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血とか包帯って…なんかカッケー憧れる





皿は額に装着して適当に歩き回っていたら、開戦の狼煙が遠くに見えた。とうとう始まったか。

ーーーードン.

ちょっと先で、重たい音が轟く。早速誰かがあちらさんと出会したようで、様子を見に駆け足で向かう。


「あ、架珠!」
「む、新手か」
『え、何やってんの?』


神楽と対戦していたのは四天王の大男。二人して岩を持ち上げて向かい合ってるからなんか異質。戦ってんのそれ?


「まとめて皿を割ってくれる!」
「割れんのはお前アル……」


気合を込めて岩を投げようとした神楽が、一瞬不自然に動きを止めた。


『!』


神楽を引っ張り投げられた岩から避けるも、すぐさま二人まとめて木刀で殴り飛ばされた。


「うおらァァァ田舎剣法ナメんなァァ!!」


うげっ!!飛んで行った先には、四天王の一人を一方的にボコっていた沖田クンがいた。

ーーーードゴッ.


「んごぉぉぉぉぉ!!」


頭ぶつけて三人仲良く地面に倒れこむ。痛ってェェ!皿より頭が先に割れるぅぅ。


「いでで。あれ?お嬢、いつのまに居たんですかィ?」
『今来たら早々に殴り飛ばされたわ。神楽、どうしたのさ』
「なんか調子悪いネ。手がプラプラするネ」


言うように神楽の右手首はだらん、と力なく垂れ下がっている。


「オイ、お前それ」
「我らが技を受けて無事で済むわけがあるまい。皿をかばうあまり利き腕を失ったか。最早、戦うのは無理。降参して皿を渡せ」
「反対に戻せばなおるんじゃ」
「あっ、ちょっとあんま、いじくんない方が…」


ーーーーボキッ.

うわ…。


「ぎゃあああ!!」
「アレ?方向間違ったか」
『悪化させてどうすんだ!』


泣いて絶叫する神楽を見るに相当な痛みだったぞ。


「この」


ーーーードゴ.


「なにすんだクソガキぃぃぃ!!」


ーーーーボキッ.

あ。


「うがァァァァァ!!折れたァァァァァ!!ボキっつったァァァ!!」


神楽に蹴られた沖田クンの脛辺りから、嫌な音がした。悶絶してるよそりゃそうか。


「て…てめェ普通、折れるまでやるか!?」
「やられたら倍返しは万事屋家訓の一つネ。そうでしょ架珠」
「どんな教育してんでさァお嬢」
『見ての通りだよ。ほら、あとは私に任せな』
「嫌アル!あのデカブツは私の獲物ネ」
「お嬢に任せるくらいなら自分で皿割りまさァ」
『上等だ私が割ってやろうか』


腹立つなクソガキ。


「最早、勝負あったな。仲間割れで勝機を逃すなど愚の骨頂」
『なにもう勝った気でいんのさ』


歩み寄る大男に木刀を突きつける。


『五分は稼いでやる』
「「!」」
『その間に策でも考えろ。それ以上経ったらこっちの好きにするから』


そう告げると、二人は顔つきを変えて頷き屋敷の中へと向かう。


「離せコノヤロー!!」
「そりゃねーだろ!!」
『さっさと行けや!』


なんでそんな時まで喧嘩するかな!?足の折れた沖田クンに手を貸すかと思うも、飛躍した大男の木刀が振り下ろされるので木刀で受け止める。


「皿を渡せ」


なに言ってんだデカブツ。


「「『いやだネ!!』」」


ーーーーガシャン.

二人が身を隠した辺りでこちらも動き出す。

ーーーーガキィン.


「ほう、なかなかの動き。どこの流派だ?」
『ネットで調べな』


デカブツなだけありパワー系なのか、一太刀が重たい。室内だから大きな動きもできなくて戦いづらいなァ。


「庇っても無駄だ。腕と足が使えぬ侍など、役に立たぬ。お前を倒して見つけ出せば皿が割れるのはすぐだ。武士の最期は、潔くあるものだ」
『悪いね。潔くなんて武士道、芋侍は持ち合わせちゃいないんだ。粘ってこそでしょ、やっぱ』


さて、そろそろ時間だけども、あいつらどーすんだ…?


「こっちだぜィ、デカブツ」


お。


「最後の勝負といこうじゃねーかィ」


……ん?


「かかってきやがれェェ!!」


神楽に肩車してもらってる沖田クンが声高らかに言うけどさ…。


「『………何してんの?』」


敵同士だけど、一緒になって呟いてしまった。


「足が使えねェ奴、腕が使えねェ奴、協力すれば…」
「オイ、あんま股近づけるな気分悪い!」
「仕方ねェーだろィ!」


おいおい大丈夫かよ。


「フハハハハハハ。そんな状態で拙者の太刀をかわせると!?」
「メチャメチャ軽快に動けるっつーの。なんならタップでも踏んでやろーか、あん?コノヤロー!」
「タップは無理アル」
「タップは無理だそうだコノヤロー!」


本当に大丈夫か!?不安になっていると目の前にいたデカブツが消えた。


「童の遊びにつき合ってる暇はないわァァ!!」


デカブツが木刀を構える。


「うおおおおおおおおおおお」


猛スピードで木刀を二人にめがけて突き動かすデカブツだが、神楽は器用に避けて沖田クン全部皿を死守しつつ当たってる。


「オイぃぃぃぃ!!よけてるの下の奴だけで上の奴全部当たってるぞォ!」


いいのかそれで。

ーーーーガッ.


「!!」


お。


「なっ」


デカブツの木刀が天井に突き刺さり動きが止まる。


「この時を待っていたぜ。狭い室内で長い獲物を高い的狙って振り回すなんざ、愚の骨頂よ」
「!!バ…バカな。全て計算で拙者を…!!」


よっしゃ今だ!


『いけェェェェェ!!』


デカブツめがけ神楽が走り出した時だった。

ーーーーゴガン.

あ゛…。


「『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!』」


襖の塀に顔面からぶつかった沖田クンは皿も割れてるし衝撃に気絶している。あんないい感じにカッコつけていたのにマジかよ!


「ブワハハハ!!策士策に溺れるとはこの事よ!!」


ーーーーガッ.


「ぬおおおおお!!」
「!!」


振り落とされそうだった沖田クンの足首を掴んだ神楽はーーーードゴ.


「ほァたァァァァァァ!!」


沖田クンを獲物よろしくに振りかぶってデカブツの顔面に叩きつけ皿を割った。



next.

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