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誰もが誰かを想ってる




長期戦になれば実力差がモロに出る。この勝負、一気にカタをつけるしかない。

双方その考えで木刀をぶつけるが、切っ先同士がぶつかるや九兵衛は新八の手を蹴り上げ、その隙に皿を狙う。

が、ダッシュした銀ちゃんが木刀を拾った流れで投げ飛ばし、九兵衛の手から木刀が弾かれる。これで新八が皿を割るかと思えば、ジジイが同じように新八の木刀を弾きやがった。

弾かれた二本の木刀は、空中へ。


「「「「うおらァァァァァァァ!!」」」」


ーーーーガッ.

四人の伸ばした手。木刀を取ったのは、銀ちゃんと九兵衛だった。

九兵衛が新八を斬るのが速いか、銀ちゃんがジジイを斬るのが速いか。これで決するかと思えば、九兵衛の狙いは大将を狙い隙ができる、銀ちゃん。

やっべ銀ちゃんの皿割られる…なんて心配はいらなかった。寸前に体の向きを回転させた銀ちゃんは九兵衛の木刀を躱すと、皿を割り奪った木刀を新八へ投げよこす。

その背後に、ジジイ。銀ちゃんを背後から羽交い締めしたジジイは、落下速度を利用して灯篭に銀ちゃんを叩き落とす。皿も割れたが内臓もぶっ飛びそうだなあれ、容赦ねえなジジイ。

んで、ジジイ。これで終わったと思うなよ。


「いけ。新八」


目を見開くジジイに、崩れた灯篭の隙間から新八が木刀を構える。


「おおおお!!!!!」


ーーーードゴォ.

渾身の一撃は額の皿ごとジジイをぶっ飛ばし、皿は粉々に砕けた。

戦っていた周りの奴らも静まり返る。


「…ごめん。負けちった」


うん、割れたな。


「かっ…勝ったァァァァ!!」
「新八ぃぃぃぃぃ!!」


ーーーードカ.


「あんま調子乗んじゃねーぞコルァ!!ほとんど銀ちゃんのおかげだろーが!」
「ぶふォ」


笑って駆け寄ってきたのに、まさかの蹴りを受ける新八。どんまい。


「さすが我が義弟!!真選組を任せられるのは君だけだ!」
「誰が義弟ですか。しりませんよ真選組なんて」


ゴリラに対してはやっぱそんなもんだよな。


「まさか…若様と敏木斎様が」
「貴様らァ!!」


え、なに。


「何をやっているか!!あんな勝負はハナっから関係ないの!!いいからさっさと賊どもを成敗しちゃいなさい!これ以上セレブの血を汚すな!!」


んだよアンバランスなオッさん。


「輿矩、もう、いい加減にせい」
「!」
「わしらの負けじゃ。退け。これは九兵衛が自ら約束したこと。おとなしくお妙ちゃんを返せ」


ジジイは話がわかるな。


「パパ上!つーか元から私は女同士の結婚なぞ反対ですぞ!」
「もう何も言うな」
「確かに男になれとは言ったが、まさかそんなところまで…」
「もう何も言うな。すまんのう九兵衛。じゃが、これでよかったのかもしれんな…」


とりあえず一件落着。皿を取りつつ隣のお妙を見ると、なんとも晴れない顔をしてた。


『…男だ女だ責めるつもりはないよ。でも、アイツはしってたはず。アンタがどんなつもりで自分の左目になろうとしてたか。アンタはしってたはず。そんなモン背負ってアイツの所行ったった、何も解決できない事くらい。アンタらはしってたはずだよ。こんな事しても、誰も幸せになれない事くらい』


晴れない顔のままこちらを見ていたお妙だが、歩み寄ってきた銀ちゃんに気づき顔を俯けた。


「…ごめん…なさい」


立ち止まっていた銀ちゃんが歩き出す。


「…謝る必要なんてねーよ、誰も。みんな、自分の護りたいもの護ろうとしただけ……それだけだ」


背を向けたまま告げた銀ちゃんは、そのまま去って行った。


next.

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