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お堂を出て、名取は夏目や雪野に見えるように地図を広げた。
「この辺で調べてみたが、ほら、これが妖が襲われた場所なんだけど」
「…あ、つなぐと線になりますね」
地図に記されたバツ印を目で追うと、可視化することによって線になることが分かった。
「そうなんだ。西から東へむかって襲っているんだ。それでそのスタート地点となった辺りに行ってみようと思う」
柊には引き続き羽の妖を任せて、夏目たちはそのスタート地点へと早速向かった。
「ーーーーこんな所に村があったんですね」
「ーーーーああ。かなり小さいようだけど、きれいな所だね」
この辺りは初めてきた夏目と雪野はへえ、とたどり着いた村を眺める。
「…妖か人に話を聞けるといいんだけどな」
「的場がどこにいて、どこで術を行うつもりでいるのか…だな」
メガネだけで大した変装もしない名取は歩けば視線、声をかければ悲鳴で目立ちまくり。夏目と雪野は妖に大して情報を集めるが、これといった情報はなかなか入らない。
「む?」
次に移動するかと歩く三人について行っていた斑は、目の端に入ったものに顔を向けた。
「あそこだ!!さぁ走れグズ共、うどんに向かって」
「え?」
斑が見つけたのは、うどんとそば屋だった。
「いらっしゃいま…」
「こんにちは。素うどんよっつ」
ざわめく店内に、夏目と雪野は複雑そうに名取と相席。
「あの、すみません。この辺りで何か変な噂はありませんか?」
「え?」
店員さんへと名取がにこやかに尋ねる。
「変…といいますと?」
「ーーーーたとえば、お化けが最近出る所があるとか、見なれぬ変わった人がうろうろしてるとか」
「…変わった人…ですか?」
『この人以外でお願いします』
微笑んだままの名取に雪野が店員に言う。
「…う〜ん…変わってると言えば…裏の宿に長髪で、片目を隠しているお客さんが泊まっているらしいですよ」
「!」
すぐに的場だと気づく。片目を隠して長髪の者が、こんな身近に他にもいたらそれはそれで凄いが。
「…何か曇ってきましたね」
お礼を言い、素うどんも平らげて店を出ると、晴れていた空はいつの間にやら重たい灰色に変わっていた。
「いきなり的場の場所がわかるとは。猫ちゃんもたまにはやるんだな」
「たまにとは何だ!」
名取の言い草に斑は青筋浮かせる。
「その宿で術の準備をしているのかもしれないですね…」
「ーーーーしかし…こんなにすぐ居場所がわかるとはーーーー…」
うーん…。三人揃って、複雑な心境。
「……罠っぽいですね」
「ーーーーそうだね」
『うん…』
「ーーーーでも何かこう…」
少し考える様子を見せた名取に、え?と夏目と雪野は顔を上げる。
「…いや。とにかく、様子を見に行くか」
と、出発しようとした時だった。
『あ』
ーーーーザアァァァ.
「「『……』」」
勢いよく、雨が降ってきた。
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