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女の一番の化粧は笑顔




「………彼女の言う通りだ。僕は、みんなしっていた」


地面に倒れたまま、歩み寄ったお妙にぽつりぽつりと九兵衛は話し出す。


「勝手なマネをして、君に重い枷をつけ、君の思いをしりつつも見て見ぬフリをした。君を側に置きたいばかりに…それでも君は、僕を護ろうとしていたね。僕の左目になるって…父上やおじい様が、僕を護らんとして男として育てたこともしってる。でも、どこかで恨んでた。僕を男でも女でもない存在にしたこと…僕がこうなったのは誰のせいでもない、自分自身の弱さのせいなのに。それでもみんな、僕を最後まで護ろうとしてくれた。結局、僕は…護られてばかりで前と何も変わらない。約束なんて…なんにも果たせちゃいなかったんだ」


しゃがみこみ、お妙は膝の上に九兵衛の頭を乗せる。


「……なんで、こんなふうになっちゃったんだろ…いつから、こんなふうに……………僕も…ホントは、みんなと一緒にままごとやあやとりしたかった。みんなみたいに、キレイな着物で町を歩きたかった。妙ちゃんみたいに…強くて優しい女の子になりたかった」


手を握りしめ涙を浮かべる九兵衛。


「…九ちゃん。九ちゃんは…九ちゃんよ。男も女も関係ない。私の大切な親友。だから…泣かないで」


ポタポタと、九兵衛の顔に落ちる涙。


「それでほォ、お侍はん…」
「妙ちゃん」


ポロポロと涙をこぼすお妙に、九兵衛は再び涙を滲ませる。


「…めんなさい。ごめんなさい。でも…今日位、泣いたっていいよね。女の子だもの」


抱きしめ合うお妙と九兵衛。うん、これで本当に一件落着だ。全て丸く収まって、あの二人のわだかまりやらなんやらも、キレイになったでしょ。


《新郎新婦、入場です!》


…一件落着……だったけどさ。


「銀さん。人間一体どう転ぶとあんなことになるんですか?」
「見合いで脱糞してワントラップいれるとああなるんだよ」


ゴリラの披露宴に参加してるけど、どこを見てもゴリラばっかり。人間は私らと真選組の奴らだけ。もちろん、嫁はゴリラ。モノホンの。


「旦那、笑い事じゃないですぜ」
「いや笑ってねーよ。つーか笑えねーよ………他人の結婚式で泣きそうになったのは初めてだ」


わかるよその気持ち。


「なんとかなりませんかねェ。この披露宴はただの顔見せみたいなもんでねェ。この後、王女の星で正式な婚礼をあげれば、近藤さんもはれてゴリラの仲間入り…もう帰ってきません。ブチ壊すのは今夜しかねーんです」
「ブチ壊すって沖田君。最初からこの披露宴壊れてるだろ、ゴリラだらけだもの。最初から壊れてるもんを壊すなんて、さすがの俺にもできねーよ。ゴリラだらけだもの」
『それにゴリラがゴリラと結婚するなんて、母国に帰るようなもんでしょ。ここは涙を飲んで見送ってあげよーや』
「そりゃねーぜ旦那、お嬢。なんやかんやで俺たち、姐さん救うのに一役かったんですぜ。これで貸し借りなしにしやしょーや」


ーーーーガガッ.

沖田クンのトランシーバーに反応が。


《こちら近藤、応答願います!どーぞ。お前ら何やってんだ!早く披露宴ブチ壊してくれ!!どーぞ》


焦れたゴリラから急かされる。


《お前らこんなん得意だろうが。ご馳走食わせるために呼んだんじゃねーんだぞ!!どーぞ》
『得意ってどーいう事だ。人を厄介人みたいに扱うな。どーぞ』
「つかご馳走って、お前コレ、バナナしかねーじゃねーか。あんま俺達なめんじゃねーぞコラ。どーぞ」


バナナうまい。


《俺達真選組は今回派手に動けん。この結婚は松平のとっつぁんが動いてる。アレに逆らえば真選組は消される。外野のお前らに頼むしかねーんだ。どーぞ》
「ドコ産だ?どーぞ」
《あ?》
「このバナナはドコ産だと聞いているアル。どーぞ」
《バナナのことはどうでもいいんだっつーの!!ちょっと気に入ってるじゃねーかバナナ!どーぞ》
『フィリピンじゃね?どーぞ』
「果物の王様はやっぱりフィリピン産のバナナアル。どーぞ」
《どーぞじゃねーよ!!んな事イチイチ報告してんじゃねェ!!どーぞ》
「オイ。ちょっとションベンしてーんだけど便所どこ?どーぞ」
《そのへんの奴に聞け!!どーぞ》
「旦那、俺が案内しやす。こちらへどーぞ」
《トランシーバーでやる意味あんのか!?お前らだけで会話成立してんだろーが!どーぞ》


ちょっとしたお遊びじゃん。怒んなよ。


《それでは、新郎新婦どうぞ前へ。夫婦初めての共同作業に移らせて貰います》


ウェイター二人掛かりで運びこまれたのは、大きなベッドだった。


「え…普通、ケーキ入刀ですよね。僕が間違ってんのかな」
『私もケーキ入刀しか知らないよ。なに、宇宙ではアレが流行ってんのか神楽』
「もんもんもん」
「神楽ちゃん、物入れたまま喋んないの」


んでなに言ってんのかわかんねーし。


「さすがに可哀想ですよ。早くどうにかしないと…」
『まあまあ。私らが何もしなくても心配いらないよ』
「え?」
『借りは返す奴でしょ。アンタの姉は』
「うわあああああああああ!!」


話してる最中に、嫁ゴリラに強制的に共同作業へ。

ーーーーズシャア.

間に合わなかったら面白かったけど、すっ飛んできた薙刀を見るに間に合ったようだ。


「お妙さァんんんん!!」
「姉上ェェェ!!」
『『『アネゴォォォォ!!』』』


真選組の奴ら大歓喜。やっぱゴリラが姐さんは嫌か。


「ついに…ついに局長と夫婦になる決意を」


しかしこの邪魔にゴリラ側が黙っておらず、怒り狂ったゴリラ達が暴れ出す。


「もうかまうもんか!!」
「いくぞォォてめーら!真選組がゴリラ如きにヘコヘコしてられっかァ!!」
「俺達の局長の嫁は俺達が決める!!」
「護れェェ!!局長と姐さんの愛の道ををを!!」


元気だな、お前ら。


「近藤ォォォ!!てめっ、ホレた女がいるなら何故言わねェ!!年寄りが余計な事しちまったぜ…幸せになりな!!」


壁に薙刀で張り付けられてるゴリラは泣いてる。それ前回のお妙の真似か?殺されるぞ。


「うおおおおおお!!」


お妙が走り出す。


「てんめェェェ何してくれてんだァァァァ!!私の、おっ…」


お?


「弟に、何とんでもねーもん見せてくれとるんじゃァァ!!」


だよな。嫁ゴリラに凄まじい飛び蹴りをかましたお妙。んでゴリラは蹴られた嫁ゴリラと壁に挟まれ撃沈。床に力なく落下した。


「架珠さん!新ちゃん!神楽ちゃん!行くわよ」
『よっしゃ任せろ』
「姐さんんんんんんんん!!」


ゴリラどもに追いかけられるわ。復活した嫁ゴリラがラスボスなみにしつこいわ。気絶したゴリラを回収したり足骨折してる沖田クン背負ったりで、周りもてんやわんや。

とりあえずお妙は楽しそうに笑ってるので、これで本当に本当の一件落着だ!


next.

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