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さあ、追いかけなくては。顔を上げると、すぐそこをよたよたと逃げるちょびひげの姿が見えた。
「悪いなちょび」
軽く走り、後方に伸びていたちょびひげの影を踏む。
「お前が次の鬼だ。誰かの影を踏め」
「おお」
すぐさま夏目はちょびひげから逃げる。
「不覚…油断であります」
逃げる夏目の背中を見送っていたちょびひげは、あ。とすぐさまターゲットを見つけた。
「足の短い生物があそこに」
斑だ。
ーーーーびゅんっ!
「ひっ!?」
なんと、ちょびひげの首が伸びて斑の間近まで顔面が接近。恐怖と驚きに斑は声を引きつらせ足を止めた。
「踏みました」
そのすきに、ちょびひげは斑の影を踏む。
「次はきさまが鬼であります」
「何!?くそう何か腹立たしい!!」
もう足を使うのはやめて浮遊してさっさとちょびひげは逃げる。
「…むむ…獣の血が騒ぐ…」
ーーーーどろんっ.
「だめだ楽しい!」
逃げるみんなに堪えきれず…と言うか堪える気もないのか、元の姿に戻った斑に全員ぎょっとする。
「影」
「ぎゃっ」
「踏んだ」
「ごふっ」
中級二匹が餌食となり、体ごと影を踏まれる。
「…斑さま…影以外のものも踏んでます…」
「夏目覚悟しろ」
「わっ」
踏もうとしてくる斑から夏目は慌ててひらりと身をかわす。
「何だよ。ニャンコ先生もう鬼じゃないだろ」
そう訴えるも斑は聞く耳持たず、とにかく踏みたい様子で追いかける。が、夏目だってそう簡単に踏まれるわけにいかず、小回りを聞かせすんでのところをかわしていく。
「おのれ夏目ちょこまかと…」
そして、冒頭に戻るのだ。
「往生際が悪いぞ」
「ふざけるなよニャンコ先生。仮にも用心棒がこんなこと許されると思うなよ」
「斑さまー。やっちまえー」
「人間相手になさけないですぞー」
「「外野は黙ってろ!!」」
『…』
これ、影踏み鬼だよね。趣旨が変わりつつあり呆れる雪野はため息。
「…だから、影以外への攻撃は」
ついに夏目がキレた。
「反則だって言ってんだろ」
ーーーーゴッ.
顔面を殴られた斑は依代姿へと戻り地面にのびた。
「ふぅ…危なかった」
「夏目のそれも反則じゃないのか」
ヒノエが呟く。
「そのパンチは危険だな。お前の手は封印だ」
「わーーーーっ。走りにくいだろ」
紅峰にぐるぐる巻きにされ夏目は叫ぶ。
「では最初に(影以外も)踏まれた私が鬼ですな」
影踏み鬼再開かと、逃げようかとしていた雪野は鈴の音が聞こえて顔を上げた。
ーーーーしゃらん…
『!三篠…』
「お久しぶりだ鈴木殿、夏目殿」
現れた三篠はぐい、と顔を近づけた。
「我々を犬呼ばわりとは相変わらず度胸がおありのようだ」
『…あれだったら、つるつると牛が勝手に言ってることだよ』
とりあえず謝る。
「あっ、大きな日陰発見」
「助かった」
三篠の体の下に出来た日陰へ全員入り込む。
「おお?」
「三篠さまー」
目を瞬かす三篠の影を、一つ目が踏む。
「影、踏みましたぞ。三篠様が鬼となります」
「ほお」
ゆらり…と、三篠の空気が不穏なものに。
「私が鬼になる…か。やってみよう」
「待て!逃げる者の影を踏む役という意味だ」
訂正しなくては何か大変な気がして夏目は慌てて付け加える。
「成程。それは、面白そうな遊びですな」
なんて、愉快そうに踏み潰す勢いの三篠に、大慌てで全員逃げ惑う。まさにデジャビュ。
「ふふふふふふふふ。さぁ逃げ惑え、下賤なる者共」
「三篠様も影以外のものも踏むタイプです夏目様鈴木様!!!」
「…三篠。悪いが審判をやってくれないか」
このままでは負傷者が出るだろうと、三篠の立ち回りは審判となった。
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