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「いや、あの、ホント…スンマセンでした」


謝罪する銀ちゃんの顔面左側は見るも無惨に腫れている。ざまーみろ。


「聞いてもいい?なんでお前は無傷なワケ?」
『これが格の違いだパー』
「お前それどっちの意味で言ってる?髪か!?頭か!?どっちだオイ」
『そこで気づかない時点でやっぱパーだよ』
「頭かァ!!」


―――ドスッ

くぁっと銀ちゃんが拳を作った直後、私と銀ちゃんの間を鉈が通り過ぎて背後の壁に刺さった。


「『……………』」


投げたのは勿論姉。


「コッチを無視するな。その人は誠心誠意をもって謝ったもの」


いやだってあんなフルボッコされてる姿見せられたら土下座だろうが何だろうがするよ。プライドとかより命が大切だよ。マジ、怖かった…。

姉の話によると、二人の家でもあるこの道場は鎖国が解禁になって廃刀令のあおりで門下生が全て去り、バイトでなんとか切り盛りしてるとか。


「今まで二人で必死に頑張ってきたのに…お前らのせいで全部パーじゃボケェェ!!」
「落ち着けェェ姉上!!」


今にも手に持っている薙刀で斬りかかってきそうな姉をメガネこと新八が必死に止めている。ヤバイこのままじゃ殺される!


『お願い待って助けて死にたくない!!』
「待て待て待ておちつけェェ!!切腹はできねーが俺だって尻ぐらいもつってホラ」


慌てて銀ちゃんは名刺を姉に突き出した。


「…なにコレ?名刺…万事屋、坂田銀時?」
『これが私のね』
「…万事屋、田川架珠」


とりあえず落ち着いたようで気を取り直す。


「こんな時代に仕事なんて選んでる場合じゃねぇだろ」
『私ら、頼まれればなんでもやる商売をしててね』
「この俺万事屋銀さんと架珠ちゃんが、なんか困った事あったら何でも解決してやっ…」
「だーからお前らに困らされてんだろーが!!」
「仕事紹介しろ仕事!!」


暴力の嵐とかやめてほしいマジ勘弁!

――――ドカァ!!


「「「『!!』」」」
「くらァァァァ!今日という今日はキッチリ金返してもらうで〜!!ワシもう我慢でけへんもん!!イライラしてんねんもん!」


突然扉を蹴破って入って来た借金取りの先頭にいたちっちゃいのは、一言で表すならキノコみたいな奴だった。


「オーイ借金か」
『私らツケはエベレストのごとくあっけど借金はしてないよ』
「僕達がつくったんじゃない…父上が…」
「新ちゃん!!」


姉の声に新八は口を閉ざしたがもう遅い。父親がつくったんだ。ご苦労様だねェ。


「ちょっと架珠ちゃ〜ん、まだ怒ってる?わーるかったって。いいかげん機嫌なおせって。ほら、チロリンチョコやるから」
『おい本当にこんなので機嫌直ると思ってんのか』
「チッ…仕方ねェ、ならば特別に二つやる」
『いらんわ!!』


――――バキッ

違うよ私が殴ったんじゃないよ。

凄い音がして見れば、キノコが鼻血を出して倒れていた。姉が別のキノコの部下に取り押さえられているのを見るとキノコを殴ったようだ。


「この女!!何さらしてんじゃあ!!」


――――ダンッ!!


「くっ」
「姉上ェェ!!」


キノコ共が姉を床へと押さえつける。


「このォボケェ…女やと思って手ェ出さんとでも思っとんかァァ!!」


――――ゾクッ


「そのへんにしとけよ。ゴリラに育てられたとはいえ女だぞ」
『どんなにブサイクだろーと暴力女だろーと女には優しくしろって母ちゃんに習わなかったの』


私は愛用の鉄扇をキノコの首筋にあて、銀ちゃんはキノコの作った拳を握り止めていた。そのうち銀ちゃんは手に力を入れたのか、メキメキと骨の軋む音が。

新八達姉弟を見ると呆然としていた。


「なっ…なんやワレェェ!!この道場にまだ門下生なんぞおったんかィ!!」


こんなボロ道場の門下生なワケないじゃん。


「しゃーない。姉さんあんたに働いてもらうさかい…コレ、ワシなァこないだから新しい商売始めてん。ノーパソしゃぶしゃぶ天国ゆーねん」
「ノッ…ノーパソしゃぶしゃぶだとォ!!」


うるせ。


「簡単にゆーたら空飛ぶ遊郭や。今の江戸じゃ遊郭なんぞ禁止されとるやろ。だが空の上なら役人の目はとどかん。やりたい放題や。色んな星のべっぴんさん集めとったんやけど、あんたやったら大歓迎やで」


つまり道場売るか体売るかって事か。行くのかどうか思っていると、姉は行くと言い出した。新八が何故と引き止めようとすれば姉は、もう取り戻せないものというのは、持ってるのも捨てるのも苦しい、と。


「どうせどっちも苦しいなら、私はそれを護るために苦しみたいの」


姉を連れて立ち去ろうとしたキノコが目の前に来る。


『…え、なに?』


ジロジロと品定めするかのようにみてきたキノコは怖いわ。なんスか。


「姉ちゃんようよう見たら整った顔してるやないかい。スタイルはちィと背が小さいが文句無し。あんさんも門下生なら、ここの為に働かんとな」


だーから門下生じゃないっつの!


「オイオイおたくら視力悪すぎだろ。え、まじ?もしかして種族が違えば価値観も違っぶべらァ!!!」


まだ何か言ってたけどそんなのに構わず蹴り飛ばす。


『オイキノコ行くぞ』
「は、ハイ…」







「…よかったんですか?門下生なんかじゃないのにこんな」
『全然よくないよ。一時の怒りに身を任せて何してんだろ私帰りたい』


車で移動中、隣に座る姉に訊ねられ答えながら両手で顔を覆って泣きたいのを堪える。あああああ数分前の私を殴りたい。


『…まあ、アンタが心配でってのもあったけどさ』
「え?」
『大切なものを護ってるアンタ見てると、ちょーっとほっとけなかった』


姉の方を見ると驚いたような顔をしていた。


「…私、アンタ≠ネんて呼ばれたくないわ。志村妙って言います」
『…お妙ね…ま、安心しててよ。アイツは絶対に助けに来るから』


これでも一応信じてんだよ。

それから船に乗せられ、私は遊女程煌びやかな着物ではないが綺麗な着物を着せられた。お妙とはその後別の部屋に案内されたんだけど…。


「ウホッ」
『…………』


なんで私の指導係はゴリラなんだよ!!何言ってるかサッパリなんだけど!?どこが美人と認められたかさえわかんないし!!


「…ウホホウッホ」
『誰がブスじゃテメェ!!ゴリラのお前に言われたくないわァァァァ』


――――ゴスッ!!


『…あ』


アッパーをゴリラにくりだすとゴリラはノックダウンしてしまった。


『まっ、いっか。丁度いい。お妙を捜すか』


の前に着替えようと思ったのだが着ていた服が見あたらなかった。


『クッソあのキノコどこにやりやがっ…』


ーーーーゴゴゴゴゴ.


『…なんの音?』


――――ドゴンッ!!


『うぉっ!!何!?』


隣の部屋からだ!!




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