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6


『(あの子が箱に入ってたのも、あの妖が原因…?)』



学校に登校し、花瓶の水換えから帰ってきた雪野はぼんやりと考える。



「あ、見て。門のところに小学生が…」

「本当だ、かわいい。誰か待ってるのかな」



クラスメイトの会話に、雪野も窓際に近づき門のところを見下ろした。思った通り、いたのはカイだ。気づいたカイが嬉しそうに笑うものだから、面食らいつつも、すぐに雪野も笑い返した。



『(子供、そんなに嫌いじゃないかも)』



遊びに来たカイと一緒に、夏目と雪野とタキは帰り道を歩く。



『(…私もいつか、心から人を好きになれるかな…)』



楽しそうに笑うタキとカイを眺める夏目。そんな様子を眺めていた雪野は、ふと思う。



『(いつか家族を、つくることが出来るのかな…)』



だとしたら、藤原さん達みたいな家族がいいな。

仲睦まじい藤原夫妻を思い出して、雪野の口元が緩んだ時だった。

ーーーーパサッ.



『え…なに?』



頭に何かが乗せられた。手で触れると、花の手触り。



「…タキが作り方教えてくれたから…色々のお礼だ…」



夏目とタキの頭にも乗せて、カイは最後に自分の頭に花冠を乗せると、これでみんなおそろいだな…。と、満足そうに照れ笑いを浮かべた。



「「『(なごむなぁ〜〜)』」」



ふわふわと、三人の心は癒される…が、夏目と雪野は耳に届いた、あの金属の引きずる音に目を合わせた。



『カイ、そろそろ何があったか話してくれない?』

「え………」



言い淀んでいたカイだったが、やがてその口を開いた。



「二週間くらい前から、何かの視線を感じはじめたんだ。電柱の後ろに人影を見たけど、ただの変質者か何かだろうとあまり気にしてなかったんだ」

「いやそこは気にしていこうな」



カイの気にする基準に三人は心配になる。



「でもだんだんその何かが、おれを捕まえようとしてる気がしたんだ。あの日はそいつに追いかけられて、廃屋に逃げこんで」



頭に花冠をしたまま、夏目達はカイを家まで送りつつ話しを聞く。



「箱に隠れたら鍵をかけられて、出られなくなってたんだ。そこを雪野が助けてくれて…」

「…そうだったのか…」

『…』



訝しそうに、雪野は顎に指をかけて考える。

…あの時確か、鍵なんて……。



「あぶない!!」

『きゃっ…』



突然雪野を押し倒したカイ。直後、雪野の頭があった辺りを鉈が通り過ぎ壁にぶつかった。



「!?雪野!カイ!」

「…どうかしたの…?」



目の前には、見かけた時より大きくなったあの妖。夏目や雪野には見えているが、タキは陣がなくては見えない。



『ーーーーカイ、君にはあれが見える?』

「…雪野…?」



戸惑っていたカイは気づいた。



「雪野もあれが見えるのか…?」

『!』



振るわれた鉈を慌てて雪野は避ける。



『貴志君、透をお願い!』

「でも…」

『私はカイを連れて逃げるから』



カイの手を取り、雪野は走り出した。



「…え!?雪野…」

「ーーーー逃げるぞタキ!」

「夏目君!?」



タキの手を引き夏目も反対方向へ走り出した。



「なに?まさか、妖?」

「ああ。多分カイを狙ってる妖だ」



ちらりと、夏目は振り向く。妖が追いかけてくる気配も姿もなく、雪野たちを追いかけたようだ。



「タキはこのまま、真っ直ぐ家に帰るんだ。俺は先生を探すから…」

「私も行く」

「タキ…」

「お願い。私にも手伝わせて」



真っ直ぐな瞳に、折れるのは夏目の方だった。




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