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男にはカエルに触れて一人前みたいな訳のわからないルールがある




春雨との戦いから数日後、久々の仕事が入った私らは、ピザ屋でバイト中。でも神楽がすぐ食ったり壊したりするから、これはきっとギャラに期待しない方がいいという惨事に。


「オイ架珠、宅配行ってこい」


そう言って銀ちゃんはピザ箱と住所の書かれた紙を渡してきた。


『あいよ』



それを受け取った私は自転車に乗り向かった。その際また神楽にピザを奪われそうになったがなんとかピザを死守した私、すごくね?


『うっわ…なにこれ。めっちゃデカい家』


幕府関係者かなんか?門から中をみた私はゲッと顔を歪めた。だって中には真選組の奴らがいたから。


『…さっさと行って帰るか』


えーっと、受取人は…。


「なんだよ母ちゃん、今日は日曜だぜィ。ったくおっちょこちょいなんだから〜」
「今日は火曜だ!!」
『母ちゃんってとこは否定しないのか』
「「!!」」
『ちわーっス。ピザお届けに来ましたァ』


多串君の背後から声をかけると、バズーカの少年と多串君はビックリした顔でこちらを見た。


「てめーはあの時の!!なんでこんな所にてめーがいんだ!」
『いや、ピザお届けに来たって言ったじゃん』
「この家の奴なら中だぞ」


さっさと行けというふうにシッシッと手をふる多串君。腹立つな、私だって好きで来たんじゃないし。


『頼んだのは沖田総悟って奴だけど?』


表札はどうみても沖田ではなかった。


「あ、やっと来たか。ありがとーごぜーやす」
『いえいえ。千百円です』
「領収書。土方で」
「てめーか総悟!!しかも勝手に俺を名義にしてんじゃねェ!仕事中に何考えてんだ、仕事なめんなよコラ!!」
「俺がいつ仕事なめたってんです?」


多串君の言葉に真面目な顔をしたバズーカ少年。


「俺がなめてんのは土方さんだけでさァ」
「よーし!!勝負だ剣を抜けェェェェ!!」


うん…なかなかいいなこの少年。ん?

ーーーーガン!ガン!


「「い゛っ」」
「仕事中に何遊んでんだァァァァァ!!お前らは何か!?修学旅行気分か!?枕投げかコノヤロー!!」


やって来たゴリラに拳骨くらった二人。

ーーーーガン.


「い゛っ」
「お前が一番うるさいわァァァ!!ただでさえ気が立っているというのに」
「あ、スンマセン」


ゲッ。あいつはラクダと一緒にいたカエル!そのカエルにゴリラは拳骨をくらった。


「まったく、役立たずの猿めが!」


幸い向こうは私に気づかなかった様子で、カエルはそのまま去っていった。


「なんだィありゃ。こっちは命がけで身辺警護してやってるってのに」
「お前は寝てただろ」
『てゆーかカエルに猿呼ばわりされるなんてねェ』


ぷっと笑いながら言えば多串君にギロッと睨まれた。


「てめーはさっさとバイトに戻れや!!」
「とゆーより、アンタはなんでここに?」
『ピザ届けに来たんだよ。そういうあんたらこそなにしてんのさ』
「一般人のテメーなんかに言えるか」
『その一般人を突然襲ってケガまでさせたお詫びだと思え』


ニヤッと笑いながら言えば青筋浮かせて睨んでくる。


「まあ、トシが迷惑かけたのも事実だしな」
「もとわと言えばアンタが原因だろ!」


なんでもあのカエル、幕府の高官で真選組はカエルを攘夷から守らなくてはならないんだと。


「幕府の高官だかなんだか知りやせんが、なんであんなガマ護らにゃイカンのですか?」
「総悟、俺達は幕府に拾われた身だぞ。幕府がなければ今の俺達はない。恩に報い忠義を尽くすは武士の本懐。真選組の剣は、幕府を護るためにある」
『でも、海賊とつるんでたかもしれない奴だよ。そんな奴までアンタらは護ってんのな』
「お嬢の言うとおりでィ。どうものれねーや。ねェ土方さん?」
「俺はいつもノリノリだよ」


てかお嬢ってなに?私ヤのつく人じゃないんだけど。


「アレを見なせェ。みんなやる気なくしちまって。山崎なんてミントンやってますぜミントン」
「山崎ィィィ。てめっ何やってんだコノヤロォォ!!」
「ギャアアアアア」


まるで部活のように真面目にラケットを素振りしていたジミな奴。多串君はそのジミーのもとへと走っていった。


「総悟よォ、あんまりゴチャゴチャ考えるのは止めとけ。目の前で命狙われてる奴がいたら、いい奴だろーが悪い奴だろーが、手ェ差し伸べる。それが人間のあるべき姿ってもんだろ」


ええ…ストーカーのくせにそゆこと言えちゃう?


「あ゛っ!!ちょっと!勝手に出歩かんでください!!」


ちょっとォォ!!と叫びながら廊下を歩いていたカエルのもとへと走っていった。


「はあ〜。底無しのお人好しだあの人ァ」
『あれは人の悪いところ見ようとしないタイプだな』
「お嬢、わかってやすねィ」
『つかさっきから気になってたんだけど、そのお嬢ってなに?』
「旦那とくれば姐さん。しかし、お嬢はちっとばかし姐さんというには童顔でさァ。お嬢がピッタシですぜ?」
『童顔で悪かったな』


言われるほど童顔でもないっつの。

ーーーードオオオオン.


「!!?」


何々!?


「局長ォォォ!!」


ゴリラ?え、ゴリラがどーした?銃声が聞こえて何事かと思っていると、ゴリラが撃たれていた。どうやらカエルを庇ったようだ。


「山崎!!」


多串君が名前を呼ぶとジミーは犯人を追った。名前も地味だな。


「近藤さん!!しっかり」
「局長ォォ!!」


ゴリラの周りに隊士共が集まってきた。私もカエルに見つからないように近づいた。


「フン、猿でも盾代わりにはなったようだな」


次の瞬間、沖田クンはカエルに向かって斬りかかろうと刀に手をかけたが、多串君が沖田クンの腕を掴んで止めた。


「!!」
「止めとけ。瞳孔開いてんぞ」


涼しい顔してても、ボスがバカにされれば熱くなんのな。


「あ、お嬢」


ドタバタ騒がしい屋敷からいい加減帰ろうかと思い歩いていると、前方に沖田クンがいた。


『何やってんの?』
「焚き火でさァ。お嬢もどーですかィ?」
『じゃ、お言葉に甘えて』


近づいて私は火に手をあてる。あーあったけェ。


「何してんのォォォォォ!!お前ら!!」


声がして振り向くと、多串君がメチャ焦った顔して叫んでいた。まあ、護るべき対象のものが火炙りの刑みたいな感じになっていれば、そりゃなるか。


「大丈夫大丈夫。死んでませんぜ」
『多串君も暖まれば?』
「だから多串じゃねェって!!」
「要は護ればいいんでしょ?これで敵をおびき出してパパッと一掃。攻めの護りでさァ」


思い切った行動だよね〜。


「貴様ァこんなことしてタダですむと…もぺ!!」


喚きだしたカエルの口に沖田クンは薪を入れる。容赦ねえな。


「土方さん、俺もアンタと同じでさァ。早い話、真選組にいるのは近藤さんが好きだからでしてねぇ。でも、何分あの人ァ人が良すぎらァ。他人のイイところ見つけるのは得意だが、悪いところを見ようとしねェ」


ストーカーなのに。


「俺や土方さんみてーな性悪がいて、それで丁度いいんですよ真選組は」
「フン。あーなんだか今夜は冷え込むな…薪をもっと焚け総悟」
「はいよっ!!」
「むごォォォォォォ!!」


薪を増やし始めた沖田クンに焦りだしたカエル。わー火力が凄いことに。


「も゛ぐらっはめっそ」


なに言ってるか全然わからん。

ーーーーチュイン.


「!!」
「天誅ぅぅ!!幹賊めェェ!!成敗に参った!!」


門の方を見ると、攘夷の奴らが向かってきていた。


「どけェ幕府の犬ども。貴様ら如きにわか侍が、真の侍に勝てると思うてか」


マジで餌につられたぞ。


「おいでなすった」
「派手にいくとしよーや」


剣を抜いた二人から私は離れた。 一般人いるのにやり始めんの?怖いわァ〜。


「まったく。喧嘩っ早い奴等よ」
「「!!」」


声の方を見るとゴリラと隊士共がいた。


「トシと総悟に遅れをとるな!!バカガエルを護れェェェェ!!」


ゴリラが言うと同時に隊士達は一斉に動き出した。


「いくぞォォォ!!」





ーーーーバサッ.


「おてがら真選組。攘夷浪士大量検挙。幕府要人犯罪シンジケートとの癒着に衝撃…」


万事屋でまったりとしていた私ら。新聞を読んでいた神楽は急に読むのを止めた。


「…架珠」
『んー?』
「癒着って何?」


え…癒着…。


『ねェ銀ちゃん』
「あー?」


向かいのソファに寝ていた銀ちゃんへと駄目元で問いかける。


『癒着って何だったっけ』
「何アル?」


しばしの間……。


「カーコーカー」
「『オイ、とぼけてんじゃねーぞ天然パーマ!』」


結局新八に教えてもらった。


next.

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