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4


『………』



捕まるわけにはいかないと、後ろばかり気にして走ったせいだろうか。



『はぁーーーー〜…』



雪野は草に埋もれてあいていた穴に落下した。



『(なんだって穴が…)』

「うっ!?」



ーーーーガラッ…

声と共に、小さな瓦礫が降ってきた。



「わああぁあぁぁ!!!」

『!!?』



悲鳴と共に降ってきたのは、夏目だ。



「…いてて…ん?わあっ。雪野!?」



柔らかい地面に怪訝そうに見下ろした夏目は、下敷きになる雪野に気づきぎょっとして飛び退く。



「わ、悪い。大丈夫か?生きてるか?」

『う…腰が…』



よろよろと雪野は起き上がる。



『貴志君も落ちちゃったの?』

「ああ。まさか雪野までいるとは…まぁ、ここにいれば当分踏まれることはなさそうか…」



それもそうかと笑っていた雪野は、穴の入り口を見上げた。夏目も倣って見上げると、賑やかな声が聞こえてくる。



『楽しいね、影踏み鬼。私、こうしてみんなで遊んだことないからさ』

「おれも」



クスクスと、嬉しそうに笑っている雪野に夏目も自然と笑う。



「…転々と引っ越す先で着いてすぐには、話しかけてくれる子は結構いたんだよ」



空から夏目へと雪野は顔を向ける。



「風評なんか気にしないで、純粋に。それなのに、おれがわけのわからないこと言うから…彼らにとっては、嘘つきだから…」



ぼんやりと、昔を思い出す。



「嘘つきが、嫌われるのは当然で…」



無邪気に笑って声をかけてくれた子供達も、少しずつ離れていった。



『優しい嘘つきと、意地悪な嘘つきがわかればいいのにね』



微笑してため息する雪野が、冗談なのか本気なのか呟く。わからなかった夏目は苦笑いした。



「エスパーとか専門外だな」

『ふふ。私も』

「夏目。雪野」



笑っていた二人は、あっと顔を上げた。



「ーーーーニャンコ先生…」



ひょっこりと、斑が顔をのぞかせていた。



「まったくドン臭い。さっさと上がれ、お前達が最後だ」

「ーーーーおれ達が踏まれたらおしまいか…」

『ニャンコ先生が勝っちゃう』

「だからってずっと隠れているか?」

「ーーーーいや」



夏目と雪野は顔を見合わせ、再び斑を見た。



『上がれないの』

「ひっぱりあげてくれ」

「何!?」



ムキー!としながらも、本来の姿に戻って斑は二人を穴から出してやった。



『(もう夕方だ)』



外に出て気づいたが、日は沈もうとする頃合いだった。



「おお夏目」

「鈴木様」

「お前達も踏まれたか」

「なさけない。やはり人間は弱いねぇ」



円の中で待っていた妖達は口々に言う。



「何だよ。みんなも踏まれたんだろ」

「鬼の勝ちだな。祝い酒だ」

「祭りじゃー」



どんちゃん騒ぎを始めた中級に、勝とうが負けようが口実作って飲んでいただろうと察する。



「守ってやるさ。弱いお前達が呼ぶのならば」



ヒノエの声が、どんちゃん騒ぎの中聞こえる。



「しょうがないね」

「……」

「しょうがない」



目を丸くさせる夏目と雪野。



「気に入ったんだからしょうがないさ」





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