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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -


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「あの人も意外に真面目なトコあるんスね。不正が許せないなんて。ああ見えて直参ですから、報酬も期待できるかも…」
『期待っていうか、絞れるだけ絞り取らなくちゃ割に合わないでしょ』
「私、アイツ嫌いヨ。しかも殺し屋絡みの仕事なんて、あまりのらないアル」
「のらねーなら、この仕事おりた方が身のタメだぜ。そーゆー中途半端な心構えだと思わぬケガすんだよ。それに、狭いから…」


確かに。1人用の駕籠に4人も乗るのは辛いよ。狭いよ。


『なんだってアンタらまで来たのさ』
「二人がいくなら僕たちもいきますよ」
「私たち四人で一人ヨ。銀ちゃん左手、架珠眼球、新八左足、私白血球ネ」
「全然完成してねーじゃん。何だよ白血球って、一生身体揃わねーよ」
『つーか進むの遅くない?』


狭い中から私は身じろぎ駕籠の外に顔を出す。


『ちょっと!何ちんたら走ってんの、標的見失ったらどーすんだ!!』
「うるせーな。一人用の駕籠に四人も乗せて早く走れるか!!」
「あん?俺たちは四人で一人なんだよ」


言いながら銀ちゃんも顔を出す。だから狭いっつの。


「俺が体で架珠が眼球、神楽が白血球、新八は眼鏡」
「眼鏡って何だよ!ってゆーか眼鏡かけてんの?どーゆう人なの」
「基本的には銀サンだ。お前らは吸収される形になる」
『そんなん嫌なんだけど!銀ちゃんに吸収されるとか嫌なんだけど』
「そうアル。左半身は神楽にしてヨ!」


え、それはそれで気持ち悪い。


「あっ!止まりましたよ」


あ、鬼道丸が下りてきた。


『よっしゃ後を追うよ!』


ーーーーガン.


「いだだだだ!!踏んでる踏んでる」


慌てて出て来たから銀ちゃんを踏みつけながら出てきた私らだけど、気にしない。


「オイ、ちょっと待て代金!!」
「つけとけ!」
「つけるってどこに!?」
「お前の思い出に!」


つまり今払う気は無いから見逃せ。


「廃寺…こんな所に…」


後を追ってついた先は廃寺。様子を窺っていると、寺の中からギャアアアという声が。


「今、なんか悲鳴みたいなのきこえませんでした?」
「…お前らはここで待ってろ」
「銀さん!!」


行っちゃった。しばらく眺めていたのだが、その背後に近づく一人の男が。


「どろぼォォォ!!」


ーーーーズドン.


『あ』


次の瞬間、銀ちゃんの悲鳴が響き渡った。


「申し訳ない。これはすまぬことを致した」


寺へと招き入れられ、今は男と向かい合って話を聞いている。寺の中には沢山の子供達がおり、悲鳴は子供の泣き声だったようだ。


「あまりにも怪しげなケツだったのでついグッサリと…」
「バカヤロー人間にある穴は全て急所…アレッ?ヤベッ!ケツ真っ二つに割れてんじゃん!」
「銀さん落ち着いて下さい。元からです」
「だがそちらにも落ち度があろう。あんな所で人の家をのぞきこんでいては…」
『悪かったね。ちょっと探し人が…』
「探し人?」
「ええ。和尚さん、この辺りで恐ろしい鬼の面をかぶった男を見ませんでしたか?」
「鬼?これはまた面妖な。では、あなた方はさしずめ、鬼を退治しに来た桃太郎というわけですかな」
「三下の鬼なんざ興味ねーよ。狙いは大将首。立派な宝でももってるなら別だがな」
「宝ですか…しいて言うなら、あの子たちでしょうか」


…………………あれ?鬼の面?


「『うぉわァァァァァァァ!!』」
「てっ…ててててめーどーゆうつもりだ?」


ガタガタと私らは慌てて距離をとる。いつの間に鬼の面つけた!?


「アナタ方こそ、どーゆーつもりですか?闘技場から私をつけてきたでしょう」
「え!?え!?ホントにじゃ、和尚さんが!?」
「私が煉獄関の闘士鬼道丸こと…道信と申します」


…えー。


「オイオイいいのかよ」


縁側に座って遊び回ってるガキ共を眺める。何気に神楽が溶け込んでるし。


「どこの馬の骨ともしれん奴に茶なんか出して…鬼退治に来た桃太郎かもしれねーぜ」
「あなた方もいいのですか?血生臭い鬼と茶なんぞ飲んで」
『こんなたくさんの子供たちに囲まれてる奴が鬼だなんて思えないよ。一体この子たちは?』
「みんな私の子供たちですよ」


え、多過ぎじゃね?


「あらま〜。若い頃随分と遊んだのね〜」
「いえ、そういう事では…みんな捨て子だったのです」
「孤児…アンタ、まさかこいつら養うためにあんなマネを…」
「私がそんな立派な人間に見えますか?この血にまみれた私が…」
『…アンタ一体』
「今も昔も変わらず、私は人斬りの鬼です」


赤ん坊を腕に抱きながら道信は言う。


「昔から腕っぷしだけが取り柄で、気付けば人斬りなんて呼ばれる輩になっていました。やがて獄につながれ、首が飛ぶのを待つだけの身となっていましたが、私の腕に目を付けた連中に買われ、獄から出されました。それが奴らでした…あなた方は、煉獄関を潰すおつもりのようだ。悪いことは言わない。やめておきなさい。幕府をも動かす連中だ。関わらぬのが身のため」
『鬼の餌食になるって?』
「それはそれで面白そうだ…」
「宝に触れぬ限り、鬼は手を出しませんよ。あの子たちを護るためなら、何でもやりますがね」
「ハハハハ」
「?」


笑い出した銀ちゃんに道信は首を傾げた。


「鬼がそんなこと言うかよ…アンタもう立派な人の親だ」


言いながら銀ちゃんは近づいてきた赤ん坊を抱え上げる。


「汚い金で子を育てて立派な親と言えますか…」
『けど今は悔やんでるんでしょう?』


赤ん坊に変顔してる銀ちゃんの顔を見てちょっとヒク。


「…最初に子供を拾ったことだって、慈悲だとかそういう美しい心からではなかった。心にもたげた自分の罪悪感を少しでもぬぐいたかっただけなんだ」
「…そんなもんだけでやっていけるほど、子を育てるってのはヤワじゃねーよ。なァ?クソガキ…」


そうそう。私だったらノイローゼになってそうだよこのガキ共の数。


「先生コレ!どう似合う?」
「返せクソガキ!」


ガキに眼鏡とられた新八ダサいよ。


「先生?先生どうしたの!?」


反応がないことにガキは私らを見てきた。


「オイ、お前ら!先生に何言った!いじめたら許さねーぞ」
『それは悪かったね』
「こいつァ詫びだ。何かあったらウチに来い…サービスするぜ」


立ち上がって歩き出す時、銀ちゃんはかなりの威力でガキの額に名刺を貼り付けた。


『神楽、帰るよ』


その日はもう帰ったのだが、次の日犬の餌を差し出されるとは思ってもみなかった。



next.

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