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藪から離れて、雪野の傷はタキが手当てしてくれた。その様子を眺めながら、雪野はふと思う。
『(やっぱり、透も合わせて最近は、妖を知る人が増えてきたな…)』
田沼君とか、名取さんとか…。
ぼんやりと考えて、うさんくさい名取の笑顔を思い出し雪野は複雑そうにしかめっ面。
「そういえばあの人最近ちょっかい出しにこないな…飽きられたかな」
「ん?」
笑顔を浮かべる夏目に、同じこと考えていたなと雪野は察する。
「おばけに追い回されてる男の子?」
せっかくだから一緒に帰るタキにも、少年について話した。
『言ってるだけで、まだ確認したわけじゃないんだけどね。本当に妖相手かもよくわからないし…』
「ふふ」
『え…な、なに?』
笑ったタキに雪野は戸惑う。
「雪野は優しいのね」
『う』
そういう面と向かった褒め言葉にあまり慣れず照れる雪野に、夏目はクスリと微笑ましそうに笑う。
『…そ、んなんじゃないよ。ただ気になるだけで…優しいとか、ぜんぜ…ん?』
カラン…。そんな軽い音が背後から聞こえ、話も途中だが雪野は振り向いた。
「『あっ』」
電柱の影に隠れるようにしてこちらを伺っていたのは、あの少年。
『あの子だ』
「え」
「あの子って…話のか」
すぐに夏目は合点がいき少年を見つめた。
『待って…』
気づかれたと少年は背を向け逃げ出してしまう。
ーーーーざっ.
「!!?な………っっ…………」
茂みから飛び出した物体に少年は腰を抜かす。その物体は斑だ。
「…………」
身を震わせていた少年だったが、斑が口にくわえる封筒に気づいた。「おとしものです。」と丁寧な字で書いてある。
『あれ!?ニャンコ先生…』
追いついた夏目と雪野とタキ。
「…ん?何だ先生」
手を招く斑に夏目がきょとんとすると、斑が覇気を背負ってだんだん顔を近づけてきた。
「あ、ああ、そうか、帰ったらな」
少年がいるので話せない斑に目で訴えられる200円。結局200円でいいのかと夏目は引きつつ頷いた。
「…ニャ…」
ーーーーがばっ.
「だめだ。あまりの可愛さに我慢出来ない!!」
「ひいい〜〜〜〜〜」
「先生ーーーーっ」
興奮を抑えられず斑を抱きしめるタキがあまりに幸せそうで、助けを求める斑をどうすべきか夏目も困惑。
『私を尾行てたの?どうして』
「うっ。だって…」
騒ぎを背後に雪野は少年に話を聞く。
「…本当にお前じゃないんだな?おれをつけ回したり、箱に閉じ込めたりしたのは」
『ーーーー違うよ?』
まだ警戒している少年に雪野は微笑みつつ言う。
「…そうか………悪かったな…」
納得して、信じてくれたようで、少年は警戒心を解くとすまなそうに謝罪した。
「変態とかゾンビとかマナ板とかごめん」
「「「ぶっ」」」
『……うん、いいよ………』
斑までこっそり混じって夏目とタキと共に吹き出すものだから、雪野は再びダメージを受けた。
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