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夢は拳でつかめ





「青コーナー!人気アイドルからスキャンダルを経て殴り屋に転身!でも私!歌うことは止めません!!%ャう歌姫!ダイナマイトお通ぅぅぅ!!」
「お通ちゃァァァん。いけェェェェェェ!!」


前回のスキャンダルで人気が下降してしまったお通。そんなお通はなぜかプロレスラーになっていた。


「いやいやいけーじゃねーよ。止まった方がいいよ彼女…変な方向にいっちゃってるよ」
『あれから何でこーなるの?』
「お通ちゃんは歌って闘うアイドルに転向したんです!」


寺門通親衛隊の新八にヒマだった私らはついてきたんだけど、タカチンまでそこにいてビックリだよ。


『人間そーゆーこと言いだしたら危ないんだよ』
「そーそ。俺のなじみだったラーメン屋も今度カレーもメニューに出してみる≠チて言った直後つぶれたよ」
「なんちゅー例え話ですか!お通ちゃんは大丈夫です。歌い続けます」


どっからそんな自信が?


「…なーんかあの娘は不幸になりそーな顔してるもんな〜。俺、前から思ってたんだよ。その点神楽、お前は終生ちゃらんぽらんの相が出てるよ。よかったな」


隣を見れば神楽がいない。


「えー、夢とはいかなるものか。持っていても辛いし、無くしても悲しい。しかし、そんな茨の道さえ己の拳で切り開こうとするお前の姿…感動したぞォォ!!」


……は?


「えー私の名はアントニオ神楽…ゆえあってお通の助太刀をするアル。かかって来いコノヤロー!ダーッ!」


なんか見覚えのあるようなチャイナ服のガキがいるけど、気のせいかな。うん、きっとそうだ。違うよ、違う違う。


「…ヤバイよ。俺しらない。なんっにもみてない」
『私だってしらない。私しらないよ』
「僕もしらないよ。アンタらのしつけが悪いからあんなんなるんでしょーが」
「何言ってんの?子供の性格は三歳までに決まるらしーよ」
『じゃー私らカンケーない。何もカンケーない』


神楽をおいて私らはさっさとその場をあとにしようとしたが、その時聞き覚えのある声が。


「何やってんだァァひっこめェェチャイナ娘ェ。目ェつぶせ目ェつぶせ!春菜ァァ!何やってんだァ何のために主婦やめたんだ。刺激が欲しかったんじゃないの!?」


振り向けばばっちりと目があった。…あれ?何やってんの?


「いやー奇遇ですねィ」


居たのは税金ドロボーの所の沖田クン。


「今日はオフでやることもねーし、大好きな格闘技を見に来てたんでさァ。しかし、旦那方も格闘技がお好きだったと…」


好きってゆーか新八についてきただけだし。


「俺ァ、とくに女子の格闘技が好きでしてねィ。女どもがみにくい表情でつかみ合ってるトコなんて爆笑もんでさァ」
「なんちゅーサディスティックな楽しみ方してんの!?」


ホントだよ。


「一生懸命やってる人を笑うなんて最低アル。勝負の邪魔するよーな奴は格闘技を見る資格ないネ」
「明らかに邪魔してた奴が言うんじゃねーよ」


言いながら銀ちゃんは神楽の頭をひっぱたいた。


「それより旦那方、暇ならちょいとつき合いませんか?もっと面白ェ見せ物が見れるトコがあるんですがねィ」
「面白い見せ物?」
『何なのさ』
「まァ、付いてくらァわかりまさァ」


そう言われ、私らはやることもないし暇だしでついて行くことにした。すると、沖田クンは地下繁華街のような場所まできた。


「オイオイどこだよココ?悪の組織のアジトじゃねェのか?」
「アジトじゃねェよ旦那。裏世界の住人たちの社交場でさァ」
『こんなとこに何があるっての?』
「ここでは、表の連中は決して目にすることができねェ、面白ェ見せ物が行われてんでさァ」


建物の中へと入り階段を上っていくと、入口が見えてきた。それと同時に大きな歓声が聞こえてくる。なんだ…?入口に立った私らの目に映ったのは、中央で向かい合う二人の男。


「こいつァ…地下闘技場?」
『だねェ…』
「煉獄関…ここで行われているのは、正真正銘の」


後ろから沖田クンが言う。


「殺し合いでさァ」


沖田クンがそう言ったとき、鬼の面をつけていなかった男の方が血を吹いて倒れた。


「勝者、鬼道丸!!」


その宣言に観客席からワッと声が響いた。


「こんな事が…」
「賭け試合か…」
「こんな時代だ。侍は稼ぎ口を探すのも容易じゃねェ。命知らずの浪人どもが、金ほしさに斬り合いを演じるわけでさァ。真剣での斬り合いなんざ、そう拝めるもんじゃねェ。そこに賭けまで絡むときちゃあ、そりゃみんな飛びつきますぜ」
「趣味のいい見せ物だなオイ」
『ホントだね』
「胸クソ悪いモン見せやがって寝れなくなったらどーするつもりだコノヤロー!」
「明らかに違法じゃないですか。沖田さん、アンタそれでも役人ですか?」
「役人だからこそ手が出せねェ」


神楽に襟元を捕まれたまま沖田クンは言う。


「ここで動く金は莫大だ。残念ながら人間の欲ってのは、権力の大きさに比例するもんでさァ」
「幕府も絡んでるっていうのかよ」
「ヘタに動けば、ウチも潰されかねないんでね。これだから組織ってのは面倒でいけねェ、自由なアンタらがうらやましーや」


言いながら見てくる沖田クン。こっちを見るな。頼むから。


「…………言っとくがな。俺ァ、てめーらのために働くなんざ御免だぜ」
「おかしーな。アンタらは俺と同種だと思ってやしたぜ。こういうモンは虫酸が走るほど嫌いなタチだと…」


そんな事を理解されるほどの付き合いになった覚えはないのだが。


「アレを見て下せェ」


言われてど真ん中に佇む鬼の面した男を見る。


「煉獄関最強の闘士、鬼道丸…今まで何人もの挑戦者をあの金棒で潰してきた無敵の帝王でさァ」


あれ、なんか勝手に説明し出したぞ。


「まずは奴をさぐりァ、何か出てくるかもしれませんぜ」
「オイ」
「心配いりませんよ。こいつァ俺の個人的な頼みで、真選組は関わっちゃいねー。ここの所在は俺しか知らねーんでさァ」


乗り気じゃない私らに、沖田クンは口に人差し指を立てて悪戯っぽく笑ってみせた。


「だからどーかこのことは、近藤さんや土方さんには内密に…」


…なんか、やる方向に?




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