』
窓の外を見ていた田沼は夏目と雪野を見た。
「見えるのか?」
「え…」
いきなりの問いに面食らう田沼。
「グランドに、変なものでも見えるか?」
再度問われて窓の外をまた見た田沼は笑って答えた。
「ーーーーいや」
「でも一瞬」と二人が何か言う前に田沼が口を開いた。
「何か変なものの影がふたつ、見えたような気がしたんだ」
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