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ちょいちょいと、指先で毛玉の傷口に雪野が薬を塗ってやると、毛玉が目を覚ました。



『妖用の薬だよ。前、ヒノエにもらった残りだから効くかわからないけど…塗らないよりはいいと思うよ』

「悪いがここにはおれ達以外にも人が住んでいるんだ。一晩休んだらちゃんと帰るんだぞ」



傷口に雪野はテープを貼ってやる。



『よし。じゃあ次は貴志君ね、手出して』

「あ…忘れてた」



雪野に手当てをしてもらいながら、こちらをじっと見つめる毛玉をちらりと夏目は見た。

ーーーー本当に、次から次へと厄介事が舞い込んでくる。



「………うう…」



夜。全員が寝静まった頃、小さく呻く夏目にちらりと斑は目を開けた。



「手の傷が傷むのか?」

「……ああ」

「阿呆め。妖には人にとって良くないものも多い」



包帯を巻いた手のひらがズキンズキンと痛み、夏目は痛みに堪えようと目をきつく瞑る。



「あのモジャだってこうして毒を持っている。回復するためお前の力を吸いとってやろうとついてきたんだろう。心を許しすぎると、いつか大ケガをするぞ」



痛みに堪える夏目を、机の上から毛玉がそっと見つめていた。



「おはよう貴志くん…あら、どうしたの寝不足?」



塔子の言葉に、既に揃っていた雪野や滋は夏目を見た。



『本当…顔色良くないよ』

「具合は?熱は?」

「だ、大丈夫です」

「はは。早く顔を洗ってきなさい」



顔を洗いに行く夏目を雪野は半信半疑に見送った。



「…この辺りだな。昨日そいつがいたのは」



学校に行く前に、夏目達は毛玉を外へと返してやることに。



「よし、血も止まったな」



木の枝におろしてやり、夏目は笑いかける。



「もうカラスにいじめられるなよ。じゃあな」

「……」

「お」



じっと夏目を見つめていた毛玉が、毛を逆立てることなく夏目の手のひらに擦り寄った。



「じゃあな」



感謝を示してくれたのかと、別れ際の毛玉の行為に夏目はもう一度笑って手を振った。



「だから次のは、これを代入して…」



授業を受けている雪野は退屈そうに黒板を眺めていたが、ふと窓の外に何かを見つけて目を向けた。



『!?』



斜め前の席、夏目のすぐ隣の窓の外。そこに、なんと毛玉がいた。



『(え!?毛玉!?まさか、貴志君について来ちゃったの!?)』



当の夏目は寝不足なのか船を漕いでいた。



『(貴志君!貴志くーん!)』



授業中なので大きな声が出せない雪野は必死に伝えようとしていて気づいた。毛玉の隣に、また毛玉。



『うわぁ増えてる!?』

「!?」

「お、鈴木元気だな。寝てた夏目も一緒に前で解いてみろー」



たまらずガタンッと悲鳴を上げて席を立った雪野に夏目も目を覚まし、そして二人仲良く先生に当てられた。





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