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「#年下攻め」のBL小説を読む
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応接室に集まり、お茶を用意して全員が顔を合わせる。



「さて、デザートも食べたし整理しよっか」



ほとんどグレイがデザートは食べてしまう勢いだった。



「まず、ジーメンス郷死亡時刻は今日午前1時10分頃。アリバイがないのはファントムハイヴ伯爵とダリア嬢のみ。で、次が執事…死亡時刻は不明。次にフェルペスで死亡時刻は今日午前2時38分頃…でいいよね?」

「いえ、死体の発見は執事が先ですが、どちらが先に殺されたのかはまだ不明です」

「あ、そっか」

「状態からして二人とも殺害されてから数時間は経過していました。この段階で、朝まで鎖で拘束されていた俺と伯爵とご令嬢は、アリバイが成立します」

「……」



息を吐きながらグレイは椅子に沈み込む。



「僕と姉さんと先生が鎖で繋がれてベッドに入ったのが2時頃。その時すでに、セバスチャンはフェルペス殿を寝室に通したと言っていた」

『そしてフェルペス殿が殺されたのが、2時38分頃よね…』

「じゃあ、執事君の姿を最後に見たのは?」

「おそらく俺達でしょうが…暗い上に時計が遠かったので、正確な時間までは…」

「あっ!」



もっとよく、時間を確認すればよかった…。後の祭り状態であった中、急に庭師が声を上げる。なんだろうかと、全員が庭師を見る。



「僕達、夜中にセバスチャンさんに会ってます!」

「ワッ、ワタシもですだ!」



メイドも一緒に名乗りを上げた。



「何時ぐらいでしたか?」

「えーと、確か2時50分くらいでした」

「ということは、殺害されたのはセバスチャンが最後…ということですね」

『アイツは何しに来たの?』

「オレにゃ、食材の在庫確認。コイツには暖炉の掃除の指示でさぁ」

「ワ、ワタシには伝書…梟?…を」



メイドの言葉に伯爵とご令嬢は不思議そうな顔をする。確かに、梟とは珍しい。



「梟?」

『鳩じゃなく?』

「梟なら鳩と違って嵐でも飛べます。アイツらしい抜かりなさでさぁ」



なるほど…今度、小説の何かで使ってみよう。こんな状況でも小説に結びつけてしまって、我に返り一人気恥ずかしくなった。



「手紙にはなんて?」

「それは見てませんですだ」



問いかけてきたグレイにメイドが答える。



「警察に手紙を飛ばしたのかもしれませんよ」

「この嵐で電話も通じませんからね」



グレイは何か言いたげな表情で黙って話を聞く。どうしたんだろ…?



「しかし、セバスチャンが殺害されたのが最後となると、話が複雑になってきますね」



気を取り直し、今までの話を組み立てる。自分でも、難しい顔をしているだろうとわかる。



「ご令嬢の部屋で密室を作れるのは、中にいるフェルペスさん本人か鍵を持つセバスチャンだけ…となれば、犯人はセバスチャン説が有力です…が、そのセバスチャンは殺された」

「執事君が誰かとグルになって彼らを殺して、その後に殺しの報酬とかでモメて口封じされた…とか?」

「……ありうる話だ。となると彼らを殺して利益がある人間が犯人である可能性が高そうだな」

「だろうねぇ。世の中お金だし」

「……」



顔色を悪くして話を聞いているウッドリー。具合が悪いのか?



『フェルペス殿は総合海運業の大手、ブルー・スター・ライン社の御曹司…気は弱いけど、貿易課を任される程の手腕で、最近はアジア圏にまで業務を拡大していたわ』



ご令嬢はそこまで話して劉を指差した。



『劉、貴方の商売敵よ』

「…ま、そうなるね」



落ち着き払った対応だ。じっと見ていた劉は一拍の間の後紅茶を飲む。そんな劉を伯爵が「それに」と指差す。



「お前はそのズルズルした袖の中に、鍼を持ち歩いていたな?」

「え?」



は…はり!?全員の視線が劉に集中する。



「確かに持ち歩いてるよ。東洋医学に使う医療用だけどね」



なんてことなく劉は袖口から鍼を出したが、「ひっ…」とその場にいた全員が身を引いた。



「お…お前がフェルペスを!!」

「やだなー、それは早計すぎでは?」

「テメエさっきダリア嬢の部屋で家捜ししてたろ!証拠隠滅してたんじゃねーのか!?」

「あはは。あんな奥の衣装部屋に、どんな仕掛けをして密室を作ろうって言うんです?あそこには外に出られるドアはないし、いくら我ら中国人でも、通気口は通れませんよ」



「第一ジーメンス郷殺害の時にはアリバイがありますしね」と言うと、劉は伯爵とご令嬢を見る。



「もー、姉弟揃っていじめっ子だなぁ。こんな時に仕返ししなくてもいいじゃないか」

「僕らの監禁を提案したお前が言うか?」

『その口鍼で縫うわよ?』



ご令嬢が呆れながら言えば「こわーい」、と全くそう思ってなさそうな顔で劉は言う。仲良しなのか、なんなのか。



「まあ、どうせセバスチャンとグルになったところで誰にも3人全員は殺せない。からかっただけだ」

「!確かに」



伯爵の言葉に、気づかされる。確かによくよく考えると不可能なことではないか…さすが、若手敏腕社長か…すぐにそれに気づくなんて。




_92/212
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