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「妖がごちゃごちゃいたのでどれがどれやら。その子に当てる気はなかったんですが…かばったということは、それはその子の子分ですか?すごいな」
『(ーーーーあの人が、的場さん…?)』
弓を持ち、長髪に眼帯の男。当てはまる特徴に、すぐに雪野は的場かと察する。
「私でさえ大妖の場所を知ろうと紙面の妖について回ったり、妖に後を追わせたりしたが、なかなかたどりつけなかったというのに。ちょっと泳がせてみれば、すぐこの場を見つけてくれた」
ーーーーさて。的場は大妖を見た。
「式として使えるか、こいつが動いている所を見てみたいですね」
「う…」
蹲り唸る夏目の肩からは、血が滲んでいる。ざわりと、斑の中で何かがうごめいた。
「ーーーー…小僧」
ぴくりと、雪野は夏目から斑に顔を向けた。
「…身の程を知らぬ者よ。覚悟するがいい」
斑の放つ禍々しい空気に名取と女性も気づく。
『…先生』
見たことない斑の様子に呆然としていた雪野だったが、降ってきた血にはっとする。
『先生』
はっと、雪野の声に斑は我にかえる。
『先生、おちついて。血が出てるんだよ…傷が広がっちゃう!』
必死な雪野に斑だけじゃなく、面食らったのは女性も同じだった。
「…せんせ…」
『!貴志君』
肩を抑えてゆっくりと起きる夏目に雪野は手を貸す。
「夏目、大丈夫か!?」
「ーーーーすみません、かすっただけです。それより先生が…」
慌てて駆け寄った名取に夏目は言う。
「先生!」
「ーーーー…….」
訴えかけるように強く見つめる夏目に、斑が折れた。
「………ちっ」
ーーーーどろんっ.
依代姿へと、斑は戻る。
「命拾いしたな。的場とやら」
「ーーーー何だ。つまらないですね」
そう呟く的場を、夏目と雪野は睨みつけた。
「!わっ、先生血が出てるってば」
「む…」
矢は抜けて、傷口からは未だ血が流れていた。顔を青ざめる夏目や雪野と違い、当の本人は涼しい顔。
「血の一滴二滴でさわぐな。こんなのなめときゃ…ぬ、ぬぬぬ…」
と、とどかん。背中の傷に舌は全く届いていなかった。
「夏目、傷は?何てムチャするんだ」
「…すみません。でももうほら、血も止まってます。それより先生の血が、あんなに…」
ーーーーしゅる…と、地面に落ちた斑の血が、蛇か何かのように蠢き三人と一匹はフリーズ。
「「「『!!?』」」」
しゅるしゅると、血は細くなりどこかに向かう。
「うわ何だ!?血が蛇みたいに動いて…」
『気色悪っ…』
「…やっぱり先生、妖怪だったんだな」
「阿呆!さすがの私でもあんなにハッスルした動きのものが体の中を流れていたら恐ろしいわ」
ぞっ。とドン引きする夏目と雪野に斑は心外そうに猛抗議。
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