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2


さあ、追いかけなくては。顔を上げると、すぐそこをよたよたと逃げるちょびひげの姿が見えた。



「悪いなちょび」



軽く走り、後方に伸びていたちょびひげの影を踏む。



「お前が次の鬼だ。誰かの影を踏め」

「おお」



すぐさま夏目はちょびひげから逃げる。



「不覚…油断であります」



逃げる夏目の背中を見送っていたちょびひげは、あ。とすぐさまターゲットを見つけた。



「足の短い生物があそこに」



斑だ。

ーーーーびゅんっ!



「ひっ!?」



なんと、ちょびひげの首が伸びて斑の間近まで顔面が接近。恐怖と驚きに斑は声を引きつらせ足を止めた。



「踏みました」



そのすきに、ちょびひげは斑の影を踏む。



「次はきさまが鬼であります」

「何!?くそう何か腹立たしい!!」



もう足を使うのはやめて浮遊してさっさとちょびひげは逃げる。



「…むむ…獣の血が騒ぐ…」



ーーーーどろんっ.



「だめだ楽しい!」



逃げるみんなに堪えきれず…と言うか堪える気もないのか、元の姿に戻った斑に全員ぎょっとする。



「影」

「ぎゃっ」

「踏んだ」

「ごふっ」



中級二匹が餌食となり、体ごと影を踏まれる。



「…斑さま…影以外のものも踏んでます…」

「夏目覚悟しろ」

「わっ」



踏もうとしてくる斑から夏目は慌ててひらりと身をかわす。



「何だよ。ニャンコ先生もう鬼じゃないだろ」



そう訴えるも斑は聞く耳持たず、とにかく踏みたい様子で追いかける。が、夏目だってそう簡単に踏まれるわけにいかず、小回りを聞かせすんでのところをかわしていく。



「おのれ夏目ちょこまかと…」



そして、冒頭に戻るのだ。



「往生際が悪いぞ」

「ふざけるなよニャンコ先生。仮にも用心棒がこんなこと許されると思うなよ」

「斑さまー。やっちまえー」

「人間相手になさけないですぞー」

「「外野は黙ってろ!!」」

『…』



これ、影踏み鬼だよね。趣旨が変わりつつあり呆れる雪野はため息。



「…だから、影以外への攻撃は」



ついに夏目がキレた。



「反則だって言ってんだろ」



ーーーーゴッ.

顔面を殴られた斑は依代姿へと戻り地面にのびた。



「ふぅ…危なかった」

「夏目のそれも反則じゃないのか」



ヒノエが呟く。



「そのパンチは危険だな。お前の手は封印だ」

「わーーーーっ。走りにくいだろ」



紅峰にぐるぐる巻きにされ夏目は叫ぶ。



「では最初に(影以外も)踏まれた私が鬼ですな」



影踏み鬼再開かと、逃げようかとしていた雪野は鈴の音が聞こえて顔を上げた。

ーーーーしゃらん…



『!三篠…』

「お久しぶりだ鈴木殿、夏目殿」



現れた三篠はぐい、と顔を近づけた。



「我々を犬呼ばわりとは相変わらず度胸がおありのようだ」

『…あれだったら、つるつると牛が勝手に言ってることだよ』



とりあえず謝る。



「あっ、大きな日陰発見」

「助かった」



三篠の体の下に出来た日陰へ全員入り込む。



「おお?」

「三篠さまー」



目を瞬かす三篠の影を、一つ目が踏む。



「影、踏みましたぞ。三篠様が鬼となります」

「ほお」



ゆらり…と、三篠の空気が不穏なものに。



「私が鬼になる…か。やってみよう」

「待て!逃げる者の影を踏む役という意味だ」



訂正しなくては何か大変な気がして夏目は慌てて付け加える。



「成程。それは、面白そうな遊びですな」



なんて、愉快そうに踏み潰す勢いの三篠に、大慌てで全員逃げ惑う。まさにデジャビュ。



「ふふふふふふふふ。さぁ逃げ惑え、下賤なる者共」

「三篠様も影以外のものも踏むタイプです夏目様鈴木様!!!」

「…三篠。悪いが審判をやってくれないか」



このままでは負傷者が出るだろうと、三篠の立ち回りは審判となった。




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