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「#年下攻め」のBL小説を読む
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3


「騒ぐなお前ら、さっさともどるぞ!」

『ありがとう貴志君。貴志君がお頭様を呼んでくれたの?』

「ああ。手を貸して案内してくれたのは、三篠だけどな。ありがとう、三篠」

『ありがとう。助かったよ』

「ふふ。我が主達はなかなか我が名を呼ばぬゆえ」



三篠のからかい混じりのような言葉には夏目も雪野も笑い返すのみ。



「友人帳などいい加減くれてやれば良いのに」

『ーーーーそうだね』

「おれ達に代わって、名を返してくれる相手にだったらね」



そう答える夏目と雪野の横顔を斑は横目に見つめる。



「阿呆!私がもらう約束だぞ!」

「あ、そうだった」

『わすれてた』

「ほら、帰るぞ!」



斑の背に夏目と雪野は乗せてもらい、斑を筆頭に三篠、ヒノエ、中級も空をかけ、お頭様達に見送られた。

ーーーーこうして東方の森事件は何とかおさまった。

後日、わびにきた猿面の話によると、あの日以来祓い屋の山狩りはおさまったらしく。



「お前達がやった大パレードに祓い人がびびったのではないかという噂だ」

「パレードなんかやってないし、おれ達がやったんじゃないぞ!」

『おもに馬と猫だよ』

「ねこ!?」



心外そうにする斑だが夏目も雪野も気にしない。



「ーーーー夏目、悪かったな…学校とかいうお前の仲間の前で、妙な行動をとらせた



目を丸くさせる夏目の背後で、雪野は微笑んだ。



「ああ…大丈夫だよ」



遠くの方で、西村と北本がこちらに手を振っていた。貧血と聞いたからかレバーを食えと言う姿に、知らない夏目はなぜ!?と面食らう。そんな姿にクスクスと笑っていた雪野だったが、その表情が曇った。

ーーーー「お兄さんもご立派だ。災厄の種を一人で抱え続けたのだからーーーー…」



「雪野?」



はっと、顔を上げると夏目が心配そうにこちらを見ていた。



「どうした?」

『ーーーー…ううん、なんでもないよ』



ーーーー貴志君まで、傷つけたくないな…。

似た境遇の夏目には、話せることもあれば話せないことも、だからこそできるのだ。



「大丈夫?帯、少しきつくし過ぎたかしら」

『いえ、大丈夫です…でも、いいんですか?この浴衣…塔子さんが大切にとってたやつじゃ』



着付けてもらった浴衣を、雪野は複雑そうに見下ろす。



「いいのよ、雪野ちゃんに着てもらえて私も嬉しいわ。これからじゃんじゃん着てちょうだい」

『…た、大切にします』



感動した雪野は頬を染めて頷いた。



『貴志君、おまたせ』

「ああ」



玄関先で斑と待っていた夏目は、自分と同じように浴衣姿の雪野に目を瞬かせて笑った。



「似合ってるな、その浴衣」



目を丸くさせた雪野は、その言葉に頬を染めて笑った。



「くそうおくれた。雪野、お前が遅かったからだぞ。走れ、イカが売り切れたらどうする気だ!」

「大丈夫だって先生」

『そうそう売り切れないよ、少し遅れたぐらいで』



急ぐ斑に夏目達は呆れつつ早足に急ぐ。



「ぬぬー、困った。出られぬぞ。ぬ〜〜〜〜〜」



ん?と、足元から聞こえてきた声に足を止める。



「花火とやらを見ようとはしゃぐからだ」

「ぬ〜」



夏目と雪野は顔を見合わせると、クスリと笑った。

ーーーーひょいっ.



「あ」



クスクスと、穴からつまみ上げてやった夏目と雪野は妖達を見下ろす。



「大丈夫か?」

「ぎゃっ。人の子!?」

「夏目!雪野!また妖に関わりおって……」



不満そうな声を荒げる斑に、二人は笑ってごまかす。

ーーーードン.



「『あ』」



薄暗くなった空の向こうで重たく音が轟いた。



『花火?』

「まずい、はじまったぞ先生」

「阿呆め。走れ夏目、雪野」

『うう、また走るのか…』

「ほら」



憂鬱そうに立ち上がっていた雪野へと夏目は手を差し出す。目を丸くさせていた雪野だったが、笑ってその手をとって走り出した。





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