『そういえばジョーカーが初め、皆地元が一緒って言っていたわね』
「ということは、一軍は皆同じ貧救院の出身ということか」
『だけど、一体どこの貧救院かしら?』
「人物がジャマで見えないな。他にもっとよく写っているものは…」
と、探していた時だった。
ーーーーシャ!
このテントの主である猛獣使いの女、ビーストが戻ってきた。何も変わりない部屋の中に入ってくると、ビーストはヒモが切れてしまった上着を脱いだ。
「コレ気に入ってたのに!」
すると、入れ物から服が挟まった形で出てきた。気づかなかったビーストは、もともと挟まっていたものと思いそれを引っ張り出すと着て去っていった。
ーーーーガチャ.
「ふぅ。間一髪間に合いましたね」
「『………』」
一安心したような空気のセバスチャンを二人は何か言いたげに睨みつけていた。狭い箱の中からもみくちゃになりながらも外に出て、セバスチャンに収穫情報を伝える。
「成程。ではお二人はその写真に何かあると」
「ああ。セバスチャン、何か気付いたことはあるか?」
「そうですね」
ダリアが見せる写真をじっと見る。
「このシールリングと同じ刻印(ホームマーク)を、最近見かけました」
「シールリング?刻印?」
セバスチャンが指さすのは、幼いビーストの肩を抱く男の指にはめられた指輪。二人にはかろうじて指輪をはめているぐらいしかわからない。
『私達には指輪ってことしかわからないのだけど』
「お前はこんな小さな物まで見えるのか?」
「ええ。確かこの刻印は…ビーストさんの義足の付け根にあったものと同じものかと」
「義足の刻印、貧救院ーーーーこの男、気になるな」
「坊ちゃん、お嬢様。そろそろお時間です。今日はここまでと致しましょう」
「『……』」
「坊ちゃん?お嬢様?」
シエルは懐中時計を見る。
「まだジョーカーのテントが残ってる。時間も僅かだが8分ある」
『怪しまれないように貴方は戻って。私達が今日全部終わらせる』
走り出しながらセバスチャンに懐中時計を投げやる。
「アンコールが終わったら一軍メンバーより早く戻って蛇を解放しろ。いいな!」
セバスチャンは胸に手を当て二人の背中に言った。
「御意、ご主人様」
*
『身なりからして富裕層か貴族ね』
「貧救院の子供と写っているところを見ると、慈善活動家か?」
と、その時シエルが枕元であるものに気付いた。
「ダリア」
呼ばれたダリアは調べていた手を止めシエルに近づく。
『…手紙?』
シエルの手元を覗き込みなぜ?と眉根を寄せる。宛名を見ると、「笛吹の息子トムより」とあった。
「笛吹の息子?」
『マザーグースのかしら?』
とりあえず中身を拝見して見て、二人は目を見開いた。
「何故だ…?これは」
『シエルの名前!!』
プリントには「Ciel Phantomhive」とあり、事細かに調べ上げられていた。
「!ダリアのもあるぞ」
『どういうこと』
二枚目には「Dahlia Phantomhive」とあった。
「何故だ!?何故僕らの名前がこんな所に!?」
『ま、まさか、正体がバレているの!?』
と、その時外が騒がしくなってきた。
「しまった!!一軍のメンバーが戻って来た!」
慌てて元に戻すとテントを出て物陰に隠れた。一軍のメンバーが通り過ぎていくが、出ることが出来ない。
「(…マズい。深追いしすぎた)」
『(見つからないように早く戻らないと)』
「おい」
背後から聞こえた声に、二人は固まった。
「そこで何してる」
next.
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