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やる前にやれ





「そうか、総悟がやられたか。クク…いい気味だ」
『頭だいじょーぶですかー』


血ィダラダラ流しながら花火咥えてる多串君はもうダメだと思う。


「土方さん…それ、タバコじゃないです。どっから拾ってきたんですか?ちょっと…しっかりして下さい。大丈夫ですか?すごい出血じゃないですか」


咥えたまま疑いもせず火をつけるバカ。


「…柳生もこっちを見くびってたようだな。どうやらこっちも考えがちと、甘かったようだぜ」
「土方さん、燃えてます」
「三下でもあのレベルじゃ先が思いやられるぜ」
「土方さん、キレイです」
『そのまま燃えればいいのに』


なんでバシバシ火花散らすタバコを不自然に思わないんだまじバカ。


「大体てめーらんトコの大将やチャイナはどこほっつき歩いてんだ?もう、とっくにどっかでやられちまってんじゃねーだろうな…こっちが優勢か劣勢かもわかりゃしねェ」
「近藤さんも用を足しにいったきりなんですけど。大丈夫なんですかねェ?架珠さん」
『バカでかい皿つけて花火真顔で咥えてるバカより大丈夫だよ』


とうとう花火は佳境なのかヒュンヒュンと火の粉を辺りに散らす。私が火傷したらトドメを刺してやる。


「大丈夫なんですか土方さんそれ?」
「しっ!!」
「!!」


あ。


「!!」
「いよいよ本陣が動き出したようだ」


九兵衛と四天王の一人のあの糸目が並んで来る姿が見えた。


「ちょっと!!まっすぐこっち来ますよ!」
「どういうこった?なんで俺達の居場所が…」
「オメーがその口にくわえてるものを見ろ!」


目印以外のなんでもないわ。


『慌てんな新八。大将のアンタだけはなんとしても守り通す』
「架珠さん…」
『幸いエサはある。そいつを囮に私らは逃げて…』
「おい待てエサって俺のことか。ふざけんなエサはお前だ少しは役に立て」
『もうどうせHPも残り少ないんだからここで仲間の為に潔く散ってこいよ。安心しろ大将は守る。勝利は我が手に』
「お前らと仲間になったつもりはねェ。負ける気はないがてめーのエサになんのだけはごめんだ。お前がエサになれ」
『いやお前がなれ』
「いやお前が」
『死ね』
「死ね」
「ストレートすぎるわ。やってる場合ですか」
「いーからエサになれェェェ!」
『あああああ私の皿ああああ!』


奪い取られた皿がトイレの中にフリスビーよろしくに投げ込まれた。ふざけんなバカ!ほんとバカ!!慌ててトイレの中へと皿を回収に行く。


「醜いよ!こんな時くらいあんたら仲良くできないの!?」
「いいから行くぞ」
「土方さん」
「悔しいが今の状況であの二人を相手にするなら、適役はあのチビしかいねェ。それに、近藤さんも一緒だ。俺らは少しでも奴らから距離をとるぞ!!」


よかった!!お皿割れてない!!ご都合主義の奇跡!あのクソマヨ絶対私が皿を割ってやる。肋折れて入院しろ。


『ゴリラ!敵来たよ敵、さっさとケツ拭いて出てきてよ』
「チビぃぃぃ!!神がァァァァァ!俺を見離したァ!!」


はァ?突然ドアを内側から激しくノックして叫ぶゴリラ。ちょ、やめてよ気づかれる。


『うっせーぞゴリラ。お前は既に八百万の神から見離されてるから安心しろ』
「ちげーよ!紙だって!紙がねーんだって!まだケツふいてねーんだって!」
『え、なに。トイレットペーパーがないの?』
「そう!その紙!頼む、他の個室の紙を俺にくれ!」
『チッ。しょーがないなァ。貸し一つだかんな』


目の前の、入り口から四番目のドアを開ける。


『あ、ゴリラぁ。紙ないぞ』
「なに!?他は!」
『なんか使用中』
「!!つまり俺以外にウンコをしている奴が!?勝機!!助けてくださァァァァい!!」
『うっせーゴリラ!!外に聞こえんだろ!!あ、すんませーん、ちょっと紙わけてもらえません?脱糞するわウンコケツにつけて外出るわゴリラだわなんて救えない末路はあんまりなんで』
「他人を貶さないとお前はお願いできないのか」


別にそんなことはない。ノックしたドアの向こうから、カラン、と軽い音がした。


「紙も仏もねーよ」


は?


「え…え?今…ないっていいました?ウソでしょ。ウソだよね、ちょっと」
「うるせーゴリラ黙ってろ。ウンコ食わすぞ」
『…あれ?その声、もしかして銀ちゃん?』
「なに!?お前万事屋か!?」


おいまじかよ。


「おいィィ!お前なんでこんなトコにいるんだよ!!」
「決まってんだろ、こんな所にいるんだ。目的はみんな一つだろ」
「はァァァ!?お前、何!?今までどこいってたと思ったら何!?ジャンプ三週分にも渡ってウンコぉぉ!?どんだけ長ェウンコ!?お前みんなが今までどれだけ苦しんで戦ってたと思ってんだ!!」
「お前俺が今までどれだけ苦しんで戦ってたと思ってんだ。朝食った豆パンがよォ、腐ってたらしくてよ」
『あ、やっぱ腐ってたんだ』
「おい架珠、知ってたんなら止めろよ」
『止めたわ。腐りかけがちょーどいいとか言い張って食ったの誰だよ。安売りしてたの大量に買いだめしてたのが悪かったんだよ。で、紙ないの?』
「ああ。ようやく体内の毒素全部排出したと思ったら、このザマだよ」


四分の三がトイレットペーパー無いとかなかなかだな。


「冗談じゃねーぞ。このままじゃ出れねーぞ。絶対どっかの個室にあるはずだ!」
『隣の個室覗いてみろよ』
「ノックしろよ」
『なんか無反応。物音とくっせー臭いはすんだけど』


すぐさまゴリラが壁をよじ登り、ゴリラと銀ちゃんの間にある個室を上から覗き見た。


「か…紙をくれェェェ」
「ぎゃああああ!!」


落下するかのごとくゴリラは自分の個室に消えた。


「どうした?」
「よ…よ…妖怪…妖怪がいた…なんか、ちっこいヨーダみてーな」
『トイレにヨーダ?だから反応ないのか』
「いや。そりゃ、妖怪 便所童だな」
「便所童!?」


なにその座敷童みたいな。


「トイレットペーパーがきれて便所から出られなくなった者の哀れな末路さ」
『銀ちゃんとゴリラの末路でもあるんだね。ご愁傷様』
「ウソだろ…俺達も妖怪便所童になっちまうのか!」
「そーだよ。だから架珠、早くどっかいって紙もらってこい」
『わざわざ屋敷に戻って?やだよ、だるい。ゴリラ行けば?』
「なんで俺!?ケツ丸出しでいけっていうのかよ!」
「全部脱いだ方がいいな。「ビッグフットですけど何か?」的なカンジで自然なカンジでいってこい」
『いいね』
「よくねーよ!頼むから行ってきてくれ架珠様!この戦いが終わったらお妙さんと行こうと思ってたスイパラのチケットやるから!」
『食べ物でなら簡単に釣れると思うな』
「ウチの架珠ちゃんは安い女じゃねーんだ。わかったらいってこい」
「だからなんで俺!?だったらオメーがいけばいいだろ、どーせ今までウンコしかしてなかったんだ。少しは役に立て!!」
「どーせお前だって他人のバトルを横で解説するヤムチャみてーな事しかやってねーんだろ」


あ。


「失礼な事をいうな。天津飯位までは役に立ってましたっ!!」
「天さんもヤムチャも似たようなモンだよ。お前はしょせんクリリンにはなれねーんだよ」


ーーーードゴッ.


『いっつー』
「架珠?」
「いやいやご迷惑おかけしてすいませんね」
「「!!」」
「ここの厠は普段からあまり使われていなくてね、汚くて。ですから紙の補充も不十分なのですよ」


糸目に弾き飛ばされて背中強打。つか、あの坊ちゃんと一緒に行かなかったのか。エサの意味なかったなザマーミロ。


「……………袋の鼠です。さァ、どう料理してあげましょうか」


ーーーーギギィィィ.

逃げ場のない狭いトイレでやり合うしかないと、対峙していたらドアが開いた。ちっちぇー素っ裸のヨーダみたいなジジイが出てきた。


「…あの…ビッグフットなんだけれども…アレ…ティッシュとかもってない?」
「何やってんですか敏木斎様」


まさかの知り合いかよ。無言でヨーダは元の個室の中へ。


「もォォォォォ!!全然通じてねーじゃん!!」
「バカだろ。ホントにやるとか。バカだろ」


バカだろ。


「敏木斎様。大将にあまり勝手にウロウロされると困ります。勝てるものも勝て…う゛」


涼しい顔が苦しげに呻くや私を素通りして一直線に残りの個室の中へ糸目は入っていった。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」


雄叫びと腹下してる音が生々しい。


「オ…オババの野郎ォォ!!やっぱ朝の卵も傷んでやがったァァ!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」


……アホらし。


『もう私行くから。あと勝手にやってろ』
「は!?ウソだろチビ!この状態の俺らを放っとくのか」
「見損なったぞ。せめて大将の皿割ってけ。ジジイが大将らしいからな」
『ウンコつけたジジイの皿を割るとかやだ。つか、臭いんだよいい加減。ムリ。仲良く便所童になってろ』
「てめーもう生理中でも容赦なく腹パンしてやるからな!」
『花子さんの呪いを受けて死ね』


さっさとバカ四人が閉じ込められたトイレをあとにした。


「……………極限だな」



next.

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