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『ちょっといい?』



翌日。学校帰りに雪野は名札を返すために寄り道。



『君達、東小の子?この名札を拾ったから届けたいんだけど、石尾カイっていう子を知ってる?』



東小学校の近くで雪野は、小学生の二人組に声をかける。



「石尾…?」

「あ、三組の奴じゃないか?ホラ最近変な奴につけ回されてるって言ってた奴」

『…つけ回されてる?』



目を瞬かせた雪野に二人は頷く。



「ちょっと変わってるんだ。おばけみたいなものに追いかけ回されてるっても言ってた」

「両親が帰り遅いから、そういうこと言うんじゃないかって」

『…おばけ……いつも一人なの?イジメられてるとか…』



思わず、幼い頃の自分と重ねてしまう。



「ははっ、まさか。あいつなぜか友達多いよ」

「じゃあねー」

『うん、ありがとう…』



笑って手を振り去っていく二人に手を振り返し、雪野は名札を見下ろした。



『(そっか…そういう事もあるのか…)』



ーーーーばんっ.



『へ!?ぶ!』



歩き出そうとした雪野の目と鼻の先を通過したサッカーボール。ぎょっとしていた雪野の顔面に、壁からバウンドしたサッカーボールが激突。



『っーーーー!!!』



な、なに!?

声にならない痛みに悶絶しながら顔を上げた雪野は、塀の上に仁王立ちする昨日の少年を見つけた。



「何しに来た!?……お前が…」



疑問符を浮かべながら戸惑う雪野に少年は睨みながら指をつきつけた。



「お前が犯人だな」

『ええ!?何の!?』



全く話が見えない。



「よくもあんな箱に閉じ込めてくれたな!」

『何!?誤解…きゃーーーーっ』



教科書やら筆箱やら上履き袋なんかが飛んでくる。地味に痛い。



『わ、私じゃないよ!大体、出してあげたじゃん…私はただ、落としものを届けに来ただけ』

「え…」



声を荒げた雪野に、毛を逆立てた猫のように睨みつけていた少年は目を丸くする。



「あれ、カイ。何そいつ」



そこに、友人らしき三人組が通りがかった。



「あっ。お前を追い回してるって言ってた奴か!」

『…え!?』



まさかの展開に反応が遅れた雪野。その間が悪かった。



「あっちへ行け変態!もやし!」

「マナ板!ゾンビ!」

「えのき!ハゲ!」

『何だって!?』



怒りよりもショックが勝った。



「去れーっ」

「あっちへ行けー!」

『うわーーーーっ!!』



石を投げられ、もう名札を返すどころじゃない。小学生にやられるとはなんとも情けないが、雪野は大慌てで家へと逃げ帰った。





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