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「どこへ行く夏目、雪野」

「同級生の家。ちょっと話をしてくる」



と、八ッ原まで来た時「……うう…」と呻き声が聞こえた。



「夏目様…鈴木様…」

「わっ、どうした中級!!」

『丸焦げになってる!?』

「く、くらってしまいました」



ぷすぷすと音を立てて原っぱに二匹は倒れていた。



『退治人がまた来たの!?』

「はい…おそろくはまだ森の中に」

「わかった…お前達は大丈夫なのか」

「はい、こうしてしばらく土の力を吸って休めば…」



二人は顔を上げ歩き出した。



「いくぞ先生」



じっと斑は二人を見上げる。



「やれやれ、すっかり煽られよって。お前達は学習しないな。少し信じすぎじゃないかい」

「!?どういう……?」



ーーーーしゃん.



『…?鈴の音?』

「む!?何か来るぞ」



近づいてくる鈴の音。するとどろん、という音と共に目の前に妖怪が現れた。



「『(でかっ!!)』」



異様にでかかった。元の姿の斑よりでかい。



「な…何者だ…?」

「夏目殿とお見受けした。ふふ、生意気な顔がレイコに瓜二つだ」



次に雪野に妖怪は顔を向ける。



「そちらは鈴木殿とお見受けする。死人のような顔がミヨに瓜二つ」

『しに…!?』

「「友人帳」をお持ちだろう。名を返して頂きたい」



いつもなら返してやってもいいが、今は生憎と取り込み中だ。



「…申し訳ないが後にしてくれないか?今立てこんでいる」

「立てこんでいる?」

「人退治の算段をしている」

『先生!』



余計なことを言うなと雪野が名を呼ぶ。



「ではこの三篠がお手伝い致しましょう。名を奪われながら一度も主にお仕えしないというのもつまらぬ。それに先刻、私の家来が主に助けてもらったそうで」

『?家来?』

「あ、三本線の蛙……」

「良いことはしとくもんだな夏目」

「先生は黙っててくれ」

「おお、三篠ほどの者を使役なさっているとはさすが夏目様と鈴木様」



扇子片手に中級二人が倒れたまま言う。



「恐るべし友人帳!」

「いちいちヨイショしてくれなくていいから寝ていろ」

「三篠殿、夏目様方の敵である人間があの森に潜んでおります。御成敗を!!」

「ーーーー承知」

「『!待……』」



止める間もなく、三篠はその場からいなくなった。



『貴志君!』

「あっ、待て夏目…雪野!!」



まずい、と走り出した夏目の後を慌てて追いかけて行った雪野。



「…ちっ。お前達、あまりあれをからかってくれるなよ」

「「ーーーー…」」



やばい。あんな強力な奴相手にしたら退治人が死んでしまうかもしれない。

奴より先に見つけないと…。



「(どこだ?)」



森の中を駆けていた夏目はあ、と木々の間に人影を見つけ出した。



「『!!』」



夏目に追いついた雪野と斑が見れば、夏目がその人影に走る横をミスズが猛スピードで横切っていた。



『!貴志君!!』



人影を庇うように抱きしめた夏目に顔を青ざめる雪野。その隣で斑が叫んだ。



「雪野命令しろ、奴の名を!!」



はっ、として雪野は叫んだ。



『止まれミスズ!!』



ーーーーぐわっ.



「ぐ……」



ぎゅ、と閉じていた目を恐る恐る夏目が開ければ、ミスズがあと一歩のところで固まっていた。やがてずしん、とミスズはその場に抑えつけられるかのように倒れた。



「止まった…」



ほう…と夏目と雪野は息を吐いた。そんな二人を下から斑が睨みあげる。



「友人帳に名がある以上命令さえすればすむことを飛び出しおって」

「そ、そうだった」

「…一体どうしたんだね少年」



あ、と庇った人影を見て、二人は目を見張り固まった。



「『(お坊さん!?)』」



しかも田沼じゃない。妖怪退治…坊さん…?

ぐるぐると頭の中でその言葉が巡っていたが、やがてん?と考えついた二人は中級二人のもとへ。



「ーーーーおい」

『お前達』

「『もう一度包み隠さずきちんと話してみてくれないか』」



起き上がった中級二人はこちらを絶対零度の瞳で見下ろす二人に冷や汗を流していた。

観念して、中級二人は正座して重い口を開けた。



「最近八ッ原の先の廃寺に新しく坊主がやって参りまして。これがまた勤勉といいますか、しょっちゅう八ッ原を払いにやって来るようになりまして。なまじ霊力が強くほとほと困りまして、夏目様と鈴木様のお力を使ってあわよくば坊主を退治してくれようとーーーー…」



話を聞いた二人ははぁ、とため息。



「お、お前達ねぇ…」

「「ひぃ。申し訳ございません!!」」

「これ、二人とも」



ん?と見た全員にお坊さんは衝撃的な事を言った。



「さっきから誰と喋っているんだい?」



え!?



「『(見…見えてないのか!?妖怪が…)』」



改めて話を聞くことに。



「私はこの八ッ原の寺に新しく参りましたが、実は息子が少し敏感な子でして…時々何かを感じるようで、よくあてられて体を壊すのです。それなのにこの周りは化物が出ることで有名だと聞き、まぁ一応こまめに気休めにお清めをしてまわっている次第なのです」

「きっ、気休め!?」

「あのような力を持っていながら見えぬとは!!」

「霊力妖力というより、法力を持っているんだな。生まれ持ったのではなく修行で知らぬまに身についたんだろう」

「『…………』」



ペチャクチャ後ろで話す妖怪達。


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