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人ならぬもの【中編】







「ーーーー意外と若い人だったよ」



的場とはどんな人だったのか。尋ねた雪野に夏目は改めて思う。



「もっとこう…渋い感じかと思ってた…」



とりあえず、予想を全て裏切る風貌だった。



「眼帯、長髪、番傘とは、随分痛い格好だな」

『うわぁ…』

「まぁ色々あるのさ」



軽く引いた雪野に名取は言う。



「長髪のほうが妖に、髪をやるからと交渉しやすい」

「『ーーーーへぇ…』」

「眼帯も…まぁ色々あるのさ」



そんな名取の説明に、二人は思う。意外に自分は、妖のことを知らないのだな、と。



「少し調べておくから、今日は帰りなさい」

『あの、名取さん』



立ち去る前に、雪野は名取に声をかける。



『…この前のことで、愛想とかついたと思うんです私に…でも、今回のこと…ありがとうございます。貴志君のこと、守ってあげてください。私じゃそんな大層なこと、出来ないから…ーーーー虫が良いお願い、なんですけど…』



見下ろしていた名取は、顔を俯ける雪野の頭を撫でた。



「愛想ついたりしないよ。夏目も君も、ちゃんと守るから」



目を丸くさせた雪野に名取は笑った。



『(…絶対、愛想つかされたと思った…)』



家に帰り部屋に戻って、ぼんやりと雪野は本を眺める。



『(なんだか申し訳ないな…友人帳とか、隠しごとしてる身なのに…)』



ため息して本を閉じた雪野は、改めてお礼を言わないとなと思い、寝床についた。



「おはよう」



翌日、夏目と雪野と斑はお堂へと出向いた。柊の傍らには、羽の妖が横になっていた。



「具合は?」

「まだ動かない方がいいようだ。名取はまだ調べに行っている」



ということは…。



「…名取さんもまさか、この廃屋で一晩?」

「その方が調べやすいからな」

「…なぜそこまでしてくれるんだ」



面食らう夏目にふふ、と柊は笑う。



「自分だって妖のために動きているくせにーーーー名取は自分が藪をつついて蛇を出してしまったと思っているんだろう」

「ーーーーどういう意味だ。蛇って、的場さんのことか?」



もしかしてと尋ねた夏目に、そんなところだ。と柊は頷いた。



「夏目、雪野、退くなら今のうちだぞ。的場って奴は関わらないほうがいい。タチが悪い」



最終確認をする斑に、よほどの相手なのだろうと雪野は思わず表情を強張らせる。



「ーーーー妖相手なら守ってやれるが、人が相手となると勝手が違う」

「ーーーー先生!」

「ただい…」



帰ってきた名取はあ、と夏目たちを見た。



「夏目、雪野」

「あっ、名取さん…すみません…でも、ちゃんと夜は休んでください…」

『そうですよ…有り難いけど、一応芸能人なんだし…体とか壊しますよ』

「平気さ。寝不足ごときで私の笑顔が陰ることはないから安心してくれ」

「完全に発言が徹夜あけのおかしなテンションじゃないですか」

「そうか?いつも通りの発言にきこえるぞ」

『先生に同感』



心配する夏目と違い、斑の言葉に同意した雪野は心配の必要はなさそうと判断した。





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