×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -








『ーーーーたぶん、心配はいらないと思いますよ』

「ここらの化物はたぶんそんなに悪さをしませんので、ほどほどにしてやってください」



苦笑しながら言った二人を見て、お坊さんは何となく思ったのか問いかけた。



「ーーーーひょっとして、君達は見えるのかね」



虚を突かれたような顔をして、それから無言で見つめ合う。



「ーーーーいや、答えなくていいんだよ」



二人の様子にお坊さんは笑いかけながら言った。



「何か話したいことがあればいつでもおいで…ひょっとしたら息子とは話が合うかもしれないね」



…息子ーーーー。

二人は顔を見合わせ、お坊さんを見る。



「……ご住職、お名前は?」

「ああ私、姓は田沼と申します」



それから夕方の帰り道。



「やれやれ。何だかんだ言って妖怪びいきだなお前達は」

『……別に「妖怪」だからひいきしたってわけじゃないよ。たぶん…言葉を交わして「知り合い」になったから』

「……小さい頃、人に化けてまで声をかけてくれた妖怪がいたんだ」



雪野と斑は前を向いたまま話す夏目を見る。



「あの時はガキで、その行為でひどく傷ついた気がしていたけど…今思うと、それでも会えて良かったと思うんだ…うまくいえないけど、最近わかってきたんだ。ふれあわすのが心であるなら同じだよな」



人だろうとあやかしだろうと。



「ひとりでいるのがさみしくなるのも、最初の一歩が恐いのも。雪野や先生はどうだったーーーー?」



その次の日、学校に行くと廊下に田沼を見つけた。



『こんにちは』



窓の外を見ていた田沼は夏目と雪野を見た。



「見えるのか?」

「え…」



いきなりの問いに面食らう田沼。



「グランドに、変なものでも見えるか?」



再度問われて窓の外をまた見た田沼は笑って答えた。



「ーーーーいや」



「でも一瞬」と二人が何か言う前に田沼が口を開いた。



「何か変なものの影がふたつ、見えたような気がしたんだ」




prev next