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「そこのけー、そこのけー」



鳴り響く、太鼓の音。



「夏目様と鈴木様のお通りだー」

「下にー、下にー」

「お…お前達…?」

『ちょっと…』

「そこのけー、そこのけー」

「こら聞けやめろ!!」



登校する自分達の周りで太鼓を鳴らしながら言っている二匹を止める。



「いえいえ。せめて我等の誠意を示すため、送り迎えをさせて頂きます!!」

『!!帰りもやる気!?』

「よせ!!めーわくだっっっ!!!」

「そこのけー、そこのけー」

『聞いてる!?』

「やめろーーーー」



それからも。



「ほおー、これがガッコウですかぁ」



二匹は。



「夏目様ー」

「がんばれー」



二人の周りを。



「きゃっきゃっ」

『!(呪い!?)』



彷徨いていた。



「(何やってんだか…)」



窓の外で「呪」の文字を書きながらはしゃいでいる二匹を見て、移動教室の帰りの夏目は呆れていた。と、前方に一人の男子生徒を見つけ、目が合うとその生徒は笑って教室に入っていった。



「……?」



…何だ?この感じ…。



「夏目様」



放課後。校門前まで行くと、そこにはすでに雪野が肩を落として二匹と一緒にいた。なぜか斑もいた。



「………………わかった……とにかく話だけは聞こうか…」

『うん………』



どっと疲れた二人がそう言えば、一つしかない目に涙をためて一匹が詰め寄ってきた。



「ありがとうございます夏目様!!鈴木様!!」

『勘違いしないでよ』

「受けてはいないぞ聞くだけだ!!」



だが話を聞いてしまえば無関係とは言い難くなってしまうものだと、まだ二人は学習していない。



「この八ッ原には森や沼があって、細々と暮らしている妖怪がたくさんいるのですが…」

「で、どんな奴だ?」

「いつも突然強力な霊波を放ってくるので近寄れず、姿はよく見えぬのです。人の匂いはするのですが…」



妖怪に恨みでもあるんだろうか。妖怪に気を散らされて、周りになじめないでいる人…とか…?



「わからなくもないな」

『有り得るかも…』

「?」



むしろ妖怪よりそっちと話がしたいーーーー…。

ーーーーにゅう.



「『!?』」

「人間だ」

「人間がいるぞ」



足をつかまれ地面に押さえつけられたかと思うと、草陰から様々な妖怪達が現れた。



「おのれ人間め」

「我らを追い出しに来たか」

「わ…違…」

『ちょ、なに…っーーーーーーーーっっ!?』

「こら違うぞ。その方々はなぁ」



一つ目妖怪が止めようと声をかけるが妖怪達は離れない。



「『ニャ…ニャンコ先生ーーーーっっ』」

「小物ばかりだ。そろそろ自分で払えるようになれ。それくらいなら、ふきとばせる」



助けを求めても斑は動こうとしない。



「でも早くしないと、鼻の穴や耳から脳を吸われるぞ」

『!?ヒッ…わっ…』

「わーーーーやめろセクハラ妖怪共〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!」

「せくはら?」

「知らんのか。セクシャルハラスメントの略だ」



なおも助けようとしない。



「やめ…や………」

『っ………』



我慢の限界だった。



「『やめさせろってんだこのエセニャンコ!!』」



ゴッ、という鈍い音と共に斑は頭にたんこぶを作って倒れた。



「『次は、どいつだ』」



拳を握る夏目と、倒れる斑に足をかける雪野に妖怪達は恐ろしそうに距離をとっていた。

ーーーーピシ.



「『!?』」



何だ?と二人は耳を澄ました。何かが聞こえるのだ。それと同時に、何かが来ると感じる。



「来た、奴だ!」

『奴…って』



はっ、と二人が気配を感じ取った先を見た。



「夏目、雪野、つかまれ」

「!!」



カッ、と光ったかと思うと、二人は本来の姿に戻った斑の背に乗っていた。



「ニャンコ先…」



ゴォッ、と音がしたかと思うと、下の原っぱで光の中妖怪達の悲鳴が聞こえてきた。



「…一体何が…」

「高い霊力の者は、清めの一波を放つことが出来るという」



木のてっぺんから下を見下ろしながら話す。



「どっからか我々に向けて霊波が放たれたんだ。見ろ、下等な連中見事に払われてる」



下におりて辺りを見渡すが、さっきまでいた妖怪達はどこにもいない。



「み…皆…消されてしまったのか……?」

「びびって逃げただけだ」

『そ、そっか…よかった』



ほう〜、と二人は気が抜けたのかその場にへたり込んだ。



「しかしここは清められ、下等連中はしばらく帰ってこれんのさ」

「…居場所をおわれたってことか…」



いきなりの攻撃……随分一方的だ。



『…人間退治なんて事はしないけど』

「とりあえず、相手の顔は拝んでみたい」

「おお、やるか」



次の瞬間、胴上げされてた。



「やってくださいますか!!夏目様!!鈴木様!!」

「胴上げじゃ」

『なあ!?』

「おっ、お前達、しばらくここに帰れないんじゃ…」

「わしら二人は中級なのですー」

『だったら自分らで何とかできないの!?』

「おろせーーーー!!」



まねき猫の姿に戻った斑は、草陰の向こうに目を留まらせた。



「ーーーーあれは…」



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