×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
4





「ーーーーあれ?ジーメンス郷寝ちゃった?」

「そうみたいですね…」



もう夜も更け、会のような賑やかさも前のことのように思える頃。その声に、うたた寝していた伯爵が目を覚ます。



「セバスチャン、郷をお部屋にお連れしろ。僕も下がる…姉さんは?」

『私もさがるわ』



隣で本を読んでいたご令嬢も、栞を挟んで本を片手に立ち上がる。あんなに分厚い本…頭がいいのだろうか。何を読んでいるのかは、わからなかったが。


「申し訳ありません。僕と姉も先に失礼させて頂きます」

「あれっ、二人とももう寝ちゃうの?」

『私達のような子供は、もう寝る時間よ』

「あとは皆様でごゆっくり」



去っていった伯爵達に、軽く頭を下げる。ふと、目を向けると、何か思案しているようにグレイが見送っていた。



「……都合がいい時ばかり子供になられるのですね」

「うるさい」

『そのニヤニヤをやめろ』






ーーーー





午前1時、使用人達は後片づけをしていた。



「ひっ…ひどい目にあっただよ〜」

「ウダウダ言ってねーで働けッ」



机に突っ伏して泣いていたメイリンだったが、ベルが鳴ったことに立ち上がりどこの部屋か確認する。



「げっ!ジーメンス様の部屋ですだ!!」

「目え覚まして水でもほしくなったんじゃねーか?」



晩餐会での出来事が思い起こされる。



「ううっ…行くの嫌ですだ…」

「私も行きましょう」



横から聞こえた声に沈んでいた気分が上昇。



「セッ、セバスチャンさん∨心配してくれるですだか〜っ∨」

「心配なのはジーメンス様です」



ずっぱりとセバスチャンは言った。



「大分酔ってらっしゃいましたし…」



エプロンを外し上を着て、メイリンと一緒にジーメンスのもとへ向かう。窓に打ち付けるほどの雨に、鳴り響く雷鳴。



「ひでえ雨ですだね」

「あまりこの勢いが続かないといいのですが…」



時折稲光が起こるなか、二人はジーメンスの部屋の前に来た。

ーーーーコンコン.



「ジーメンス様、お呼びでしょうか」

「ぐッ、ぐわあああッ」



ーーーーパリン.



「「!?」」



部屋の中から聞こえてきた悲鳴。驚きながらもメイリンは慌てて扉を叩く。



「どうしたですだがジーメンス様!ジーメンス様!!」

「どうしたの?何の騒ぎ?」



騒ぎを聞きつけ客人達が集まってきた。



「蹴破りましょう」



宣言通りセバスチャンはドアを蹴破る。



「ジー…!!」

ーーーー「!!!」



中を覗いた全員が表情を崩した。



「きゃああああああッ」

「うわああああッ!!」



部屋の主、ジーメンスは椅子に力無く、胸元を真っ赤に染めて座っていた。その様子にフェルペスが気絶。



「失礼!」



立ち竦む人の間を先生が横切り脈をはかる。



「…死んでる!!」
















この時のわたし達は誰一人として想像していなかったーーーーいや、できなかった。

彼の死はほんの序曲に過ぎなかったということを。

唸る雷鳴と豪雨がまるで、悪魔の奏でるオーケストラのように祝福していたーーーー。





















ファントムハイヴ
 幽鬼 城殺人事件の幕開けを。





next.
_83/212
[ +Bookmark ]
PREV LIST NEXT
[ NOVEL / TOP ]