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3


『…私』



消毒液を用意していた夏目は顔を上げた。



『子供嫌いになったかも…』

「…落としものを届けに行っただけで、何があったんだよ」



ずーん。と落ち込む雪野に夏目は何があったのかと呆れる。



「染みるぞ」

『ううぅ…結構な妖と対面した時より、すっごくダメージを受けた…』

「お前も子供だろう」

「(何があったんだ一体…)」



手当てをしてやりつつ、夏目はついていけば良かったと少し後悔。



『ありがと…それにしても、渡しそびれちゃったからまた行かなきゃ…貴志君、届けてくれない?』

「お前の状態見て行けと?あ…先生、お小遣い出すから頼むよ。200円」

「こんな高等な妖を二百円で使う気か!?紙を出せ紙を!諭吉を出せ!!」



しかし夏目は気にせず斑用に名札を封筒に入れて準備していた。



『…気になること言ってた、その子』

「ん?」



ペンを用意しつつ夏目は話を聞く。



『「おばけみたいなのに追いかけ回されてる」って、言ってた…』

「ーーーー!」



ピタッと。書こうとしていたペンを持つ手を夏目は止めると、顔を上げた。



「おばけって…妖か?」

『うん…多分、そういう類の…』



もしそうならば夏目や雪野と同じ、妖を見ることができる子供ということになる。



「直接確かめたいけど…迷惑だろうか。やっぱり」

『関わるのもちょっと…』



翌日の、学校の帰り道。少年の事が気になりつつはある二人だが、小学校まで出向く勇気などなく落ち込む。



「…喰ってやる…」



ん?と。二人は足を止めた。



「喰ってやるぞ、あの子供…」



茂みの向こうから、声が聞こえる。



「きっとうまいに違いない…」



物騒な声の主は、崩れた灯篭に寄りかかっていた。振り向いた黒く塗りつぶされたような目と目が合いはっとする。妖だ。

ーーーーびゅっ.



「わっ…」



ひょろりとした子供のような妖は、素早い動きでその場から去った。



「逃げたか…」

『でも子供って…」



ひょっとして、あの子のことだろうか?



「雪野?夏目くん?」



ビクッと、二人は反応して振り向く。



「……何だ、タキか」



振り向いた先には、同じく学校帰りらしいタキがいた。



「………何してるの?二人とも」

「ん?」

「早くここからはなれよう」



ぐいっ、とタキは二人の手を引き歩き出す。



「タ、タキ?何なんだ」

「書物で読んだことがあるの。この藪辺りは妖をひきよせるんだって」



強引な対応に戸惑う夏目と雪野にタキは説明する。



「二人みたいに見えてしまう人がこんな所にいたら大変よ。妖達に食べられてしまうかもしれないわ」

「『…………』」



現に。とタキは続ける。



「血が出てるわ」

「え…うわあ!」

『いつの間に!?』

「見られたら騒ぎになる」



雪野の右手の平はぱっくり切れていた。全然気づかなかった夏目と雪野はぎょっと顔を青ざめる。





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