刀じゃ斬れないものがある
煉獄関に再び来た私ら。銀ちゃんは鬼道丸のお面を用意し、闘技場へと姿を出す。
「きっ…鬼道丸!?」
どっからか驚愕した声が聞こえてきた。
「…貴様、何故ここにいる?」
たった今まで殺しまくってた新しいエースがこちらを睨む。鬼退治っつったけどさ、マジの鬼やんかおい。
「貴様は確かにわしが殺したはず…」
「てめーか?俺を殺したのは。イライラして眠れなくて起きてきちゃったじゃねーか。どーしてくれんだコノヤロー」
「ここはもう貴様の居場所じゃない。わしの舞台じゃ、消え去れ」
「消えねーさ。まっすぐに生きたバカの魂はな、たとえその身が滅ぼうが消えやしねー」
「ほう。ならばその魂…今ここでかき消してくれる!!」
同時に武器を取り動き出した。銀ちゃんはお面の角、相手は額に傷が。相手が小太刀を取り出したが、小太刀が貫いたのはお面だけ。避けた銀ちゃんはニタッと小憎たらしい笑みを見せて、相手の腕に木刀を振るった。
『おお』
頑丈そうな腕にはひびが入った。すげー。しかし相手も負けておらず、銀ちゃんの横っ腹に金棒を思いっきり殴りつけた。
「ククク」
「!」
銀ちゃんは金棒と自分の間に、木刀を挟み込んで止めていた。
「オイ、デカブツ」
顔を上げた銀ちゃんの眼は、
「こんなもんじゃ、俺の魂は折れねーよ」
本物の、侍の眼だった。
銀ちゃんが相手をぶっ飛ばした直後、観客達から湧き上がった歓声。
『おつかれー』
「おー」
へい、へい、とハイタッチしていると。
「てめーら、なんてことしてくれやがる」
え?
「俺達のショウを台無しにしやがって。ここがどこだかわかってるのか?」
なんか海賊みたいな眼帯した奴がわらわら引き連れて現れてきた。なんか、怒ってるね。
「一体どういうつもりだ。てめーらは何者だ?」
笑い返した時だった。
ーーーーズガガガガガ.
「うぉわっ!!」
「なんだァ!?」
いきなり相手側にいくつもの銃弾が放たれた。ちょ、まさか…。
「なっ、何者だアイツら!?」
観客席には見慣れたアイツらが。
「ひとーつ!人の世の生き血をすすり」
「ふたーつ!!不埒な悪行三昧」
「「みぃーっつ!!」」
お面を放りあげながらカッコつけていたかと思うと、こちらを新八と神楽は指さしてきた。
「…ったく」
『え…みっつ?みっつ…なんだった?』
「知らねーのかよ。えーみーっつ、み…みみ、みだらな人妻を…」
「違うわァァァァ!!」
「げばァ」
いつの間にか下りてきていた新八に銀ちゃんは蹴られた。
『で、結局みっつめは?』
「みーっつミルキーはパパの味アルヨ」
『ああ!』
「ああじゃねェよ!ママの味だァァ!!違う違う!みーっつ醜い浮世の鬼を!!」
あ、そっか。
「たっ…退治てくれよう。万事屋銀ちゃん見参!!」
以前決めポーズってあったらカッコ良くね?と考えたポーズをしてみた。キマッタね。
「…………ふ」
ふ?
「ふざけやがってェ!!」
「やっちまえェ!!」
ふざけてないんだけど。向かってきた奴らに私らも迎え撃つ。
「死んでもしらねーぜ!こんな所までついてきやがって」
「まだ今月の給料ももらってないのに死なせませんよ!!」
「今月だけじゃないネ、先月もアル」
『先月はアンタ仕事なかっただろーが!』
「じゃあ今回はもらえるネ」
え、ちょっ、お金あったか?
「…な、なんだコイツら」
「理解できねーか?」
海賊みたいな奴の首筋に、現れた沖田クンが切っ先を突きつけていた。お前いつの間にいたの?ぶっ飛ばしながら様子をチラ見してたらそのうち多串君が引き連れた真選組が現れた。観客席では幕府の犬に慌てて逃げ出すというパニック状態に。とか眺めてれば何故か私らまで連行され始めた。ふざけんなよゴラ!離せやァァァァ!
*
「結局、一番デカい魚は逃がしちまったよーで」
煉獄関から私らは外へと出ていた。
「悪い奴程よく眠るとは、よく言ったもんで」
「ついでにテメェも眠ってくれや、永遠に。人のこと散々利用してくれやがってよ」
「だから助けに来てあげたじゃないですか。ねェ土方さん」
「しらん。てめーらなんざ助けに来た覚えはねェ。だがもし今回の件で真選組に火の粉がふりかかったら、てめェらのせいだ。全員切腹だから」
「「「『え?』」」」
切腹?
「ムリムリ!!あんなもん相当ノリノリの時じゃないと無理だから!」
「心配いりやせんぜ。俺が介錯してあげまさァ。チャイナ、てめーの時は手元が狂うかもしれねーが」
「コイツ絶対私のこと好きアルヨ。ウゼー」
「総悟、言っとくけどてめーもだぞ」
「マジでか」
ざまァみろ。
「銀さん、僕らも帰りましょうか」
「何やってるネ」
「ん?おお」
『…お面?』
銀ちゃんの手にあったのは鬼道丸のお面。
「こいつァもう必要ねーよな」
空に放った銀ちゃんは、そのお面を木刀で砕いた。
「アンタにゃ似合わねーよ。あの世じゃ笑って暮らせや」
next.
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