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ああ、やっぱり我が家が一番だわ




「あ〜?下着泥棒だァ!!」


またまたお妙に呼ばれていけば、今度はストーカーではなく下着泥棒に悩まされているんだと。


「そーなんスよ。僕が旅行中に二回もやられたらしくて。なんとかならないスかね?」
『なんとかって言われても…』
「昔の人はよォ、着物の下はノーパソだったらしいぜお姫様も。お姫様なのに着物の下は、もう暴れん坊将軍だよお前。そのギャップがいいんだよ。おしとやかな顔して暴れん坊将軍かい!みたいな…」


次の瞬間銀ちゃんはガッとお妙に髪を鷲掴みにされた。


「てめーのノーパソ談義はどーでもいいんだよ。こちとらお気に入りの勝負パンツ盗られてんだぞコラ」
「勝負パンツってお姉サン、誰かと決闘でもするのかィ?」
『大体、お妙はその勝負パンツが戻ってくれば気がすむわけ?』
「パンツを取り戻したうえでパンツを盗んだ奴を血祭りにしたい」
「もう発言がパンツをはく文明人の発言じゃねーよ。裸で槍をもって野を駆ける人の発言だよ」


隣で私は頷く。


「下着ドロなんて女の敵アル。姉御、私も一肌脱ぎますぜ!」
「よし、よく言った。ついて来い。杯を交わすぞ」
「待て待て待て!死人が出るよ!君ら二人はヤバいって!!」


神楽とお妙は二人で去っていってしまった。


「まずいよ、最凶コンビがユニット組んじゃったよ」
「ほっとけよ、ホシの目星はもうついてるだろ?」
『そーそー』
「え?一体誰…!!」


テーブルの下にはゴリラが。


「なんだァァァァ!!まさか俺を疑っているのか貴様らァァ!!侍が下着泥棒なんて卑劣なマネするわけないだろーがァ!!」


下から叫ぶゴリラに私らはかがみこむ。


「侍がストーカーなんてするわけねーだろーが」
「ストーカーはしても下着ドロなんぞするか!訴えるぞ貴様!!」
「訴えられるのはテメーだァ!!」
『ってことはこれで真選組解体だよ銀ちゃん!』
「いやめでてーな〜」
「待て待て待てコレを見ろコレを!」


慌ててゴリラが出してきたのは新聞だった。


「…なんスかコレ?またも出没怪盗ふんどし仮面」


なんだそのネーミング。


「最近巷を騒がしてるコソ泥だ。その名の通り風体も異様な奴でな。まっかな褌を頭にかぶり、ブリーフ一丁で闇を駆け、キレーな娘の下着ばかりをかっさらい、それをモテない男達にバラまくという妙な奴さ」
「なんですか、ソレ。鼠小僧の変態バージョン?」
『新八もらったの?』
「いえ、もらってもせん」
『よかったねェ。銀ちゃんは…』
「そーか、このパンツにはそーゆう意味が!俺ァてっきりサンタさんのプレゼントかと…」
「『アンタもらってんのかィィ!!』」


堪える気のない笑い声をあげて爆笑する。やっぱりもらってた!しかも新八すらもらってないのに!ヤバイお腹痛い。


「フハハハハ!そりゃあお前、モテない男と見なされた証拠だよ哀れだな〜」
「てか見えてるぞ。懐からモテない男の勲章が、こぼれ出てるぞ」
『く、くくっ……あー……んで、お妙の下着かっぱらったのもコイツの仕業だと…』
「ああ。今や、江戸中の娘達が被害にあってる。しかし民衆、特にモテない男になまじ人気があるため、同心連中もなかなか捕まえるのに苦労してるようだ」


は?江戸中の娘達…?


「ケッ、ただの変態のくせにいっぱしの義賊気どりか」
『気にくわないね銀ちゃん…』
「ああ…気にくわねー、気にくわねーぜ」


メキメキと引っ張られていたパンツが引きちぎられた。


「なんで俺がモテねーのしってんだァァァァァ!!」
『なんで私のパンツは盗まれてねーんだァァァァァ!!』
「「ああああああパンツぅぅぅ!!」」


これは黙っちゃいらんない!!!


「いいかー。相手はパンツの量より娘の質を求めてる真性の変態だ」
『今回エサとして私のパンツをこれ見よがしにぶら下げた』
「質のランクは下がったが、場所が場所だ。きっと間違えて奪いに来るだろう。そこを叩く」
『おい、ランクが下がったがってどーゆー意味だコラぁ』


早速、新八とお妙の家で作戦会議をしている私ら。盗まれるのは嫌だが、なんだかそれは負けな気がするので私は自らエサになった。これでこなかったらもうボイコットしてやる。


「フンドシ仮面だかパンティー仮面だかしらねーが、乙女の純情と漢の誇りをふみにじったその所業許し難し。白ブリーフを鮮血に染めあげてやるぞ!」
「「「『オオォォ!!』」」」


で、夜。


「…ちょっと」


草陰に身を潜めて、フンドシ仮面を待っていた私らだったが…。


「全然、泥棒来る様子ないんですけど。コレひょっとして今日来ないんじゃないんですか?」
『大丈夫だよ、来るって』
「いや、だから何を根拠に今日来るって言ってるんですか?」
「あんなこれ見よがしにパンツがぶらさかってるアル。下着泥棒がほっとくわけないヨ」
「いや、あからさますぎるよ!なんか罠まる出しだし」
「じゃーアレアル。架珠のパンツじゃ質が足りなかったアル」
『は?んなわけないし。質がありすぎて手が出せないんだよ』
「やっぱり私のパンツを出した方がよかったアルヨ」
『お前みたいなガキのパンツなんか、誰もとらねーよ』
「低身長は黙っとくネ!」
『なんだとこのアルちゅー娘!』
「オイ、デケー声出すんじゃねーよ。泥棒にバレたら全部パーだぞ」
「パーなのはオメーらだよ、このクソ暑いのによ」
「なんだとこの野郎コンタクトにしてやろーか!」


暑さの中黙ってじっと待ち続けていた私らのピークが達して、喧嘩勃発。それを見たゴリラがなんか冷たいものを買ってくると言って足を踏み出せば、次の瞬間爆発した。


「……アラ、近藤さんが爆発したわ」
「あー暑かったからアルヨ」
「んなわけねーだろ。自分でしかけた地雷ふんだんだよ。バカだね〜」
『そーいやゴリラの奴、山のように地雷うめてたね』
「アレ?ちょっと待って。ひょっとして地雷どこにしかけたかみんな覚えてないの?」


顔を見合わせた私らは終始無言。


「大変だわ。明日新聞配達のオジさんが爆発するわ」
「言ってる場合ですかァァ!!僕ら、こっから身動きとれなくなっちゃったんですよ!もう泥棒とか言ってる場合じゃねーよ!!」
「アハハハハハ!」


!なんだこの不愉快な高笑い。


「滑稽だ!滑稽だよ、お前ら!!」
「あ…あいつは!?」


一斉に屋根の上へと視線を向ける。


「パンツのゴムに導かれ、今宵も駆けよう漢・浪漫道!怪盗、フンドシ仮面見参!!」


げ。


「最悪だァァァ!!最悪のタイミングで出てきやがったァァ!!」
『ほら見ろ!!私もキレーってことだよ神楽!』
「ちぇっ」
「いってる場合かァァ!!」
「アッハッハッ。なんだか、俺のために色々用意してくれていたよーだが、無駄に終わったよーだな!こんな子供だましに俺がひっかかるとでも?天下の義賊、フンドシ仮面も見くびられたものよ。そこで指をくわえて見ているがいい。己のパンツが変態の手にわたるその瞬間を!!」


確かに盗まれないのは悔しいが、いざ盗まれそうになればそれはそれで嫌だ。


「アッハッハッハッハッハッ」


屋根から飛び降り床へと着地した瞬間、フンドシ仮面もゴリラ同様爆発した。


「床の下にも地雷をセットしてたんですね」
「そーみたいだな」


これで一安心かと思いきや、フンドシ仮面はガッとパンツをつかんだ。


「フフフフ甘いよ。こんなものじゃ俺は倒れない。全国の変態達が俺の帰りを待ってるんだ。こんな所で負けるワケにはいかない。最後に笑うのは俺よ!!」


去ろうとしたフンドシ仮面に、ここまでかと私らが落胆しかけた時だった。


「待てェイ」


最初に爆発したゴリラが足をつかんでいた。


「汚ねェ手で、お妙さんのパンツをさわった報いをうけてもらおうかァ!!俺だってさわったことねーんだぞチクショー!!」


一生さわらないと思うよ。


「銀時ィィ何やってんだ早くしろォ!!今回はお前にゆずってやる」
「うるせーな、言われなくてもいってやるさ。しっかりつかんどけよ」


隣で木刀を抜いた銀ちゃんはフンドシ仮面へと走り出した。


「そのパンツは俺のだァァァ」
『ちげーよ私のだよ!!』


聞き捨てならず叫んだ次の瞬間、銀ちゃん爆発。ゴリラも唖然としていた。こちらも唖然だ。いや今の決めるところだろ…。


「フ…フハハハハ。やっぱり最後に笑うのは俺…」


私とお妙はフンドシ仮面の言葉なんざ聞かず走り出し、銀ちゃんの頭を踏み台にして高く飛躍した。


「!!」
「『女をなめるんじゃねェェェェ!!』」


次にはフンドシ仮面の悲鳴が響いた。


「素顔もさらせない人に私のパンツはやれないわ」
『もちろん、私のパンツも』


フンドシ仮面の手から取り返したパンツを手に取る。


「ほしけりゃすっ裸で正面から挑んできなさい」
『心までノーパンになってな』


私とお妙は笑いあうとハイタッチした。


「アッハッハッハッ姉上ェェェ!!」
「やっぱり架珠と姉御が一番アル!」


走り寄ってきた新八と神楽だったが私らの目の前で地雷を踏んで、最後に私らも爆発をする結末に終わった。


next.

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