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ケマリの先導かカル達の気まぐれかわからないが、美しい大龍を多くの妖が見たとしばらく噂になった。
狂暴だと噂されたカル達の群れは、こっそり静かに遠い所へ旅立っていった。
「雪野!よかった、もうあの邪魔な札は取れたんだね。やはりこうしてお前のかわいい顔が見えなくては」
『あーうん…おかげさまで…』
事後報告にヒノエのもとへと行けば、会った瞬間にヒノエは雪野に抱きつき撫で回し、巻き込まれないよう傍観する夏目の腕の中で斑が色々怒鳴っていた。
「やれやれ、無事で何よりだ。カルにやられた傷はもういいのかい?」
改めて気を取り直し、芝に腰を落ち着ける。
「相変わらず無茶するね」
「…ごめん……中級達にも何かお礼しないとな」
「阿呆。まずはこの私に一番のお礼をせんか」
「お礼もなにも先生はそもそも用心棒だろ」
それにしても、と雪野は昨夜を思い出して笑う。
『カルの大龍、すごかったよね』
「ああ…あんな小さな妖達でも集まれば、アマナのような大妖をおいはらうことも出来るんだな」
「ーーーーああ。ひとりで抱え込んでたって、解決できないこともあるだろうしね」
ヒノエの言葉に、夏目はその通りだと感じて笑った。
「ああ」
俺の力は小さくて
強くなりたいと
あせってばかり
「あれ?中級どうしたんだ?」
「ああ、夏目様。おみやげです」
けれどひょっとして
心通わせることを恐れなければ
「妖の毒に効くそうです」
ぱらぱらと、袋いっぱいにまで集めたたくさんの赤い実を、中級達は夏目の手のひらへ。
「赤笹の実というんですぞ」
ひとりでないと
信じればーーーー……。
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