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3


『(あれ…?)』



目を瞬かせて、出かけから帰ってきた雪野は靴を脱ぐ。



「おかえりなさい雪野ちゃん」

『ただいま。貴志君お出かけですか?』

「ええ。猫ちゃんと一緒に、雪野ちゃんが出かけてすぐくらいかしら」



へえ、と雪野は納得。



「これ、おやつのみたらし団子。すぐお茶をいれるわね」

『ありがとうございます』



みたらし団子が二本分乗ったお皿を受け取り、お茶を待つ。



「はいどうぞ。熱いから気をつけてね」

『はい』



笑って湯のみを雪野が受け取ろうとした時、家の電話が鳴り響いた。



「あら、電話だわ」



ぱたぱたと塔子は電話を取りに向かう。誰だろうかと塔子を待っていると、すぐに塔子は戻ってきた。



「雪野ちゃん、お友達から電話よ」

『友達、ですか?』

「ええ。ほら、以前も旅行でお世話になった」

『………』



すぐに誰だかわかった雪野は、意外そうに怪訝な顔をした。



『ーーーーもしもし、雪野です』

《こんにちは、名取です》

『…電話とか珍しいですね。何か御用ですか?』

《うん…今日、夏目はどうしたんだい?》



外にいるらしい名取は、遠くの方から時折車の走る音が聞こえる。



『…貴志君なら外出中ですよ。いつ頃帰るかはちょっとわからないですけど』

《また何かに首を突っ込んでいるんじゃ…》

『んーーーー…』



言うべきなのか、どうなのか。よくわからず、曖昧な返事しかできない雪野に、名取はすぐに察した。



《何があったんだい?》

『ええと…昨日、鳥というか羽というか、そんな感じの妖を貴志君が助けたんです。その妖が言うには、この辺りで妖の大半の血が奪われるっていう事件が続出してるらしくて』

《妖の血を?……それで?夏目はそれを調べに?》

『いえ……ああ、でも、多分…先生も一緒だし』



今思うとそうなのかもしれないと、雪野はそう答える。



『それが、どうしたんです…?』

《……》

『…名取さん?』



ざわりと、雪野は嫌なものを感じた。



『なにかあったんですか?』

《ーーーー…》



がちゃんと、名取から話を聞いた雪野は受話器を置くと塔子のもとへ走る。



『すみません塔子さん、少し急用ででかけます。あ、お団子一本だけいただきます、すみません!』

「そ、そんなに急がなくても…」

『いってきます』

「いってらっしゃい…」



バタバタと大慌てで一本だけ団子を手にして出かけた雪野に、きょとんとしながらも塔子は見送った。



《的場が、君たちの町に来ている》



名取からそれを聞いた瞬間、雪野は言い知れぬ不安を感じ家を飛び出した。



『!』



ひらりと、走っていた雪野の前に紙人形が。



「雪野」

『名取さん』



曲がり角から名取が駆けてきた。



『来てたんですか』

「心配でね」



すぐさま名取は紙人形をもう一枚用意した。



「ーーーーいけ」



いつかの夏目のように、名取の手から浮いた紙人形は、上空めがけて飛んだ。すぐさまそれを追いかけ走る。



「いた」

『!』



上空を小さな影がふらふらと飛んでいるのが見えた。どうやら、あの妖と一緒のようだ。




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