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脇だけ洗っときゃいいんだよ、脇だけ




「『あっ』」


暑い夏の昼下がり。アイスを買いに外へと出ていた私は道で沖田クンにあった。


『よォ、チンピラ警察』
「どうも、ニートの万事屋さん」
『ニートじゃねェよ。ちゃんと仕事してんだから』
「まっとうな人間はこんな時間にふらふらしてませんぜ」
『そーゆーおたくもふらふら歩いてんじゃん、このサボリ魔。税金返せ』
「それはまっとうな人間になってから言ってくだせェ。それに、俺は今れっきとした仕事中でさァ」
『ヘェ〜どんな?』


どーせしてねーだろと思って聞いてみるとなんと本当に仕事中だった。なんか城から家出した、将軍の妹、そよ姫を捜索中なんだと。ご苦労なこった。


『てかソレ…暑くないの?』


真選組である彼の制服はカッチリとしていて見てて暑苦しい。なのに汗の一つもかいてないコイツは何者?


「仕方ないでしょう、コレが制服なんで。でも、他の隊士たちはそうじゃないようでね。だから今、こういうのを売り込み中なんでさァ」


そういって見せたのは袖無しの隊服。確かに涼しげではあるけども…。


『売れてんの?』
「大反響でさァ…あ」
『ん?…あ』


私らの視界に入ったのは自販機の前にいる多串くん。


「あーあつい。なんで真選組の制服ってこんなカッチリしてんだ?世の中の連中はどんどん薄着になってきてるってのに」


ぶつくさ言ってる多串君の背後に近づく私ら。


「おまけにこのクソ暑いのに人捜したァよ。もうどーにでもしてくれって」
「そんなに暑いなら夏服つくってあげますぜ、土方さん」
「!」


ーーーードゴオオ.


「うおおおおおおお!!」


おもっくそ多串君に向かって刀を振り下ろした沖田君だったけど、間一髪で多串君はそれを避けた。チッ。


「あぶねーな、動かないでくだせェケガしやすぜ」
「あぶねーのはテメーそのものだろーが、何しやがんだテメー!!」
「なんですかィ、制服ノースリーブにしてやろーと思ったのに…」
『部下のご好意貰っとけばよかったのに』
「ウソつけェェ!!明らかに腕ごともってく気だったじゃねーか!!ご好意じゃなくて殺意だったろ!!つーかなんでお前がいんだよォォォ!!」
『怒涛のツッコミがうるせェ。そこで沖田クンに会ったら、面白いものを売ってたからさ』
「実は今俺が提案した夏服を売り込み中でしてね。土方さんもどーですか、ロッカーになれやすぜ」
「誰が着るかァ!明らかに悪ふざけが生み出した産物じゃねーか!!」
「おーう。どーだ調査の方は?」
「………」


やってきたゴリラはロッカーになっていた。


「お、万事屋のところの…何やってんだこんな所で」
『散歩。アンタらは姫捜しでしょ?』
「おー、よく知ってるなァ。潜伏したテロリスト捜すならお手のモンだが、捜し人がアレじゃあ勝手がわからん」
「お姫さんが何を思って家出なんざしたんだが…」
『へェ、そよ姫ってこれかァ』
「あ!てめっ…」


多串君が出した写真を横から奪い取る。とてもお城を抜け出しそうには見えない大人しそうな女の子が写っている。


「はぁ、人間立場が変わりゃ悩みも変わるってもんだ。俺にゃ姫さんの悩みなんて想像もつかんよ」
「立場が変わったって年頃の娘に変わりはない。最近お父さんの視線がいやらしいとかお父さんが臭いとか色々あるのさ」
「お父さんばっかじゃねーか」
『大体さァ、江戸の街全てを正攻法で捜すってのが無理な話でしょ』
「お嬢の言うとおりですぜィ。ここは一つパーティでもひらいて姫さんをおびき出しましょう!」
「そんな日本昔話みてーな罠にひっかかるのはお前だけだ」
「大丈夫でさァ土方さん。パーティはパーティでもバーベキューです」
「何が大丈夫なんだ?お前が大丈夫か?」
「局長ォォ!!」


後方から今度はジミーがやってきた。


「!!どーした山崎!?」
「目撃情報が。どうやら姫様はかぶき町に向かったようです」
「………」


やっぱりジミーもロッカーに。ホントに大反響だね。


「かぶき町!?」
「よりによってタチの悪い…」


タチ悪くてスイマセンね。その時脇をボロボロになった神楽の友達か下僕かよくわからん、確かよっちゃんとその子分が通った。


『よ、クソガキ共』
「「ゲッ!クソバ…」」
『え、何?ごめんもう一回』
「「美人で優しいお姉さん、こんにちは」」
『よ!』


全部言わせる前に拳骨をお見舞してやった。


『つかアンタら、なんでそんなにボロボロなの』


頭のたんこぶ以外にも、コイツらはなぜかあざまみれ。


「神楽にやられたんだよ」
『あらま』


さすが神楽というか何というか。


「一緒にいた女も止めてくれればよかったのに」
「なぁ。品の良さそうな顔して冷たいな」


品の良さそうな?じゃあお妙じゃないし…まさか。


『ちょっと、もしかしてその一緒にいた女ってこれ?』


私はさっきの写真を見せた。


「あ、コイツだよ」


え、マジでか。


「オイこの姫さんどこにいるか知ってるか!?」
「ひィィィ団子屋にいましたァ!!」
「あっちの方ですゥゥ!!」


多串君の剣幕にクソガキ共はビビりながら答えた。そしてそのまま慌てて去っていってしまった。


『あーあ恐がらせた』
「殴ってた奴に言われたかねーよ!」
『さて、場所もわかったことだし行くよ』
「お前が指示をだすなァ!!」


ガキ共が言ってた団子屋までいくと、神楽と写真写っていたそよ姫が一緒にいた。そこに多串君は近づいた。


「私がいなくなったら、色んな人に迷惑がかかるもの…」
「その通りですよ。さァ帰りましょう」


抵抗するかと思ったが、意外にもそよ姫はあっさりと黙って立ち上がった。しかし、その腕を神楽が掴んだ。


「何してんだテメー」
『神楽…?』


口元にニタッと笑みをつくると、次の瞬間神楽はくわえていた串を多串君へととばした。多串君がそれをはらった時には、神楽はそよ姫をつれて走り出していた。


「オイッ待てっ!!確保!!」


多串君が指示を出すと、神楽達の前方にロッカー姿の隊士達がわんさか出てきた。


「ぬァァアア!!どくアルぅぅ!!」


傘で隊士達を押し退けるとパトカーに飛び乗り屋根へと飛び上がった。


「姫をかかえて屋根へと飛びあがりやがったぞ!!」
「何者だアイツぅ!!」


夜兎です。


「…ありゃアンタのとこのチャイナ娘じゃないのか?」
『ウン』
「何故姫と」
『さァ?』


ーーーーガシャ.

ん?ガシャ?音の方を見た私はギョッとした。それはゴリラも同じなようで…。


「ちょっとォ!総悟君!何やってんの物騒なモン出して!」


沖田君が出したのはバズーカだった。どっから出したの?


「あの娘には花見の時の借りがあるもんで」
『アンタ神楽を殺すつもり!?』
「姫に当たったらどーするつもりだァ!!」
「そんなヘマはしねーや。俺は昔スナイパーというアダ名で呼ばれていたらいいのにな〜」
「オイぃぃぃぃぃ!!ただの願望じゃねーか!!」
「夢を掴んだ奴より夢を追ってる奴の方が時に力を発揮するもんでさァ」


んなアホな。


「チャイナ娘出てこい!!お前がどうやってそよ様と知り合ったかしらんが、そのお方はこの国の大切な人だ。これ以上俺達の邪魔をするならお前もしょっぴくぞ。聞いてるか!」


神楽達が隠れている所へ叫ぶ多串君。



『たく…』


さすがに犯罪者は出したくないな。





「私もっと遊びたいヨ!そよちゃんともっと仲良くなりたい!」
『だったらまた会えばいいでしょ』


よいしょっと壁を登りきった私は神楽へと近づく。


「架珠…」
『ったく、あちこち迷惑かけてアンタは…ガキのヤンチャは結局保護者が尻拭いするっつーのに……それで、そっちはどーしたいの?このまま別れてもいーわけ?』
「…女王さん、私はズルいんです。だから、最後にもういっこだけズルさせてください。一日なんて言ったけど、ずっと友達でいてね」


その後、そよ姫を連れてきた私は、ゴリラに協力料を申したがその場で多串君と喧嘩が勃発しただけだった。途中沖田クンがどさくさ紛れにバズーカぶっ放して多串君の息の根を止めようとしてたけど。

それから数日後のワイドショー。


《君はどーして酢昆布食べてるの?》
《え?だってェ、お姫様がおいしいって食べてたから!》


テレビ画面には酢昆布くわえたそよ姫が映ってた。


「へぇー。酢昆布好きのお姫様ですって」
「バカおめっ、ウソに決まってんだろあんなの。ありゃ庶民派のイメージ出して親近感もたれよーとしてんだって。身近に酢昆布娘がいんだろ」


ソファに隣で寝ている神楽を見る。


「寝顔からビンボ臭さが流れでてるだろ、これが本物って奴だよ」


一緒に抱いていた傘の柄には、そよ姫とのプリクラが貼ってあった。


next.

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