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3
「うわ鈴木、いつにも増して顔色悪いぞ。大丈夫か?」
『え…うん、平気』
「本当かあ?」
疑わしげな西村に雪野は笑いかえす。
『(益々妖怪とばかり関わってる気がするなー)』
気をつけないと、と決心していると、隣から西村が自分を呼んでいることに気づいた。
「鈴木?きいてる?」
『ごめん聞いて………』
ビク、と視線を感じて振り向くと、一人の男子生徒がこちらを見ていた。雪野が見ると、その生徒は笑って教室に入っていった。
『(今の視線あの人が…?誰だろう)』
ちょっと考えて、西村に聞いてみることに。
『ねぇ、今通った人誰かわかる?』
「ん?ああ、一組の田沼っての」
『へぇ』
「…そういえば、この前あいつ夏目のこときいてきたな。確か、八ッ原の少し先の家に、最近引っ越してきたらしい」
『八ッ原にーーーー…?』
思い出す、人間退治の事。
*
「八ッ原に越してきた田沼ーーーー…」
『うん』
夕食を食べ終え、部屋で西村から聞いた話を夏目にした雪野。
『偶然かな?』
「……」
『貴志君?』
ぼーっとしていた夏目はハッとして笑う。
「何でもないよ」
不思議そうに雪野は首を傾げていたが、そのまま夏目の部屋を去った。
しばらく考え込んでいた夏目だったが、時間がもう遅くなっていた事に気づき眠りについた。それから時間が経って、朝方近くに夏目は目を覚ました。
「ーーーー…ニャンコ先生?」
寝ていたはずの斑の姿がなく探すと、ふすまが開いている事に夏目はため息。
「(明日、田沼にあって話をしよう)」
雪野に話を聞いて、夏目はその田沼が気になっていたのだ。
「ただいま」
「…ニャンコ先生…」
ん?とふすまの隙間を見ると、猫目がこちらを見ていた。
「どこ行ってたんだ?」
「ふふ、ちょっとな」
とてとてと中に入ってきた斑を「ん…?」と夏目はよく見る。と、漂ってきた凄まじいアルコールの匂い。
「うわ先生酒臭え!布団に寄るな、あっちいけ!」
「かたいこというな。土産に蛙をとってきたぞ」
「ゲコゲコ」
「うわっ………………っっ」
それから朝。
「さあお帰り」
窓から蛙を外へと逃がしてやる。
「もう二度とアホニャンコなんかにつかまるなよ」
そう言う夏目の後ろでは斑が頭にたんこぶ作って倒れていた。
「おう夏目に鈴木。え?田沼?来てるかな。あいつ存在感薄いから…」
その日、夏目と雪野は一組に来ていた。
「八ッ原付近に住んでるのか?」
「らしいな、バスもろくに通ってないし、嫌な噂も多いってのにな」
『嫌な噂?』
「むかしから、おばけが出るって有名な所なんだ」
「……おばけねぇ」
「少し先に寺があったけど、今は確か廃寺のはずだ」
「『(だからあんなにのさばってるのか)』」
しばらく教室を見渡していた北本だったが、田沼の姿は見当たらない。
「やっぱ休みだな」
「住所わかるか?」
「え」
「……何?」
驚いたように声を出した北本を二人は不思議そうに見る。
「…いや、鈴木はともかく、夏目が誰かに興味を持つなんてめずらしいなと思って」
「…そうかな」
「そうだよ」
「ーーーーでも」と北本は笑った。
「確かにお前達、どこか似てるかもな。1人好きだし、突然そわそわしたり。恐いものでも見たように、急に青い顔で俯いたり」
曖昧に笑って、二人は北本にお礼を言ってその場を去った。
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