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いい事は連続して起こらないくせに悪い事は連続して起こるもんだ





《ーーーー全国的にさわやかな秋晴れになるもようでございますが、女心と秋の空は移ろいやすいものでございますから、もし降ってきても私のせいにしないでくださいませ》
『いい加減だな、おい』


仕事の準備をしながらテレビの結野アナにツッこむ。


「おい架珠、お前そろそろ行かねーと間に合わねェぞ」
『待った。ブラック星座占い見てから』
《それでは結野アナのブラック星座占いでございます。今日、一番ツいてない方は………》


どうしよう私だったら。もう依頼できねェ。ソファで飯食ってる銀ちゃんも結構ビビりながら見ていた。


《乙女座のアナタです。今日は何をやってもうまくいきません》
「『あ〜』」


よかった、違った。全国の乙女座ドンマイ。


《特に乙女座で顎髭をたくわえ今歯を磨いてる方、今日死にます》
『銀ちゃん、乙女座死ぬって』
「知り合いに乙女座いたか?」
『えー…いないんじゃね?』
《幸運を切り開くラッキーカラーは赤。何か赤いもので血にまみれた身体を隠しましょう》


すごい切り開き方だな。切り開ける要素がよく分からないよ。


《それでは楽しい週末を〜》


素敵な笑顔で言ってるけど、送れねェだろ。


『よし。こんなもんだろ』


準備も終わり、私は依頼の待ち合わせ場所へと向かった。用意された黒光りの車に乗って門前でしばらく待ってれば、見慣れた奴と依頼人が出てきた。


「あれ?いつもの田代君は?」
「今日は非番だ。代わりの同じ名前の奴用意した」
『どうもっス。田城ッス。今日は1日よろしくっス』


帽子をとりながら、後部座席に乗り込んだマフィアみたいなオッサンとゴリラに挨拶。


「代わりのって…もっとマトモなのいなかったのかよ。こんなオッサンなのかガキなのか女なのかわかんねー怪しい奴より」


髭付けたりつけまつ毛バッサバサしたり野球帽被ったりと、一応変装をしてきた。


『ゴリラさ〜ん。自分こう見えてしっかりやりますよ。ジェット機に乗ったつもりで、今日は任せて下さいっス』
「なんでジェット機?そこは大船だろ。デカすぎて安心できるのかわかんねーよ。しかも何気にゴリラって言ったよね?」
『あ、ちなみに自分免許ペーパーなんで。今日のために合宿通った新米なんで。そこんとこよろしくッス』
「よろしくッスじゃねェよ!!まったく安心できねーじゃねェかよ!!とっつァん、今からでも別の奴に」
『あ、マリカは常にトップ争いしてるんで強いっス』
「ならいいじゃねェか」
「よかねェだろ!!まったくもってよかねェだろ!!」
「ここ真っ直ぐ行ってくれ」
『イエッサー』
「いやァァァァァ!!占いが当たる瞬間ンンンン!!」


は、占い?ゴリラもしかして乙女座だった?そりゃどんまい。


「え゛っ!?天導衆!?」


は?天丼州?


「天導衆が関わってるヤマに、ウチが関わったっていうんですか?」


ああ、天導衆か。


「しらじらしい。とぼけちゃってさ〜撃っちゃおーかな〜オジさん撃っちゃおーかな〜」
「あ…あいつら…俺のいない間に…」


そういやゴリラいなかったな。え、なに?勝手に出て来ちゃったの?


「…で、とっつァん。俺達にお呼びがかかったってことは…処罰されるのか?」
「俺達が目ざわりなのは間違いねーだろうが、そりゃねーだろ。公にそんな真似すりゃ煉獄関と関わっていたことを自ら語るようなもんだ。むしろ危険なのは今…城に来いとはただの名目で、俺達が二人揃ったところを隠れて「ズドン」なんてこともありえる…」


ーーーーバッ.


「なっ…何やってんだてめェェェ!!」
「いやだァァ!!こんなオッさんと意味わかんねー奴と死ぬのは嫌だーーーー!死ぬならお妙さんの膝元で死ぬぅぅ…!!」


いきなりゴリラは走行中の車から飛び出そうとした。何やってんだ?


「バカヤロー、武士道とは死ぬことと見つけなさいよォ!!いや、二人で力を合わせれば生きて城までたどりつけるかもしれん。そうなりゃ俺達の勝ちだ!!」


なんかRPGみたいだな。


「……とっつァん…とっつァんって何座?」
「あん。乙女座だけど」
『マジッスカ。乙女座、今日死にますよ』
「最悪だァァァ!!純度100%で死にむかってる!!もうダメだァ!!」
「おちつけェェ!!人は皆いずれ死ぬ!大事なのはどう生きるかだァ!!」
「うるせーよ、大体なんでアンタが乙女座なんだよォ!!全然似合ってねーよ、ヤク座じゃん!もしくは…ヤク座じゃん!」
「オメーに言われたくねーんだよ!今ここで星にしてやろーかァ!?燦然と輝くゴリラ座にしてやろーかァ!!」
『!』


やばッ!!

ーーーーキィィィィ.
ーーーードンッ.


「「!!」」


…あちゃー。ちょっと油断してたら事故るって典型的なアウトだね。


「オイオイオイオイ!ちょっとどこ見て走ってんのォ!?勘弁してよ〜」


ぶつかったトラックの運転席から顔を出したのはなんとマダオだった。アイツ仕事見つかったんだ。

ーーーーカチャ.


「え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!」
「てめー殺し屋だろ」


いきなりヤクザのオッサンはマダオに銃口を突きつけた。


「殺し屋だよな?殺し屋と言ってみろ。ぜってー殺し屋だよ」
「な、な、何言ってんのアンタ!?俺は…」


ーーーーパン.パン.

あ、撃った。

ーーーードオン.

トラックが爆発。それを背に帰ってくるオッサン、かっけーな。見ていたゴリラは絶句してるけど。ホントに警察か?オッサン。


「とっつァァん!何やってんのォ!!アレどー見ても一般人だろ」
「バカヤロー、おめーアイツグラサンかけてたろ。殺し屋だ」
『とっつァん、実は自分グラサン見た瞬間に察したんス。だから車ぶつけたんスよ』
「お前、よく分かってるじゃねェか。グラサンかけてる奴はほとんどが殺し屋だ」
「オメーもかけてんだろーが!!」


助手席にオッさんが座り、また車を発進させる。マダオはまあ大丈夫だろ。私は捕まりたくないんで。


「お前らコレ絶対言うなよ。「歌っていいとも」のタモさんいるじゃん。アレも殺し屋だ…言うなよ」
「言えるかァァそんなオッさんのバカな妄想!!」
『自分言わないッス。胸の内にシークレットとして残しておくッス』
「お前もう黙ってろォ!!」
「あの〜すいません」


ん?


「遅れちゃいました。ちょっとそこで眼鏡壊しちゃって。眼鏡が壊れちゃうともうなんにも見えない、明日も見えない」
「誰ェェェアンタ!?」


後部座席のゴリラの隣にさっちゃんがいた。え、何処から乗ったのこの人。するとさっちゃんは隣のゴリラの頭を撫で始めた。


「まっ、運転士さんのペットですか?」
『違うッス。そんな趣味の悪いゴリラ、自分違うッス』
「ゴリラって言ったうえに趣味悪いっつった!?」
「あら〜そうなんですか。何ゴリラ、ゴリラ何?ゴリラ・マークUですか?」
「いちおう人間なんですが…」


おい頬染めてんじゃねーよ。お妙一筋じゃなかったのかよ。あとさっちゃんまた眼鏡無くしたの?


「安心しろ、コイツは味方だ。ホラさっちゃん、お前もコイツ持っとけ」


オッさんはさっちゃんに拳銃を手渡した。


「昔のなじみでな、始末屋さっちゃんだ。今はフリーの殺し屋だが、元お庭番衆のエリートよ」


マジでか。コイツそんなスゴかったの?じゃあ屋根の修理代払ってよ。


「殺し屋には殺し屋ってわけさ」
「松平様」


銃口を見えないからか目を細めながら見ていたさっちゃんが口を開いた。


「なんスかコレ?よく見えない」
「オイ危ない危ない!」
「あっ、仁丹入れ?眠気も防げるし口臭も防げるしいいですよね」
「いや息がなおるどころか止まっちゃうから!」


どんだけ目悪いのさ。なんで仁丹?


「変わってますね〜ココ押したら仁丹が出るんですか?」


ーーーーパン.パン.パン.パン.


「『ぎゃああああ!!』」


コイツ銃乱射し始めたぞ!?


「止めろォォォ仁丹よりいいものあげるから」
「止めてェェさわらないで。私には心に決めた人がいるんだから!」
「近藤、耐えろ。もうすぐ城だ」
「何しに来たのこの人ォォ!!」
『!!』
「あっ、あぶねェェェ!!」


エリザベス!!

ーーーーガッ.

横切ってきたエリザベスをひいたが、エリザベスだし大丈夫だろと走行続行。ごめんエリザベス。


「おいィィィィ!今なんかひいたよ!!今なんか飛んでったよ!!」
『ああ、アレも殺し屋ッスから。ね?とっつァん』
「ああ」
「ウソつくんじゃねェ。明らかに後づけだろ!!」
「人は皆、何かの犠牲の上に生きる殺し屋よ」
「オメーは黙ってろ!!」


ーーーーブロロ.


『ん?』
「!」
「俺のペットを傷つけおって。無事では済まさんぞ」


隣に並んだトラックに捕まっていたのはヅラだった。なんでウチが引いたって分かったの?いたの?するとヅラは後部座席に丸いものを放り入れてきた。え、なに?


「うわァァァァ爆弾だァァァ!!早く外へ投げてェェ!」


また爆弾かよ!


「まァー大きな仁丹。これだけ大きければ口臭に悩むたくさんの人を救えるわ」
「何ィィこの人。仁丹の国から来た仁丹姫ェェ!?」
『いいからさっさと投げろって!』
「いやメガネが…メガネメガネ」
「いいからその前に投げてェェ!!」


とりあえず窓を開けて投げさせる。


「いくわよ、みんな伏せてェェ!!」


その時だった。ちょうど原チャに乗った銀ちゃんが隣に来た。


「ん、アレ?お前」


銀ちゃんもさっちゃんに気づいたようだ。するとさっちゃん、構えたまま何故か動きを止めてしまった。どうした?

ーーーートン.


「「「『あ』」」」


ーーーードゴォン.

爆弾は車内に落下し、見事爆発に巻き込まれた。なんとか生き残りそのまま目的地まで連れて行き、私は話が終わったオッさんから依頼料をもらった。


「なかなかのハンドルさばきだったぜ。また頼む」
『ウッス、とっつァん。大金あざーっす』


できれば二度と関わりたくないオッさんだったけど、金は予定通りたくさんもらえたからいいか。


「今日はすまなかったな…えっと」
『田城ッスゴリさん』
「田城…さん?つーか、ゴリさん違うから。近藤だから…それじゃ、お疲れ様」
『お疲れ様ッス』


ゴリラとも別れて思い出した。乙女座死ぬんじゃなかったっけ?


「お妙さァァん!!奇遇ですねェェ!」


は?お妙?丁度振り向いた時、石に躓いたゴリラが神楽と話していたお妙の頭にチョップしていた。


「アラ、ホント。奇遇ですこと…」


占い、当たったな。ゴリラの悲鳴を背に聞きながら、私は結野アナの占いすげェと思った。



next.

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