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ーーーー見ツケタゾーーーー!!
ぱちりと。雪野は布団の中目を覚ました。
『(……変な夢見た気がする…)』
内心首を傾げながら起き上がり、上着を羽織ると部屋を出て下へとおりた。
「あら、もう起きて大丈夫なの?」
『はい。すみません、心配かけて』
雪野に気づいた塔子は包丁を動かす手を止めすぐさま駆け寄ると、雪野の額に自身の額を合わせる。
「んー…熱は下がったみたいね、良かったわ。辛いところとかない?」
『はい。大丈夫です』
心配そうにする塔子に雪野ははにかむように笑って頷いた。
「無理しちゃダメよ?寒かったらすぐ言ってね」
『ありがとうございます』
「「ただいまー」」
「あら、帰ってきたわ」
玄関へと向かう塔子。夏目の声と別にもう一人聞こえてきた声に、雪野は目を丸くさせた。
「雪野、起きていたのか」
『滋さん』
藤原滋。塔子の旦那だ。
「風邪は治ったのか?油断していたらまたぶり返してしまうぞ」
『大丈夫です。今日、貴志君一緒だったんだね』
「ああ。学校まで、迎えに来てくれたんだ」
そう夏目は嬉しそうに微笑む。
「…ああ、あとこれ。滋さんとおれから、お見舞い」
夏目から雪野が受け取った袋の中には、りんごが入っていた。
「あらあら、美味しそうなりんご!冷やして食後にむきましょうね」
『わー。ありがとうございます』
滋はそれからスーツから着替えるため台所を出て、夏目は塔子が背を向けたのを見て雪野に小さく声をかけた。
「体調、どうだ?」
『まだちょっと怠いけど…大分楽になった』
「…門の前にな、変な落書きがあったんだ。あと、妖らしき足跡も一緒に」
目を丸くさせた雪野。早速夏目と雪野は門柱まで向かう。
「…あれ?」
『何もないけど…』
家の前には落書きも足跡も何もない。怪訝そうに夏目は首をひねって辺りを見るもどこにも見当たらない。
「おかしいな…」
「ただいまー。何を二人して地面を睨んでいるんだ」
「ニャンコ先生」
とてとてと斑が帰ってきたので、夏目は斑にも落書きと足跡について話す。
「妖の描く絵は大抵落書きだが、たまに印があるな」
「印?」
「たとえば仲間に何かを知らせるだとか、たとえば「来ましたよ」のサインだとか」
ぞっ。と夏目と雪野は血の気を引かせた。もしかしたら、この家に妖が来たかもしれないというサインになるのだ。
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