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人ならぬもの【前編】







斑の散歩に出かけていた夏目と雪野は、賑やかな声とソースの香ばしい香りに足を止めた。



「おい見ろ。屋台が出てるぞ」

「夏祭りが近いからな」



組み立てられた屋台が横一列に並び、時間帯のせいか早速作り始めているところとまだ準備中のところが疎らにある。



「ほぉ…あっ、イカだ。夏目、雪野、焼きイカ買ってくれ!」

「こら、静かにニャンコ先生。大体ニャンコはイカ食べちゃだめなんだぞ」

「あほう、ニャンコではない。中年からイカを取り上げる気か!?」

『抱っこしたくなくなるようなこと言わないでよ!』



斑を抱っこしていた雪野はぎょっと手を離しそうになった。



「早く行け雪野!焼きイカが私を待っている」

『もう…買ってくるね。貴志君もいる?』

「おれはいいよ」



夏目に見送られ、斑の分と自分の分を購入。



『良くかんで食べてよ先生…』



満足そうにイカをかむ斑に注意して、焼きイカにかじりつきながら顔を上げた雪野はおや?と目を瞬かす。



『貴志君?』



夏目が待っていたはずの場所に、夏目の姿が見当たらない。



『あれ?どこ行ったんだろう』

「先に帰ったか?」

『えー…?』



少しその辺を探すかと、お祭り会場から離れて夏目を探す。



「う、わ、あ、あぁああ、あ、あ!!!」



頭上から、夏目の声が聞こえた。まさか、と雪野と斑は顔を上げた。



「『ぎゃーーーー!!?』」



空から降ってくるのはどう見たって夏目だった。ぎょっと顔を青ざめ雪野と斑は悲鳴。



『貴志君!?』

「何やっとるんだあいつ!もーっ」



オーライオーライと、斑は夏目の真下で前足を伸ばした。



「ぐふっ」



もちろん、支えきれるわけもなく、下敷きになった斑の口から焼きイカが飛び出した。



『貴志君!先生!』



はっ、と雪野は横切った影に顔を上げる。



「お前、その人間の知り合いか?お前も見えるようだな」

『………』



妖に関わっていたのかと、雪野はなんとも言えない気持ちになり、はい。なんてかしこまった返事をしていた。





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