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3


光の粒のようにして、夜空へ飛び去っていくカルを夏目達は見送る。



「面妖な妖でしたが、去りぎわはなかなか風情がありますな」

「ーーーーはは、そうだな」



笑った夏目は中級達へと振り向く。



「ありがとう中級、おかげで指輪がみつかったよ。これをアマナに返せば家を守れる」



ーーーーミシ…

はっと、夏目は笑顔を引っ込めた。木の軋む音と共に辺りに立ち込める気配に、全員が気づく。そっと夏目は、振り向いた。



「!アマナ」



夏目の背後にはアマナがいた。声もかけずにアマナは夏目の背後にぴったり寄り添うようにして見下ろす。



「…なぜここに?ついてきたのか?丁度よかった、指輪を…」

「…おや?やはり。やはり。やはり。やはり」



はっと斑がアマナを見る。



「やはり、お前が持っている」



アマナの言葉と不穏な空気に夏目ははっとする。



「違うぞ!約束どおり見つけておいたんだ」

「やはり。やはり」



一歩アマナは夏目に近寄り、逃さぬよう、覆うように見下ろした。



「やはりお前が盗んでいたな人の子よ。おお、我が宝珠を、許さん。許さん!」

「!違…」



アマナの心情を表すかのようにうごめいていた髪が、夏目に襲いかかった。みしみしと、骨が軋むほど髪の毛でアマナが夏目を締め付け、その拍子に夏目の手から指輪が落ちる。



『!やめて。貴志君を放して…』

「夏目様!やめろでくのぼう」

「うっ…」



なんとか夏目を助け出そうと雪野と中級は髪の毛を引っ張るもビクともしない。



「…おのれ、礼知らずめ」



夏目を放す気の無いアマナに斑の我慢に限界が。



「こいつの粋狂につきあってみれば調子に乗りおって」



睨む斑が無理に力を使おうとするからか、額の紙が少しずつ破れてきた。



「先…」

「キーーーーイ」



気遣いやめろと声をかけようとした夏目は、上空から聞こえてきた鳴き声にはっと、アマナの背後を見上げた。



「……あれは」



はっと雪野達も見上げて、目を丸くした。徐々に夏目とアマナへと向かってくる、長く優美に動くもの。



『大きい……龍…?ヘビ…?』



呟く雪野に夏目はよく見て違うと気づく。

ーーーーあれは。

夏目がその正体に気づくと同時だった。

ーーーーごおっ.



「夏目」

「夏目様…」

『…貴志君』



大龍のようなそれに、夏目はアマナから助けられどこかへと咥えられていく。



「おのれかえせ。それを私はひねりつぶしてやるのだ」



恨めしそうに睨みつけていたアマナへと、雪野は大きく振りかぶった。

ーーーーひゅん.

投げよこされた指輪に驚きはっとアマナは振り向く。



『大事なものを無くして焦ったかもしれないけどーーーー…いい加減にして』

「指輪はかえされ約束は果たされた」



斑の札が剥がれていく。

ーーーーカッ.



「帰って頭を冷やすがいい」



邪魔な札も取れ、光を放ち斑はアマナを追い払った。そしてすぐさま夏目を追いかける。



『貴志君』



少し離れた先で座り込んでいた夏目は振り向く。



「夏目」

「夏目様、大丈夫ですか!?」

「雪野、先生、中級」

「今の大龍はいったい…」



目を瞬かせている中級にふ、と笑って夏目は空を見上げた。



「大龍ではないよ」



白んできた空を舞っていた大龍が、ばらばらと崩れ始めた。



「カルの群れだ」



大龍の正体は、カルが集まりその姿を模したものだった。



「…ほお。見事な…」



思わず笑顔になる。



「雪野、先生」

「ん?」

『なに?』



す、と夏目は斑を片腕に抱いてカルの群れへと指さす。



「見えるかな、ほらあれだよ。あれがケマリだ」

「ーーーーんー?」

『どうしてわかるの?』



全然分からず不思議そうにする雪野と斑に夏目は微笑んだ。



「一匹だけ、赤い木の実の汁がついてたから」



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