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食べ物の好き嫌い多い人は人間の好き嫌いも多い





「口ほどにもない奴だったアルな。やっぱり、万事屋チームは無敵ネ」
『沖田クンこれ、生きてんの?』


デカブツも気絶、沖田クンも気絶。両者とも皿は割れてしまい、この戦いからは離脱だ。


「あ、携帯。勝利の一枚ネ」
『呑気だな』


デカブツと沖田クンを足蹴に、デカブツの携帯を構えて意気揚々と写真を撮る神楽。


「ところで架珠、銀ちゃんは?」
『さあ?トイレ行きたいとか言ってたから別れた』
「じゃあ私、銀ちゃん探すネ。架珠は?」
『沖田クンが目覚めるまでここいるわ』


神楽と別れて、沖田クンとデカブツを壁に寄りかからせる。とりあえず一人潰したけど、他の連中はどうなのだろうか。


「!架珠さん」


振り向くと新八とゴリラがいた。すぐに沖田クンとデカブツに気づき二人は目を見張る。


「…沖田さん」
「…なんてこった…総悟が、あの総悟が…」


すぐさまゴリラは沖田クンに駆け寄る。


「ひどい…完全に足が…折られてる。チビ、一体何が…」


神楽がトドメを刺したとか言ったらややこしいよなやっぱ…。


『あれだ、その〜…私が来た時にはもう…』
「相討ち…いや、足が折れてからこの男を倒したとは考えにくい。多分、この男を倒して疲労していたところを誰かに…」


そういうことにしておいて。


「ウソだ!!総悟が…総悟が負けるワケねェ!!なァ?総悟…お前はウチの道場でもよォ、一番覚えが早くてよォ、あっという間にみんな追いぬいてよォ。また俺の事おちょくってんだろ?その手には乗らんぞ!!なァ、オイ総悟!!返事しろよ総悟!!」


ゴリラが必死に声をかけるも、沖田クンはぐったりとして反応がない。まァ、凄まじい勢いで頭ぶつけてたもんな。


「………許せねェ。絶対許せねェェェェ!!ここまでやる必要あんのかよォ!!皿割ったら終わりじゃねーのかよ!」


涙を目に浮かべてゴリラが怒りに声を荒げる。死んでも言えねェ…真実は墓まで持って行こう、うん。


「奴ら…人をいたぶんのを楽しんでるとしか思えねェ!」
「!」
「チクショオオ一体誰なんだ。こんな、ひどい真似した奴ァァ!!」
「………」


しゃがみ込んでた新八が立ち上がり携帯を踏み潰して破壊してる。


「総悟ォ、お前の仇は絶対俺がとってやる!なっ、新八君!チビ!」
「チキショーーーー!!沖田さんやったの誰だコルァァァ!!皆目見当つかねーよ!!見つけたらマジブッ殺してやんよ!!」


目を血走らせて早口にまくしたてる新八は汗がやばい。神楽の勝利の一枚を見たんだな、ありゃ。真実を知ってしまったか…どんまい。


「おおよ!!絶対見つけてブッ殺してやんぜ!!つーか、どうしたその汗!?」
「なっ、なんかあっついなオイ。もっとクーラーきかせろコルァァァボケが!!」


焦りすぎだろ。



「でてきやがれェ!!どこいったァァ!沖田さんの仇は僕達が討つぅ!!」


ーーーーパン.

閉じられていた襖を開けていく新八に続き進んでいくと、食卓を囲む多串君と四天王の一人がいた。


「あ、スイマセン。お食事中」
「間違えました」
『ごゆっくり』


ーーーーパタン.

…………。

ーーーーパン.


「「『ちげーだろ!!』」」
「何やってんだァァァ!!トシぃぃぃぃ!!」


なんで飯食ってんだ!!


「腹が減っては戦もできぬ」


メガネの敵が言う。


「どうだ?貴様らも」
「敵のつくった料理なんて食えるかァ!!つーかお前さっきも食ってなかった!?」
「土方さんアンタ何のんびりくつろいでんですか!?四人でそいつやっちゃいましょうよ!!」
「オイてめーら、余計な手ェ出すなよ」
「土方さん!」
「コイツは俺のチャーハンだ」
「チャーハンかいィィ!!」
『誰が食うかバァーカ!』


チャーハンに埋もれて死ね。


「ちょっと、それ、ケチャップとってくれ」
「ん?コレか」
「オイオイなんだよコレ」
「緊張感もクソもあったもんじゃないんですけど」


あれからずっと飯食ってたのか、コイツら。


「凡人にはわかるまいよ。既に勝負は始まっているということに。武士とは飯の食べ方一つ、箸の持ち方一つでも自分の流儀でいくものだ。日常の行動、所作、全てが己を律する厳しい鎖。日常全てが己の精神を鍛える修行だ。そうして武士の強靭な鉄の魂は培われる。土方十四郎よ、貴様にはあるか?己を縛る鎖というものが」


ーーーーブチョブチャブチョ.

うわ…。


「ケチャップ!?オムライスにケチャップをあんなに…」


ケチャップ全部かけたんじゃないかってくらい、メガネはオムライスにケチャップをぶっかけた。気持ち悪…ッ。


「一つ言っておこう。俺は周囲からは生粋のケチャラーと思われているが、実はトマトの類が大の苦手。見るだけで吐き気がする」


じゃあなんでケチャップそんなかけてんの。


「これが俺の鎖…嫌いなものを過度に食することにより、折れない屈強な精神をつくりあげる。今では苦手だったトマトも大好きになり、トマトにケチャップをかけて食すほど」


それもう修行になってねーよ!!ただの不摂生。


「貴様にこんな事がマネできるか」


顔を上げたメガネが目を見張る。


「!!なっ…なんだ、その白いのは!?」


うわあ…。


「マヨネぃ〜ズ」


チャーハンに誰が見ても規格外の量のマヨネーズをぶっかける多串君。この食卓狂ってる。病院行け。


「ちなみに一つ言っておこう。俺は周囲から生粋のマヨラーと思われているが、実はマヨの類が大嫌いであの赤いキャップを見るだけで吐き気がする」



ウソついてる!!負けたくないばっかりに平気でウソついたよマヨラー。


「…フン。伊達に「鬼の副長」と呼ばれているわけではないという事か…なかなかに面白い食事だった」
「タバコ吸いてェな。灰皿あるか」


ーーーーガシン.


「タバコの前にごちそうさまはどうした」
「クソまずい飯ごちそーさんでした」


食べ終えるや二人一斉に木刀を振るい、食卓は一変して戦場になった。


「ほら、灰皿だ!!」


メガネは皿を投げると続けて木刀を多串君の皿へと突くも、左足を上げて多串君が防ぐ。勢いに多串君は庭へと飛び出し着地する。


「ほう。想像以上の反応だ」


てか多串君のそのバカデカイ皿はなに?どっから調達したのバカ?


「並外れた身体能力、反射神経。数多の死線をくぐり抜け培った勘と度胸。実戦剣術とは、よく言ったもの。並大抵の剣客では及ぶまい。だが、そんな戦い方が通じるのは三流まで。達人同士の勝負においては通用せん」
「てめーが達人だって?虫も殺した事ねェようなツラしやがってボンボンが」
「殺し合いだけが剣術ではないぞ。かかってこい」
「ぬかしやがれ!!」


踏み出した多串君が木刀を振るい、メガネは飛躍して避ける。


「貴様の手は読めているぞ。あえて大技で隙をつくり敵を誘い、打ちこんできたところを、その持ち前の勘でとらえてさばく」
「てめーの動きも読めてんだよ!!」


振り向きざまに木刀を振るうも、メガネは振り向いた多串君の背後に着地していた。


「勘がよすぎるんだよ貴様は」


ーーーードゴ.


「ぶっ」
「トシぃぃぃ!!」


うわぁ、飛んだなァ。


「体をひねって皿への直撃をさけたか。本当に大した直感力だ。しかし、それが貴様の命とり」
「まずい」


隣でゴリラが眉根を寄せる。


「あの男、トシのクセをあの短時間で見抜いた」
『クセ?』
「俺達、真選組の得意とする真剣での立ち合いにおいて、相手の一太刀をうけることは即ち死をあらわす。例え命を拾っても深手を負えば、それは死に直結する。ゆえに俺達に絶対的に求められるのは、危機察知能力」


研ぎ澄まされた直感力で相手の気配を察知し敵の攻めを制す。昔から最前線で戦ってきた多串君は誰よりもその能力に長けているそうな。


「たが、あの男の得意とする道場剣術は、敵を斬るよりも敵の意表をつき一本とる術に長けるもの。奴の前では、トシの尋常ならざる勘のよさは仇になる。あのデケー皿だ、いつもより過敏に反応せざるをえねェ。あの男はそれを利用し、攻防自在に転じ、それに反応したトシの隙を突いている。攻めると見せて引き、引いたと見せて攻める」


ーーーードォォン.


「無数の擬似を、無意識で反応してしまうギリギリのレベルでくり出してくる」


ーーーードパン.

木刀で空中へと殴り飛ばされた多串君が池の中へと消える。


「紛うことなき達人。人の心、己の心さえ自在に操る道場剣術の達人」
「…道場試合であれば、もう何本とったことか。いや、貴様の得意な実戦であっても既に命はないだろう」


池の中から多串君がなかなか出てこない。


「いい加減あきらめろ。そんなデカイ皿では防戦一方だろう」


ーーーードパァ.

橋を破壊して真下から飛び出た多串君の一太刀がメガネの肩を掠めた。


「まだやるのか」
「一本だァ二本だァ、んなモン何本とられようが関係ねーよ。腕一本もげようが、足一本とられようが、首つながってる限り戦わなきゃならねーのが真剣勝負ってもんだ」
「これだから野蛮な芋流派嫌にな…」
「そーいや灰皿借りたぜ。タバコ吸わねーと調子でねーんだ」


そう言う多串君の手には皿。メガネの胸元に皿が見当たらない。さっきの一太刀で奪ったのか?


「貴様ァァあの時!!返っ…」


余裕そうな顔を崩して走り出していたメガネだが、その拍子にぶら下がって出てきたのは皿。アレ?あんじゃん。


「擬似だかなんだかしらねーが、だまくらかしあいなら負けねーよ」


ーーーーゴォシャ.

メガネの背後に回った多串君がメガネをぶっ叩き、メガネは橋を突き破って池の中に落ちた。


「オムライスにいくらケチャップかけようが常識の範囲内。てめーは、しょせん型から脱しきれねェ。そいつが道場剣術の限界よ」


あの皿は食卓で投げやられたやつか…テメェ私まで騙したなこんにゃろ。


「俺ァ、デザートにだってマヨネーズかける。来いよ、本物の喧嘩見せてやる」


デザートにマヨはもう冒涜だわ。謝れデザート達に!



next.

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