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帰る場所【前編】
『ただいまー』
「おかえりなさい雪野ちゃん」
学校から帰ってきた雪野を塔子は笑顔で出迎えた。
「お弁当どうだった?卵焼きがね、少し甘すぎたんじゃないかって思って」
『そんなことないです。とっても美味しかったですよ』
「そう?なら良かったわ…あ、ふふ。完食ね」
お弁当箱を開けて見て嬉しそうに笑う塔子に雪野も笑い返した。
『先生ただいまー。今日は塔子さんの手作りプリンだよ…先生ー?』
お皿を片手に二階に来て声をかけるも、斑から返事はない。
『…貴志君を迎えに行ってるのかな』
ならばこのプリンは一人で食べよう。部屋に戻りテーブルへとプリンを置く。
ーーーーコンコン.
窓をノックする音に顔を上げる。
『わぁ!!』
窓の外に、不気味なお面に長く伸ばした髪の毛を垂らした人影が。
『…!妖…』
どきどきと脈打つ心臓部分を抑えつつ、妖かと気づく。
『(…何か言ってる…?)』
ボソボソと微かに聞こえる声に耳をすませる。よく見ると、お面をつけていることに気づいた。
『(ーーーー何だろう。嫌なカンジがする…)』
「…タ」
ぞくりと背筋を震わせていた雪野は、少しずつ妖が何を呟いているのか聞き取れてきた。
「見ツケタ。雪野、見ツケタ」
『ーーーー!?』
はっきりと聞こえた声に雪野は血の気を引かせた。
ーーーーカチャッ.
『!?』
触ってもいないのにひとりでに開いた窓の鍵。ゆっくりと妖が窓を開けようとする。
『や、やだ。来ないで!』
直感的に、この妖を入れてはいけないと雪野は窓が開かないよう閉めようとする。
「雪野、久シブリ。モウ逃ガサナイ」
『!』
クスクスと笑う妖の手が雪野に伸びる。
「雪野、雪野」
『!!』
妖が部屋の中まで入ってきた。
「今日のおやつはなんだ?」
「塔子さんがプリンを作ってくれたよ。雪野、ただい…!」
「…む?」
はっと、帰ってきた夏目と斑は妖に気づく。
「何者だ」
ーーーーカッ.
「それを放せ!!」
「ハッ」
斑が光を放つと、気づいた妖は雪野から放れすぐさま窓から逃げた。
「あっ…ちっ。逃げ足の早い…」
「雪野、大丈夫か?」
夏目が床に倒れ込んだ雪野を揺り起こすも、目を開ける様子はない。
「…雪野?」
「む?どうした夏目」
顔色が悪い雪野に夏目は血の気を引かせた。
「雪野!?」
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