【カンパニア号・第三ボイラー室】
「?」
「こっちだ兄ちゃん!急げ!」
「奴(リアン)はどうした?ってオスカーが言ってる」
バッ、とスネークはエレベーターを見る。と、そこにはリアンが乗っておりそのままエレベーターは上昇。
「コラ待てーーーーッ!!ってオスカーが言ってる」
「あっ、テメッ一人だけ!!」
【カンパニア号・二等旅客用食堂】
『あれっ、なかなか開かない…』
ダクトの中を進んでいた三人。入口を見つけてダリアが開けようとするが堅いのかなかなか開かない。
「大丈夫?ダリア姉様」
「上を通って代わるか?」
『待って…』
ーーーーばっかん.
『うわっ!!』
「あっ、ダリア姉様ッ」
「ダリア!?」
いきなり開いたことに下へと真っ逆様なダリア。まさかの展開にぎょっと顔を青ざめる。
ーーーードサッ.
『痛ッ…たくない?』
閉じていた目をぱちっと不思議に思って開けたダリアはあっと驚いた。
『セバスチャン!』
「遅くなりまして申し訳ありません」
落ちてきたダリアをセバスチャンが下でしっかりと受け止めたのだ。ダリアを床におろしてセバスチャンは上を見上げる。
「三人共、お怪我はございませんか?」
「シエルが守ってくれたから私もダリア姉様も平気よ!」
「セバスチャン、叔母様達は?」
「皆様ご無事でらっしゃいました」
エリザベスをおろし、最後にシエルをおろしながらセバスチャンは言った。
「安全な場所へご案内させて頂こうとしたのですが、他の乗客を救助されると仰られまして…」
「お母様らしいわ。皆一緒なら大丈夫ね、ありがとうセバスチャン!」
「とんでもございません」
「くしゅっ」
くしゃみをしたシエルにセバスチャンは上着を脱ぐ。
「坊ちゃん上着(こちら)を」
「いい。僕じゃ尻尾(テール)を引きずる」
「ですがお身体を冷やされますとまたお咳が…「今その話はするな!」
小声で言われたセバスチャンはダリアに視線で首を傾げているエリザベスを示され悟った。
「かしこまりました。さあ、救命ボートも準備が始まっております。急いでデッキへ参りまーーーー」
ーーーーギャラララッ.「!?」
聞き覚えのあるその音に振り向いたセバスチャンの視界に、天井をくり抜いて降ってくる二人の死神が。そのうちの一人は数時間前に会ったロナルド。そしてもう一人は、信じられない人物だった。
「ンフッ…」
ゆらりと体を起こすは赤い死神。
「色男、ハッケーーーーン」
「貴方は…」
「『グレル・サトクリフ!』」
「ハァ〜イお久しぶりセバスちゃん。こんな所で再会できたのはきっと運命ね!」
「偶然です」ピシャッと言い放てばグレルは嬉しそうに頬を染めながらくねくねと動く。
「つれなぁいっ∨そんなトコロが相変わらずステキッ」
「あらあら見つけちゃったか…先輩、回収のこと忘れないでくださいよ〜?」
「ロナルドッ、セバスちゃんがいるなら早く言いなさいヨッ。そしたらメイクだってもっと気合い入れてきたのにッ」
「そーなると思ったから言わなかったんスよ…」
「大体アンタね、あっ」
ロナルドに怒っていたグレルだったがその間にすたたーーーーっと走り出していたシエル達に気づく。
「ちょっと待ちな…」
「!」
「さいヨ!!」
「『!?』」
「きゃっ」
左腕にシエルとダリア、右腕にエリザベスを抱いてセバスチャンはグレルが振るってきたデスサイズを避ける。
「人の身体に火を点けといて放置プレイなんて、酷い男!」
「勝手に着火しないで下さい」
二人同時に着地する。
「先を急ぎますので道を開けて頂けますか?」
「嫌って言ったら?」
その問いにセバスチャンは赤い目を細める。
「力ずくでも」
「イイわ…強引なのって嫌いじゃナイ。それじゃあラブロマンスよりアツイ愛(コロ)し合い、しましょ!!」
グレルと会ったことのないエリザベスは戸惑う。
「何あの人!?」
「ただの変態です。近付くと伝染するおそれがありますのでお下がり下さい!」
「失礼しちゃう!アタシは自分の気持ちに素直なだけヨ!」
デスサイズを手に詰め寄ってきたグレルにセバスチャンは蹴りを入れるがそれをグレルは避ける。壁に一度着地したセバスチャンに今度はグレルがデスサイズを振るうが、その場所を見たセバスチャンはハッとした。
「しまっ…」
窓の外には水がたまっていた。
ーーーーズバッ.
「ぎゃッ!?」
「うわッ」
「『きゃっ』」
「坊ちゃん!!お嬢様!!」
流れ込んできた水の勢いに流されてしまったシエル達を助けに行こうとした時だった。
「!!」
ーーーードッ.
「俺もいるって忘れてたっしょ?」
「くッ…」
背後からデスサイズを振るってきたロナルドの攻撃をなんとか防いだセバスチャン。
「がッ……っつ…」
流された勢いで壁に背中から激突したシエル。
「リジー、大丈夫か…」
「うん…」
左腕にかばっていたエリザベスが無事なことにホッとしたのも束の間、ダリアの姿がないことに気づく。慌てて視線をめぐらせてその姿を見つけたシエルは血の気が引いた。
「!!ダリア!!」
ダリアは廊下まで流されており、気を失ったのか倒れてビクともしない。それに近づくは蘇った死者達。
「ッダリア姉様!!」
「うっ!?」
助けに行こうとしたシエルだったがズキッと左足に鋭い痛みが。
「(足が…!!)」
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