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ーーーー箱の中でカイは、閉じこめられて恐かったから泣いていたんじゃない。
祓われるべきものだと、そこにいてはいけないものだと思われていることが、悲しくて泣いたのだろう。
ーーーー泣き虫な神様が山の上にずっとひとり。それがやっと、居たい場所を見つけたのにーーーー…。
『ーーーーカイ!!』
古井戸を見つけていたカイが、雪野の声に顔を上げた。
「雪野…」
『カイ、待って。むかえに来た、話を…』
上空から斑に乗っておりてくる雪野を、カイは睨んだ。
「来るな!」
ーーーーカッ.
「!ぎゃっ」
『あっ!』
見た目は子供だが、正体は水神。攻撃を食らった斑は元の姿に戻ってしまい、雪野も地面に落下。
ーーーーピシッ.
井戸の蓋に、衝撃で亀裂が。直後ーーーーばりんっ!
『!』
井戸からーーーー…!!
亀裂の入った蓋を突き破り、井戸からどす黒いものが飛び出てきた。
「出られた…出られたぞ」
「おのれ人間め、許さんぞ。許さん…」
「う、う…腹がへった。へったぞ…む、何だ」
鬼と呼ばれるものたちの目が、嬉しそうに見上げていたカイを捉えた。
「…うまそうなにおいがする」
「ああ、ハラへった」
「あぁ子供だ。うまそうな子供がいる」
話し合う鬼たちをカイは呆然と見つめる。
「「くってしまえ」」
カイへと飛びかかる鬼たちの前に、雪野は飛び出した。
ーーーーガンッ.
目を丸くさせたカイの前で、雪野は鬼に弾き飛ばされた。地面に倒れ込んだ雪野にすぐさま鬼たちは群がる。
気絶してしまった雪野は逃げる様子もなく、鬼たちが雪野を食べようとしているのを見たカイは、奥歯を音が鳴るほど噛み締めた。
「去れ!!」
ーーーーカッ.
「ぎゃ…」
カイの攻撃に、鬼は悲鳴をあげる間も無く消滅した……が、完全にとはいかなかった。
「…おのれ」
ふらふらと、なんとか生き延びたらしい生き残りが森の中を低空飛行する。
「…おのれ、何者だあの子供…しばらく隠れて力がもどったなら、必ずしかえししてやる…ああ、ハラがへった」
町の子供でも食いにいこうか。そんなことを考えていた鬼は、ぴりりと電撃のような痛みを感じて動きを止めた。
鬼の前には、つい先ほど陣を描き終えた夏目と名取、そして柊がいた。待ち構えていた名取は鬼に向かって笑みを浮かべた。
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