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5


『それよりその、つけ回してるって奴について話してみない?ちゃんと警察に言ったほうがいいかもしれないし』

「…いいんだ。大したことじゃないし、言っても意味がない」



嘘や誤魔化しのない目に、既視感を覚えた雪野は口を閉じた。



「……とにかく、謝ったからな。もう放っといてくれ…」



地面に座り込んでいる少年の様子がおかしいことに、眺めていた夏目は気づいた。



「どうした」

「!別にどうもしない…」



右足を庇うようにしている少年に、なんとなく察する。



「おい…」

「いいから。あっち行けって言ってるだろ」



ムキになって少年が言い返した。



「いつまで意地張ってんだ!大変なことになってからじゃ遅いんだぞ!」



怒鳴った夏目に少年は口を噤んだ。すぐに夏目は相手は子供だと、申し訳なく謝罪した。



「怒鳴ってごめんな」

『足、どうかしたの…あ。赤くなってる』

「足首軽くひねったのね。数日でよくなるわ」



ひねったのならば、痛くて歩くのは大変だろう。すぐに夏目はしゃがみ込んで少年に背中を向けた。



「乗れ」

「え、嫌だ…」



じろりと睨めば、少年は素直に夏目に背負われた。家の場所を聞いて、少年を送っていくことにしたのはいいが、ぐすん、と少年から鼻をすする音が。



「(な…泣かせてしまったお子様を…)」



ギクリと、居たたまれなさと申し訳なさと、不甲斐なさに困惑。妖相手と、人の相手は勝手が違いわからない。



「(どうすれば、心配していると伝わるんだろう)」

『カイ、貴志君は怒ってないよ』



ぽん、と雪野がカイの背中を軽く叩く。



『心配しているのにカイが意地を張るから、つい怒鳴っちゃっただけだよ』

「雪野…」



ーーーー…ガラガラ.

背後から、金属の重たいものを引きずるような音がした。何かと夏目と雪野は振り向いたが、何もおらず気のせいかとやり過ごす。



「…違う…そうじゃない…」



ぐすんと。震える声でカイが言う。



「…こんな迷惑かける気はなかったんだ」



小さな声に耳を傾ける。



「…見かけたら右手にけがしてたから…ひょっとしておれを助けたせいで、おれを狙ってる奴に襲われたんじゃないかと思ったんだ…だから…今度はおれが守らなくちゃと思ってつけてきたんだ」

『…そっか。ありがとう』



まだ泣いてる様子のカイの頭を、優しく雪野は撫でてやった。

たどり着いたカイの家は大きく、まだ誰も帰ってきていないようだった。



「…じゃあな」



なかなか懐いてはくれない様だけれど、悪い子ではないようだと、門柱から挨拶したカイがぴゅっ。と姿を消す姿に満場一致で思った。



『私、守らなくちゃなんて言われたのはじめて』

「何!?」

「おれも言われてみたいなー」

「お前たち私を何だと思っとるんだ!」

「私にも出来ることは協力させてね」

『ありがとう透……』



タキとはそこで別れたが、気がかりなことがまだあった。

ーーーーガラガラガラ…

チラリと振り向けば、藪の辺りで見かけたあの妖が鉈を引きずっていた。こちらに気づくと、脇道へと消えた。風貌と鉈にぞっとする。



『…やっぱりいたね』

「見たか先生」

「ああ、あの妖大分腹が減ってるようだぞ」



雪野に抱えられながら呑気に斑は言う。



「…カイのことを狙ってるのか?」

「だろうな。あのガキ何か美味そうなニオイがする。しかし放っておけ。あの妖は所詮小物だ」

『小物でも、私さっき腕を切られたよ』

「何!?」



ぐわっ。と斑がお怒りを表し前足を振り上げた。



「お前たちが喰われて友人帳が手に入るのは大歓迎だが、あんな小物に私のものを傷つけられるのは微妙だ!わかるか私のこの微妙さが!」

「『はいはい』」




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